2026年6月21日

J.LEAGUE スポーティングダイレクタープログラム

 

Jリーグインターナショナル様の依頼で、JリーグとUEFA(欧州サッカー連盟)が共同開発したオリジナルのスポーティングディレクター・プログラムで一部通訳しました。3月26日から6月10日まで、全5回(延べ9日間/60時間)のプログラムです。私は第3回の遠隔セッションから最後まで入りました。私は純粋な競技としてのサッカーも好きですが、どちらかというと経営サイド、つまりサッカークラブの運営や管理、選手の育成、移籍市場などの方に強い関心があります。その意味では個人的趣味と仕事が重なり、とても楽しい案件でした。 

2026年2月7日

NotebookLMで大量の特許情報を捌く

 


2月に入ってからすぐに香港出張。特許侵害の案件で、直前に大量の対象特許が送られてきた。限られた時間の中でどのように準備をするかというと、以前なら長年のカンというか、「このあたりが匂うな」と勝手に決めつけて臨んでいましたが、今はNotebookLMという心強いツールがあります。公式の定義では、Googleが提供する「資料(ソース)を読み込ませて対話するAIリサーチアシスタント」とありますが、これ、特許案件と相性がとても良いのです。

2026年1月29日

太秦と撮影技術

撮影技術に関するワークショップで通訳してきました。京都出張ではあの太秦の地を踏むことができて、「あの作品はここで撮影されたんだろうなあ」などと、たぶんまったく誤った妄想しながら仕事をすることができました。オーディエンスは主に映像のプロたちなので、普通に訳すだけではなく、「プロが使う言葉」で訳すことが基準ラインになります。短期間でそのラインに到達するにはどうするか。やはり初心者向けのものから始めて、基本情報を徹底的に叩き込むのが一番の近道。20年前であれば基本書を3冊くらい買って読み込むのが定番でしたが、今は動画が質・量ともにかなり充実しているので、YouTubeがかなり有力な選択肢です。参考までに本件において準備に視聴した動画を一部紹介します。

2026年1月19日

2026年は札幌で開幕

個人的には長めの冬休みを経て(ぽつぽつ遠隔会議がありながらも、10日までしっかり休養)、111日から本格始動です。本当は米国の某弁護士に「13日にテキサスまで来て稼働できない?」と聞かれていたのですが、さすがにそれは……私も偉く(?)なったもので、好条件の仕事よりもイッテンヨンでの棚橋の引退試合を優先できるまでになりました、ということにしておきしょう。 

私は毎年目標を決めるタイプではないのですが、今年の目標は明確で、「通訳においてAIをしっかり使える・語れるレベルまで勉強すること」です。KPIすらない曖昧な目標かもしれませんが、AIの進化のスピードを考えると抽象的にせざるを得ません。実はすでに法務案件では公開情報(特に特許)を効率的に整理・活用していて、準備効率が数倍上がったことを実感しているのですが、それとは別に今の研究テーマは「資料が出ない講演について、公開情報から講演者のスピーチ内容をどう予測するか(プラスその精度をどう上げるか)」です。ある程度のメドがついたらJACIで講演してもいいかなと思いつつ、私が思いつく程度のことは絶対に誰かが先に発表しそう、と始まる前から弱気です。「やる前から負けること考えるバカがいるか!」と猪木にビンタされそう。

2025年5月28日

椿山荘で食事会、でも仕事。

 


いつも仕事をしている法人クライアントの外国人役員から依頼をうけて、会食の通訳です。今回は椿山荘の木原堂でした。プライベートで来るには相当の勇気がいる価格設定です。

特に小規模の会食案件で必要なのは、できるだけ早い段階でメニューを手に入れること。できればバイリンガルで。ビジネスで外国人を連れて行くような店はだいたい日英両方のメニューを用意しています。私のような野菜や魚の名前が苦手な通訳者にとってはライフラインのようなものです。

もう一つ、和食の高級店で仕事をするときに注意すべきことは、穴の空いた靴下を履いていかないこと(笑)。私自身は未経験なのですが、たまに履いている人を目にすることがあります……

2025年4月21日

Star Wars Convention

 4月のハイライトはもう1つ、Star Wars Conventionでの仕事です。お世話になっているゲーム会社の依頼で、Star Wars Zero Company のメディアインタビューなどを担当しました。

会場は幕張メッセ。入場者の数も、コスプレの質・量も段違いです。看板なども日本を意識しているモノが多め。

2025年4月12日

Xbox Developers Streamsにて同通

Xbox Deverlopers Steamsイベントの同通を担当しました。ホテルのネット回線は信用できないので、この案件のために高速インターネット完備のAirbnbを予約したり。今回担当したタイトルはこちら:

The Zodiac Trials

Agni: Village of Calamity

Nightmare Circus

Vapor World: Over The Mind

Kriegsfront Tactics

本件ですが、ライブ同通が終わったあとに一部再録もありました。技術的なトラブルで通訳音声が2分程度抜けてしまったとのこと。再録はその部分だけだったのですが、前後には通訳音声が入っているので、正確な録音時間を確認して、対象部分の尺にしっかり収まるように仕上げなければなりません。私の場合は、最後のパラグラフだけ原稿を用意して、時間ピッタリに終わることを心掛けています。

2025年4月8日

久々のハワイ案件を楽しむ。

昨年から仕事をしている団体の年次大会が今年はハワイ開催ということで、日本語通訳チームの一員として現地に1週間行かせてもらいました。私を含む通訳者はみんなだいたい同じことを考えていて、仕事はしっかりするけど、遊びも本気でいかせてもらいますよ、という雰囲気。そりゃそうだ、ハワイですもの。お子さんを一緒に連れてきたり、数日延泊したり、楽しみ方はそれぞれです。

会議は4か国語で進行です。面白いもので、同時通訳機材は世界中どこに行ってもだいたい同じです。大昔にたしかベトナムで「え、これどうやって使うの?」レベルで直感的に使い方がわからない同通ターミナルがありましたが、こんなことは稀です。

2025年3月28日

2年ぶりのシカゴ代表団来日

2023年に担当したWorld Business ChicagoWBS)案件を今年も担当。シカゴ市の政治家やビジネスリーダーが来日して、日本からの投資を呼び込む活動、といったらシンプルで分かりやすいかもしれない。東京と大阪でおよそ1週間にわたり投資セミナーや個別の企業訪問などを行いました。2年前は東京部分しか受注できなかったのですが、今回は全日程を任せてもらえることに。前回の仕事が評価されたのは素直に嬉しいですね。

1週間の日程で必要な通訳者と機材をすべて手配する役回りだったのですが、最近は3月でも秋の繁忙期のような忙しさなので、経験豊富な通訳者はなかなか手配できません。スケジュールもリアルタイムで変更されるので、朝10時に「マイクさん、今日の午後2時に通訳者さんお願い!」とお願いされることも。シカゴ側も限られた時間のなかでできるだけ多くの会議や企業訪問を詰め込みたいので、こちらも頑張って動かなければなりません。私自身、この1週間はフル稼働していたのですが、1人だけでも当然足りず……JACIの活動で知り合った仲間たちがいなければ、おそらく手配は無理だったでしょう。その意味では仲間たちに感謝、感謝です。

2025年3月10日

出張で意識・準備すること

3月上旬は米ミシガン州へ出張でした。案件自体については語れないのですが、今回は私が海外出張するときに意識すること、準備していること・モノについて書きます。個人のニーズや好みも当然あるので、あくまでも参考までに……というか私はキャリアを通して2度ロストバゲージの被害にあったことがあり、2度目のあとは「もう絶対に荷物は預けない」と決めているので、必然的にパックする荷物は最小限になります。女性には絶対向いてない。というか、バリバリの私服で要人の通訳をするのはつらい。

まずキャリーケースですが、私は昔からカリマーを使用しています。もともとは何を使っていたか忘れましたが、たしか2008年か2009年あたりに高城剛の本でAirport Pro 40が薦められていて、「まあ何を使ってもだいたい似たようなもんだから、旅ばっかしてる高城さんの意見を聞いておこう」(安易)と考えて決めたのでした。修理を繰り返してまだ現役ですが、今はソフトキャリーClamshell 40も使っています。たしか40Lがサイズ的に機内持ち込みの限度だったような。ケースの中は最低限の衣服と革靴くらいです。私服のスペースが十分に確保できないときは、持っていくより現地で安い古着を買うことも。これに加えて仕事用のリュックサックにはノートPCと筆記用具など。Manhattan Passage#4210です。

2025年2月15日

篠田顕子さんと組んだ日。

会議通訳者の篠田顕子さんが111日にご帰天された。日英通訳業界ではとても有名な勉強家で、技術も高く、歳を重ねた先輩通訳者にありがちなマウンティングもなく、むしろ新参者や後輩にも配慮する優しい方でした。私が一緒に仕事をしたのは一度だけ、15年以上前に韓国で開催された案件だったのですが、とても落ち着いて安定した訳出ぶりで、多くのことを学びました。仕事のあとはホテル近くの焼肉屋でほぼ肉を注文せずに、もう一人の通訳者である白江さんとくだらない話をしながら笑って過ごした記憶があります(もっといろいろ聞いておけばよかった)。

篠田さんは著書『愛の両がわ』で自身の波乱万丈な人生はもちろん、通訳者になったきっかけとその後の展開についても綴っています。特に女性通訳者にお薦めです。時間がなくても第9章~第12章の仕事に関する部分は読んでおいて損はありません。特に仕事の後に自分のパフォーマンスを徹底的に反省して復習する過程は、私も若手時代に同じようなことをしていて、技術の向上につながった感覚があります。もっとも私の場合はすぐに忙しくなって途中で辞めてしまったのですが、ちゃんと続けていたらもっと上手くなったかもしれない。 

実は2015年にJACIを立ち上げたとき、その夏に初開催する日本通訳フォーラムで篠田さんに基調講演を依頼していました。けれど、もうタイミングを逸してしまったというか、篠田さんはもう仕事を減らすフェーズに入っていて、夏は地方でゆっくり畑仕事を楽しみたい、ということで叶いませんでした。実際、その後は表舞台に姿を現すことはあまりなくなっています。いま思うのは、フォーラムでの講演は難しかったかもしれないけど、何か理由をつくってもっと話をしておけばよかった、ということ。通訳業界はただでさえ先輩たちの記録が乏しいので……。 

あの日、初対面なのに未熟な私を優しくサポートして、時には励ましてくれた大先輩・篠田顕子さん。いつか私もあなたのように他の通訳者を引き上げる存在になりたいです。

2025年2月3日

ALGS札幌を大いに楽しむ!

スイスから帰国した翌日、午前の便で札幌へ。本来であれば無理っぽい移動スケジュールなのですが、コロナ渦からApex Legendsの新シーズン発表会や開発者インタビューの大半を担当してきた通訳者として、日本で世界大会が開催されるのであればこれは行かなきゃアカンやろ、という感じです。私の通訳ぶりを「マジシャン(魔法使い)」と呼ぶ開発チームやPRチームのメンバー(たぶん私以外の通訳者を知らない可能性大)とリアルで会うのも実はこれが初めて。現場での仕事はもちろんですが、今後の展開も考えると一度挨拶しておくのが良いかなと思いました。遠隔では何度も会っているのですがね。

さて、2月上旬の札幌は当然ながら雪、雪、アーンド雪。寒い。さっぽろ雪まつりの直前の週末ということもあり近場のホテルがとれず、あまり効率的な移動ルートにならなかったのも残念……けれど会場はアツい!そして若い!明らかに10代~20台前半の若者が多めです。おじさんは彼らからエネルギーを頂こうと思います。

私の今回の仕事は大会期間中の①スタッフ間のコミュニケーション支援(世界大会なので海外から多数のスタッフ&メディアが来日していた)、②メディアインタビュー、③優勝者インタビューでした。①と②は以前にも書いたので、今回は③をメインにどう準備したかを説明していこうと思います。

2025年1月31日

ローザンヌでCAS案件

私の主戦場の一つは法務で、主に特許侵害や反トラスト法関連の仕事が多いのですが、ここ数年は私の趣味・関心も兼ねてスポーツ法の案件に力を入れています。過去と比べてアスリートは納得できない処分に対して異議申し立てをするケースが増えており、スポーツ分野の紛争についてはCAS(スポーツ仲裁裁判所)が事実上の最高裁判所的な位置づけである以上、戦い続ければ最終的にCASの仲裁判断を仰ぐことになるわけです。私はこれまでオリンピックの代表選手選考、契約金未払い、選手登録、ドーピングなど、様々な事案に対応してきましたが、時にはスイスのローザンヌまで飛んでCAS本部で通訳することも。

事案によりますが、私の場合は通常、①弁護士との顔合わせ&準備会議、②資料の読み込み、③国内で証人を交えたリハーサル、④スイス現地でのリハと最終確認、⑤本番、という流れが普通です。CASの判断次第で選手生命が事実上絶たれる可能性がある選手もいるわけで、選手側としてはとにかく必死で、何度もリハをする場合が多いです。年初に対応した案件を例にして、語れる範囲で準備プロセスを具体的に説明します。

2025年1月24日

2025年シーズン開始 in AUS

明けましておめでとうございます。年末年始にいつものパターンで体調を崩したので、開幕にあわせてしっかり調整?という名のだらだら休養生活を続け、今年は1月7日に無事に法務案件でシーズンINです。今年から若手通訳者向けに、現場ではどんなことを考えているのか、どんな準備をしているのかを中心にもっとブログを頑張って書こうかなと思います。

年明けの1発目の案件、つまり開幕戦はいつも相当緊張します。私の場合、年末年始はだいたい2~3週間は通訳から離れるのですが、開幕戦が迫ると「同時通訳のスピードについていけるかな」と不安になります。不安になるくらいなら1日15分でもいいから同通の練習をすればいいのに、と思う方もいるでしょう。もっともです。でも秋の繁忙期を終えたあとは何も残っていないというか、とにかくゴロゴロして、仕事の連続で4か月我慢していたことを純粋に楽しみたいという気持ちが勝ります。秋は本当に仕事一色ですから。

さて、1月15日からはFIFA(国際サッカー連盟)案件で一週間のオーストラリア出張でした。FIFAは世界各地で各種ワークショップを開催しているのですが、今回はのトピックはtalent development(優秀な選手の発掘と育成)です。FIFAといえばワールドカップ、というのが一般人の感覚だと思いますが、通訳者として関わるFIFAはどちらかかというと10年先のサッカー界を見据えた取り組みの方が多めの印象です。その意味ではタレント発掘はとても重要。できるだけ多くの子供たちにサッカーをする機会をつくり、その中から優秀な選手を発掘し、しっかり育成していく。普通のサッカーファンはあまり意識しないけれど、サッカーが強い国はどこでも組織的に取り組んでいることです。

2024年12月31日

2024年のまとめ

◆2024年のまとめ

今年は今まで以上に仕事が充実した1年でした。改めて振り返ってみると、23年から法務とゲーム関連の指名案件がかなり増え、それにともないエージェント経由の案件は劇的に減りました(ドル円の為替状況を鑑み、私がドル案件を優先していることも大きいですが)。案件数が減って効率よく稼げてはいるのですが、やはり国内エージェントと仕事をしないと業界情報が入ってきませんし、まだ知らない通訳者との出会いもなかなか無いので、来年も適度に受けていきたいと思ってはいます。

来シーズンは国内で幕開けですが、2週目からはオーストラリア、そして月末はスイスです。3月・4月も海外出張があるのですが、年を重ねるごとに体調を崩しがちというか、喉も意識的にケアしないとすぐにおかしくなってしまいます。老いるってこういうことか……と改めて時間しています。でも遠隔通訳の普及で激減するかなと思っていた出張がなぜか増えているので、これがいつまで続くかわからないけれど楽しめるうちに楽しんでおこうかなと思います。仕事はしっかり、遊びもしっかり、がモットーなので。

2024年はJACIにとって10周年イヤーでした。2015年4月に団体を立ち上げたときは、強く反対する人はいなかったのですが、積極的に応援してくれる人も少なかったので、課題山積なスタートだったのを覚えています。スタートアップ企業のように先行投資をしなければ活動資金が調達できないし(1年目は100万円ちょいを自腹で負担し、あとで協会から返金してもらいました)、小さい組織はとにかく企画を打ち続けないとすぐに忘れられてしまう。思えばこの10年は業界内での信頼とポジションを確立するために休まず走り続けたような気がします。

そんなJACIも2025年は11年目に入ります。今では頼りになる理事や仲間が増え、少しずつ成熟した組織に成りつつあります。私も数年前と比べて現場からは少し離れて、プロデュース寄りの活動にシフトしています。2025年も楽しみにしていてください。

 

シーズン中はがっつり遊ぶ時間がなかなか確保できないので、近年は消化したいコンテンツをリスト化して、年末年始に粛々と(笑)こなしていくのが通常パターンです。今年はは『虎に翼』、『Yellowstone』、『Succession』を完走できれば満足かなと。あと、JRPG好きとしてはドラクエ3 HD-2Dもなんとかクリアしたい……

まだShogunを視聴できていないのですが、次の夏までには!みなさん、良いお年を!

2024年12月27日

Fortniteの特別イベントでお仕事。

 
実は23年からFortnite案件にも関わるようになっています。最初はFortniteのゲーム自体ではなく、開発元のEpic Gamesが抱える大型訴訟関連から入り、縁がありゲーム自体のイベント通訳も任せてもらえるようになりました。11月末に都内で会場を貸し切って開催された新シーズンお披露目&試遊デモのイベントを、いつものゲーム通訳者メンバーで対応。このようなイベントを日本で開催したのは初めてだったそうです。

フォートナイト バトルロイヤル チャプター6 シーズン1: 鬼ノ島

ゲーム業界に限る話ではないですが、重要な新情報を初めて出すイベントでは、通訳者に提供される情報が限定される場合が多いです。なので通訳者は与えられたわずかな情報から周辺情報の調査を行い、YouTubeなどで識者の予想を確認してヤマをはり、隙あらば担当者にお願いして情報を出し続けてもらう、に尽きるといっても過言ではないです。あと、ゲーム業界のイベントで同通ブースが設置されるのは稀なので、生耳パナの場合は通訳者の立ち位置をしっかり事前確認することを勧めます。スピーカーが近すぎると厄介なので。

2024年11月23日

Marvels of Saudi Orchestra in Tokyo

9月の案件で結果を残し、すぐにこの案件を頂きました。サウジアラビアはいま、国を挙げて文化振興に取り組んでおり、このMarvels of Saudi Orchestraツアーもパリやニューヨークを含む世界各地で開催され、東京は5か所目。その文化的にも政治的にも重要なイベントの通訳を弊所が担当することになりました。

音楽的表現は通訳者が工夫する余地があるものの、楽器の名前などは事前に知っていないとどう足掻いても誤魔化せません。加えて、楽曲の背景知識やストーリーを把握しておかないと、訳が生き生きとしません。ここも通訳者の力の見せ所です。

私は本番を担当したのですが、運が良かったのは事前記者会見を通訳仲間の平井美樹さんにお願いできたことでした(写真右、左端)。彼女が基本的な用語・表現とメインメッセージを案件後にまとめてくれたので、盲点だった日・サウジアラビア外交関係樹立70周年(2025)についても知れました。初見でも現場で対応できたでしょうが、やはり事前に知っておきたいものです。訳の精度もかなり向上しますし。

本件を受けたときは中東特有の言葉や表現に困らされるのかなあと若干不安でしたが、フタを空けたら特別ゲストの布袋寅泰さんの英訳が一番難しかった!といっても彼が悪いのではなく、彼の詩的な日本語表現を同じく詩的な英語表現にするのが難しかった、という意味です。「自分の音楽がこうして海を越えてサウジの風をまとい、こうやって日本に戻ったころを誇りに思う」というようなシンプルな文章でも、「まとう」ってどう訳そうかな、とメモをとりながら考えるものです。最終的にどんな訳にしたのか正確には覚えていませんが、たしか "I'm extremely proud of the fact that my music traveled across the ocean to be embraced by the winds of Sauid Arabia, and now it's back home in Japan." みたいな味付けだったと思います。

全体的にはもっと上手くできたかなと思いますが、布袋さんの事務所関係者から「とても素敵な通訳だったとうちの布袋が言ってました」と直接伝えられて、それがとても嬉しかったです。世界のHOTEIに認められちゃったよ!こういうのは地味に嬉しい。

2024年11月12日

バイオ医薬品のイノベーションと資金調達。

 
在日米国大使館の依頼で Navigating Biopharma Innovation Across the Pacific イベントの同通を担当しました。米国大使館はデポジションで訪れることが大半なのですが、少しは名前が知られてきたのか、最近は大使館が関与する個別イベントにも呼ばれることが増えています。

資金調達などファイナンス寄りの話は慣れているのですが(といっても、ファイナンスには様々な種類があるので油断はできない)、ガチなバイオ技術の話になったら置いてきぼりにされそうなので、恥をかかないために時間を多めにとって準備。こういう時、いつも「若い時、ちゃんと生物と化学をサボらずに勉強しておけばよかった……」と思います。何事も基本ができていないと、後にとても苦労します。実際、私は苦労することが多いです。

どうでもいいですが、赤坂インターシティAIRの同通ブースは一級品ですね。こんなブースで毎日仕事がしたいものです。

2024年10月28日

お薦めポッドキャスト 2024 冬

 

前回ポッドキャストについて書いたのが2017年(!)と知って我ながらちょっと驚きです。ここ7~8年でポッドキャスト業界はかなり変わりました。コンテンツはさらに多様化し、ディープな番組が増え、特に英語圏ではカネになるビジネスモデルとして一大勢力になっています。日本でも数年遅れで盛り上がりがきているようですね。

私は昔と変わらず通勤時・移動時はポッドキャストを聴いています。最近好きなのは以下の5つ。

The Prof G Podcast

ユーモアたっぷりに米国&世界経済を知的に語るスコット・ギャロウェイ教授のポッド。スポンサーがつく前は番組の冒頭に毎回エグイ下ネタをぶっこむことで有名でした(勉強になりました 笑)。経済学教授のギャロウェイは、過去には自分の事業を起業⇒EXITした経験もあり、今もアクティブな投資家であることから、その分析はキレッキレです。アシスタントのエドくんも若いのに頼りになることよ……

Against the Rules

著名作家マイケル・ルイスのポッド。私はS4のサム・バンクマン=フリード(SBF)のシリーズから入りました。FTX破綻当時、通訳市場は仮想通貨/暗号資産の案件であふれており、私もその一部を担当していたことから他人事とは思えなかったのです。あと、SBFの風変りなキャラと、「効果的利他主義」についてもっと知りたかったというのもあります。というかさすがマイケル・ルイス、他のシーズンも充実した内容ですよ。

Revisionist History

マルコム・グラッドウェルの活躍については、日本では彼の著書を通じて知った人が多いかもですが、実はマルコム、ポッドキャストという形態でもかなりのストーリーテラーです。個人的なお薦めは McDonald’s Broke My Heart と The King of Tears でしょうか。マルコムらしい視点と展開は毎回絶妙。

How Crime Works

各種犯罪の仕組みを完全解説。犯罪に限らず、私のような仕組み好きはブクマ必須です。

All-in Podcast

4人の著名VC投資家が政治からビジネスまでいろいろ雑談する番組。コロナ渦の20年3月に立ち上がり、今では単独で大規模ライブイベントをするまでの人気に。芸能通訳者の今井美穂子さんもファンらしい。

ちなみに、JACIが立ち上げた村松増美アーカイブも一緒にどうぞ!

2024年10月5日

国連案件で土木を学ぶ。

 

21年から国連三角パートナーシップ・プログラムの遠隔部分、作業工程管理過程の通訳をしています(写真は公式から拝借)。初年度は防衛省に近い市ヶ谷の会議室で開催されましたが、翌年からはより充実した国連大学の会場に移りました。アジアやアフリカの軍関係者に対して、建設作業の組みかたや工程管理を教えるプログラムです。基本的には毎年同じ内容なので2年目からは比較的楽になりましたが、初年度はとにかく苦労の連続でした。日常的に通訳しているような内容ではないし、多くの参加者はアクセント持ちです。けれど「あなたの英語はアクが強すぎて全然理解できません」と言うわけにはいかないので、なんとか相手の体裁を保ちながら、前後の文脈で推測して処理していく、という部分も少なからずありました。全員が全員、きれいな英語を喋るわけではないので、これはしかたがないことです。

この案件ではたびたび通訳の域を超えて、自主的に参加者に直接語り掛けることがあります。相手の理解を確認したり、成果物の提出を再三促したり、「あなたが聞きたいのは〇×ですか?」と質問の意図を具体的に確認したり。時間が限られているので、単に訳すだけではなく、進行アシスタントのような形で前に出て進めていく方がスムーズにいくなと判断してそのようにしています。話されたことだけ訳す、と考える通訳者もいますが、私は常に臨機応変に対応するように心がけています。クライアントの大半は「通訳者」を求めているのではなく、「案件の完遂」を求めているのですから。