2025年2月3日

ALGS札幌を大いに楽しむ!

スイスから帰国した翌日、午前の便で札幌へ。本来であれば無理っぽい移動スケジュールなのですが、コロナ渦からApex Legendsの新シーズン発表会や開発者インタビューの大半を担当してきた通訳者として、日本で世界大会が開催されるのであればこれは行かなきゃアカンやろ、という感じです。私の通訳ぶりを「マジシャン(魔法使い)」と呼ぶ開発チームやPRチームのメンバー(たぶん私以外の通訳者を知らない可能性大)とリアルで会うのも実はこれが初めて。現場での仕事はもちろんですが、今後の展開も考えると一度挨拶しておくのが良いかなと思いました。遠隔では何度も会っているのですがね。

さて、2月上旬の札幌は当然ながら雪、雪、アーンド雪。寒い。さっぽろ雪まつりの直前の週末ということもあり近場のホテルがとれず、あまり効率的な移動ルートにならなかったのも残念……けれど会場はアツい!そして若い!明らかに10代~20台前半の若者が多めです。おじさんは彼らからエネルギーを頂こうと思います。

私の今回の仕事は大会期間中の①スタッフ間のコミュニケーション支援(世界大会なので海外から多数のスタッフ&メディアが来日していた)、②メディアインタビュー、③優勝者インタビューでした。①と②は以前にも書いたので、今回は③をメインにどう準備したかを説明していこうと思います。

私はApexの競技シーンやEsportsシーンについてそこまで詳しいわけではないので、大会前はまず基本情報から調べます(メディアインタビューで聞かれる質問も想定する)。なぜ札幌が開催地に選ばれたのか。優勝候補は?日本チームの数と優勝の可能性は?有力選手は?過去、特に前大会の結果は?人気のフォーメーションは?これらはすべて基本情報です。特に日本開催なのでメディアは日本チームを特集しがち。通訳者も当然それはわかっているので、日本チームは集中して調べます。今回でいえばFnaticでした。プレイ動画に加えて、選手個人のインタビューをYouTubeで視聴し、話す速度や話し方のクセに慣れておきます。たとえばYukaF選手は自分のチャンネルを持っていました。

このようなイベントで通訳者が観客席からライブ観戦することはほぼありません。スタッフなので、メディアルームで待機しつつ、状況がどう変化しても柔軟な対応ができるように準備をすることが求められます。大会最終日はメディアルームに用意されたモニターで結果を確認しつつ、優勝候補のチームについて調べていました。全チームについて細かく調べるのは効率が悪すぎますし、8位や12位のチームについては誰も質問などしないので、優勝のチャンスが生まれた、つまりチームに優勝リーチがかかった時点からそのチームについて深掘りを始めます。たとえばALGS札幌で優勝したチームの情報はこちらです。

Liquipedia – GoNext Esports

優勝リーチがかかった時点でまず調べるのは①チームメンバーの名前の正しい発音、②チーム加入時期と過去の所属先、③最近の大会結果です。時間に余裕があれば選手個人のインタビュー記事を探したりしますが、この基本3点を調べておけば大丈夫。あとは決勝戦で印象に残ったラウンド(たとえば劣勢から大逆転したラウンドなど)を把握しておけばOKです。

     名前(ID)の正しい発音

公式インタビューで重要人物のIDを間違えるほど恥ずかしいことはありません。優勝チームのメンバーであるHiarkaUxakoはまだ簡単な方で、WxltzyFuhhnqなど、どこをどう読んだら良いのか全然わからないようなIDもあります。そんな時は恥ずかしがらずに大会スタッフやメディアの方に聞くのみ。ちなみにLiquipediaには選手の実名も掲載されていて、私も一応紙に書き写して手元に置いておきはしますが、基本的にはメディアが選手を実名で呼ぶことはありません。

     チーム加入時期と過去の所属先

Esportsの世界は選手が同じチームに長く在籍せず、短いスパンで移籍を繰り返すことが多いです。メディアは物語性を求めますから、過去の所属先と比較したり、過去に同じチームでプレーしていて今は別のチームに所属している選手とのライバル関係とか、またはそもそも今のチームは何をきっかけに結成されたのか、チームメートの関係性とか、そういうことを聞くことが多いです。優勝したGoNext Esports2024105日に3人揃って加入しているので、「もともと選手たちの仲が良いのかも」と予想がつきますし、結成後はALGS前に3連勝しているので、調子が良いのもわかります。

     最近の大会結果

ALGSの優勝インタビューでは使いませんでしたが、直前の13YOG x Redragon League - Grand Finalsで優勝した際の情報も仕込んでおきました。加えて、直前の大会で異なったレジェンド(キャラ)を使用していた場合や、異なる戦略を採用していた場合は、なぜ変更したか聞かれるかもしれません。メディアが細かい戦術的な質問をすることはあまりないのですが、時間に余裕があれば基本的な戦術について知っておいて損はないです。 

運営は通訳者の座る位置を考慮していない場合があるので、私は運営に確認した上で、自分でポジション取りや机の設置をすることが多いです。写真撮影があるので壇上に陣取ることはなく、カメラに映らない範囲でステージ横に座るケースが多いですが、運営が選手にカメラ目線を求めるのであれば、メディアのすぐ後ろに座ることもあります。後者の場合、メディアの質問がうまく聞き取れないかもしれないというリスクはありますが、選手は常にメディア(=カメラ)を見て話すメリットもあります。通訳に慣れていない人はどうしても通訳者の方向を向いて話してしまうので。

メディアインタビューもそうですが、このようなインタビューで私が常に意識しているのはスピードとテンポ。極端な話、正確性が若干損なわれたとしてもスピードとテンポを優先します。正確性を犠牲にするのはけしからん、と思うかもしれませんが、人間のアドリブ発言には必ず情報価値が低い要素が存在していて、時間に余裕があれば訳すことができるものの、「ここはムダだからばっさり落とす」と決めた方が全体的な印象が良くなるケースが多いのです。もう一つ意識しているのは、通訳の形式をスタートから確立すること。一応事前に関係者には説明するのですが、たとえば海外メディアから英語で質問があったとき、選手が答える前に和訳し始めることで「質問の訳が先だよ!」と行動でルール設定をするのです。これを冒頭でやらないと後々面倒なことなる場合も……


ちなみに大会前にはApex関連のYouTubeにも声の出演?をしました(かなりカットされてはいますが)。

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