2014年11月28日

小学生に説明するように。

通訳を学ぶ人に覚えておいてほしいのが、通訳では「聞きやすさ」も正確性と同じくらい重要だということです。いくら情報が正確でも、言葉が聞きにくいと理解しにくいし、理解できないこともあるのです(ホントに!)。

私は昔から、「小学生でもわかるような通訳をしなさい」と教えています。これは機械のようにぎこちなく直訳したり、専門家が話すような退屈な口調でなく、もっと自由に、相手に「伝える」ことを明確に意識した通訳をしなさいという意味です。自分が感じていること、実践していることを言語するのは簡単なことではないので、「小学生とはちょっと言い過ぎかなあ」と思っていた時期もありましたが、これを観てやはり自分は間違っていなかったのだなあと確信しました。



「賢い小学6年生に話しかけるように」はまさに私が感じていることと同じです。業界は異なりますが、聞き手を意識することは同じですね。

ちなみにこの動画に出ているAlex Blumbergはラジオ/ポッドキャスト業界でかなりの実績(This American LifeやPlanet Money)をもつプロデューサーで、今夏には自身のポッドキャストビジネスを起業して話題になっています。起業の「き」も知らないアレックスが試行錯誤しながら、そして時に妻に突っ込まれながらも、たくさんの支援を得ていく姿は現代のアメリカンドリームを見ているようです。

Gimlet Media

2014年10月27日

もっともっとポッドキャスト。

1本目2本目が好評だったので、ここ1年くらいで追加したポッドキャストをまた紹介します。


HBR IdeaCast

HBRはHarvard Business Reviewの略。ビジネスに関する様々なトピックをシンプルに紹介します。


The Tim Ferris Show

最近のイチオシ。ゲストも豪華。Google Ventures責任者であるKevin Roseとの「飲み放談」みたいなコンテンツは他で聴けるところはないと思います。ピーター・ティールとかも普通に呼んでるし!


NPR: Snap Judgment Podcast

NPRの新番組。This American Lifeと似たようなスタイルではありますが、こちらもなかなか。


荻上チキ Session-22

最近の寝る前チョイス。トピックの守備範囲が本当に広くて感心します。


Now Hear This: The Official Podcast of Blue Note Records

ジャズ好きの方にお薦めです!


Bulletproof Radio

既存のテクノロジーをフル活用して「人間はどこまでアップグレードできるか」 を追求する番組。ほぼすべてのエピソードがE指定(卑猥な言葉が一杯!)なのが笑える。


The 10-Minute Marketing Show

文字通り、マーケティングに関するトピックをサクサクと。



Johns Hopkins Medicine Podcasts

豊田さんの紹介で聴きはじめました。子宮移植して妊娠なんて驚きましたわ…


Grantland Sports

"Give the people what they want!" まあスポーツ好きの私ですからね。NFLからWWE(プロレス)までメジャースポーツを幅広くカバーしています。

2014年10月26日

『通訳者の便利ツール』を執筆。


いまさら感が充満している感じですが、翻訳通訳ジャーナルの10月号(8月21日発売)で私が普段使用している便利アプリやツールを紹介しました。詳細は購入していただくとして、実はこの記事発表後にイヤホンを新調したことをお知らせします(卵が飛んできそう)。

私は耳の奥までしっかりフィットするイヤホンが好きなので、Klipsch Image X10をずっと使っていました。 ただ、長時間の同時通訳になるとやはり耳が痛くなります。サウンドクオリティには満足しているのですが。

それで先月、海外出張に行ったら、偶然にも隣の百貨店にBang & OlufsenのA8 イヤホンが販売されていて、「耳掛けタイプも試してみるか…」と買ってみました。そしたら、これが、いい。耳が疲れない。耳の中にすっぽり入らない分、音が少し遠く感じるのですが、それでも長時間の案件にはもう手放せませんね。

今では2時間程度の同通はKipschで、それより長い案件はBang & Olufsenと使い分けています。

2014年10月25日

通訳忘年会 2014


ありそうでなかった、大規模通訳者忘年会。今年から始めちゃいます!

現役プロ通訳者も、通訳者を目指している方も、一緒にワイワイやりましょう。誰でも参加可能です。

飲んで食べて、通訳ネタを一晩中語る、それだけです! いや、もしかするとスペシャルゲストによるトークもある「かも」しれません!お楽しみに!

通訳忘年会 2014

↑ チケットの事前購入が必要です!

2014年10月23日

フリーランス翻訳者の桃太郎

最近、桃太郎のアレンジがネットで流行っているようなので、フリーランス翻訳者バージョンを作成してみました。まあ、ネタです。

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 昔々あるところにおじいさんとおばあさんが手書きの原文に頭を悩ませていました。

 おじいさんは締め切り前に山へ缶詰に、おばあさんは徹夜明けのストレスから何も考えずに川でボーッとしたいと思いました。

 すると川上から桃がドンブラコドンブラコと流れてきたが、英語でドンブラコの雰囲気を表現するのは難しいんだからこんなの原文に書くなよとおばあさんは思いました。

 桃を持ち帰って割ってみると、中から赤ん坊が現れて大声で泣きました。PDFのOCRがうまくいかないからです。

 すくすくと育った桃太郎はある日、鬼退治へ行ってくると言いました。そうするか一週間スポッティングだけやって過ごすかの二択だったからです。

 おばあさんは桃太郎にきび団子を渡しましたが、そんな余裕があるんだったらレートを上げてほしいと桃太郎は思いました。

 桃太郎は「日本一」と書かれた旗を掲げようと思いましたが、英語の方がかっこいいのでBest in Japanにしました。けれどなんだか広告臭いのでやめて、「加油!桃小龍!」と書きました。

 その途中、イヌ・サル・キジが「きび団子をください」と言ってきました。具体的には以下の通りでした。

イヌ「단고를하십시오」

サル「Пожалуйста Kibidango」

キジ「தயவு செய்து Kibidango」

やっぱりきび団子を外国語にするのは難しいんだなあと桃太郎は思いました。

 イヌ・サル・キジは桃太郎の家来になりましたが、正社員ではなく登録制であり、鬼退治はトライアル扱いになりました。

 桃太郎達は鬼ヶ島に到着しましたが、約束された追加原稿は午前2時を過ぎてもまだ届いていません。

 イヌはそのするどい牙で鬼の足に噛み付きましたが、いくら噛み付いても締め切りは変わりません。

 サルはそのするどい爪で鬼の顔を引っ掻きましたが、締め切りが迫っても思考は鋭くなりません。

 キジは鋭利なクチバシで鬼の目をつつきましたが、多くのフリーランスは営利どころかボランティアすれすれの仕事をしています。

 鬼達が負けを認め、ついに桃太郎達は勝利を収めましたが、翻訳仲間にヘルプでお願いした訳文はまだ納められていません。

 こうして桃太郎は金銀財宝を持ち帰り幸せに暮らしたかったのですが、エージェントにほとんど抜かれて今夜もため息をつくのでした。Sigh. 

めでたし、めでたし。


2014年8月27日

通訳のノートテイキング

特に告知していませんでしたが、2月から通訳翻訳ウェブで「通訳のノートテイキング」について連載していました。ジャン=フランソワ・ロザンの名著『逐次通訳のノートテイキング』の内容をなぞって、一部は現代的な例に差し替えたりして書いたものです。いずれ時間ができたら大幅加筆して電子書籍にでもしようかなと。もっと実例を盛り込みたいですしね。

第1回 言葉ではなく、アイデアを書き留める
第2回 略語のルール 
第3回 リンクの明示 
第4回 否定と強調 
第5回 縦に書く(スタッキング) 
第6回 縦に書く(括弧を使う) 
第7回 シフト 

質問などありましたらいつでもご連絡ください!

2014年7月13日

翻訳者生命の終わりについて

某メーリングリストでの「翻訳者生命の終わり」に関するディスカッションを読んで、私なりに考えたことを色々と書いてみる。元スレを要約することこんな感じ。

いままで頑張って翻訳の仕事をしてきた。複数の翻訳エージェントのトライアルを受けたが、「そのうち連絡をするから待っていて」とだけ言われて、その後は音沙汰なし。仕事も連絡もなくなった私は、翻訳者としての生命が終わったのだろうか?
これに対して「私は生活保護レベルの金額しか稼げてない」 というレスがあって一気に室温が上昇し、多くのレスがついてプチ祭り騒ぎなのですが・・・
 
マジレスすると、登録した翻訳エージェントの数がいくつなのかわからないのでなんとも言えないのですが、仮に20社~30社ほど登録しても十分に食べていけてないのであれば、学校で学びなおすか、辞めた方がいいと思います。冷たい言葉かもしれませんが、それだけ登録して実力を認められないのであれば、実際に実力がないと考えるのが妥当でしょう。誰にでもできる仕事ではないのです。

翻訳力があるという前提にたてば、できることは色々あります。基本的には以下の3点。

1.エージェント(翻訳会社)の登録数を増やす

希望レートがどれくらいかという問題もありますが、確率論的に考えて、とりあえず30社くらい登録すれば、3~5社くらいから定期的に仕事のオファーがあると思います。これで月20日稼働すれば安定した生活ができると。

ただ、これに満足せず、安定したワークロードを確保した後も、今度は希望レートを上げて登録社数を増やすのが得策です。希望レートが通れば万々歳、通らなくてもすでに安定的にオファーが来ているので問題はありません。これを定期的に続けて新陳代謝を図り、少しずつ収入を上げていくのです。同じ労働量だったら、高い収入の方が嬉しいに決まってますよね。

ただ個人的には、エージェントモデルにはそもそも限界があると思っていて(35%~50%くらいはエージェントにとられてしまうので)、より安定的な生活環境・仕事環境を目指すのであれば、次の2点が重要だと考えます。


2.ネットワーキングを強化する

日本翻訳者協会(JAT)や日本翻訳連盟(JTF)等の業界団体が開催するイベントに参加してコンタクトを作ること。ネット全盛の今でも、ビジネスは結局、人と人とのつながりなので、いろんな人と友達になっておけば仕事のオファーが舞い込んでくるものです。そして、これは実際に経験してみないとわからないことなのですが、業界仲間からのオファーは比較的に好条件のものが多いのですね。

業界団体に登録すると専用の会員ページを貰えることがあるので、それも活用しましょう。例えば私は2002年からJATの会員なのですが、会員ページ経由で頂いた仕事の報酬は、2014年までに支払った会費(12万円)の30倍は軽く超えていると思います。計算していないので正確にはわかりませんが。ネットに広告スペースを買っているという感覚ですね。

SNSも侮れません。最近では自分のメディア(ブログ等)で情報を発信したり、LinkedIn等のキャリア系SNSで情報発信して仕事を得るケースが増えています。自分の専門性をどう伝えるか、そしてどれほど広く伝えられるか。このあたりがクリティカルです。


3.直接取引できるクライアントを獲得する

個人翻訳者レベルだと、直接取引のクライアントを数社抱えるだけで生活はかな~り安定します。エージェントレートの2倍は稼げますし、仕事を通してブランド・ロイヤルティを高めることが可能になります(要はお客さんとの信頼関係を高めるってこと)。見積もりや請求作業が面倒!という人がたまにいますが、今ではfreee(フリー)のような全自動ソフトがあるわけで。

「で、どこで見つけるのよ?」とつぶやいてるあなた。もっと外に出ましょうよ!Let the whole world know you've arrived!


上記3点に加えて、自己投資も忘れないように。具体的には、読書やポッドキャスト等を通して得意分野を増やすとか。たとえば私は建築の専門家ではありませんが(ただのファン)、建築関係のイベントに参加していたら建築家と知り合いになり、複数の事務所から依頼がくるようになりました。特別なことは何一つしていません。

翻訳で1億稼ぐのは至難の業だと思いますが、能力があって、ビジネス的にやるべきことをやっていれば、どう考えても年収500万くらいは普通にいくと思いますよ…

2014年5月27日

翻訳料を払わないと、どうなるか。

あ、いや、私が直接被害に遭ったわけではないです、念のため。最近、フェイスブックで料金滞納に関するトピックが話題になっているのです。

ある翻訳者が、100万円近くの大金を数年滞納されていると。最初は友人だと思って許していたけど、ここまでくるとさすがに悪質なのでフェイスブックで友人関係を断ち、ビジネスライクに回収しますと連絡したら、月5万の分割を提案してきたとか。

たとえ遅れても支払いの意思があるのは良いことだ、という生ぬるい話ではない。100万円近くを滞納されることは、多くのフリーランス翻訳者にとっては死活問題です。この翻訳者はたまたま数年待てる経済的余裕があったらから今まで大問題にならなかったものの、大多数の翻訳者は数か月遅れるだけでピンチになるのが現実です。人を雇うということは、たとえその人が正社員ではなくフリーランスだとしても、その人の生活に責任を持つという意味でもあるので、ぜひT氏にはそのあたりをじっくり考えていただきたい。

そもそも翻訳ビジネスは在庫を抱えないので、料金滞納事例が発生することがまずおかしいのです。支払うべきお金を支払わない(支払えない)のは、適切なリスク管理をしなかった結果、そもそもあまり信用できない会社から回収できなくなったか、経営者がギャンブルで資金を全部溶かしたか、基本的にはこの2択しかないと私は考えます。後者は問題外ですが、前者も言い訳にはなりません。というのは、人を雇う規模でビジネスをするのであれば、回収不能リスクを適切に評価した上で経営するべきだからです。具体的に言えば、もしものときに備えてキャッシュを蓄えておくとか。300万円の仕事を受けるのであれば、少なくとも100万~150万円程度のキャッシュを持っておくべきです(うちのような弱小事務所でも常に1000万円はもっているので、できないわけがない)。それがなくて翻訳料が支払えないというのであれば、単に経営者失格です。

その他、翻訳料を支払わないで音信不通になるという実に香ばしい案件が発生しているようです。最近の話。

で、今の時代、翻訳料を支払わないとどうなるか。端的な話、噂はすぐにSNSで拡散します。ブラック翻訳会社と認定されたら翻訳者も雇いにくくなるでしょう(ゼンショー和民が良い例)。そして、ブラックであったという「記憶」は風化するかもしれないけれど、ネット上の「記録」は半永久的に残ります。経営者はこの破壊力を再考するべきじゃないでしょうか。

いや、すごい破壊力だと思いますよ、本当に。

2014年5月26日

CAIS無料講座のお知らせ

基本的に有料講座が多いCAIS(通訳技能向上センター) ですが、今回は無料講座を開催するとのことです。オンライン講座も。以下、メールでの案内をコピペ。


【1】 無料特別企画 その1「座談会~エージェントの立場から通訳現場を語る~」(東京)

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【日時】 6月11日(水) 19:00-20:00

【会場】 サイマル・アカデミー東銀座校(東京メトロ築地駅3分)

CAISの法人メンバーである、通訳エージェントの株式会社サイマル・インターナショナル、派遣会社の株式会社サイマル・ビジネスコミュニケーションズより担当者を招き座談会を行います。通訳市場における業界、ジャンル別の最近の動向、通訳者に求められるスキル、今後の予測など、ベテランの担当者たちが現場について本音で語ります。

⇒⇒⇒詳細・お申込は以下のURLをクリック!
http://www.cais.or.jp/training/14/0611_zadankai.html

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【2】 オンライン無料特別企画 その2「挑戦!数字トレーニング」

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皆さんは、数字をスムーズに訳すことができますか?
通訳をする上では、何千億、何兆といった桁の多い数字も、即座に英語(日本語)に変換できる瞬発力が必要です。

本企画では、日本語(英語)で読まれる数字の音声を聞き、英語(日本語)に訳すトレーニングをオンライン上で受けられます。日常生活でも使用する桁の少ない数字から、ビジネスでよく出る桁の大きい数字まで取り揃えました。このトレーニングで数字への反射神経を身につけ、苦手意識を克服しましょう!

⇒⇒⇒詳細・お申込は以下のURLをクリック!
http://www.cais.or.jp/special/numbers/index.html

2014年5月12日

学習を習慣化することの重要性

某翻訳・通訳学校に潜り込んでいる友人が、「(生徒は)みんな宿題やってこないし、誰か次、訳してみたい人いる?って投げられても、誰も挙手しない」とボヤいていたので、すでに先生業はセミリタイヤしてる私から一言。というかその前に、「やるべきことを毎日しっかりやる」、つまり習慣化に重要性について、世界トップクラスのボディビルダーであるカイ・グリーンが話すのを聞いてくださいな。



要は「グダグダ言ってないで、上手くなりたいたら毎日やれ!」ってことですよ。

2014年5月10日

映画やドラマを使った英語ブラッシュアップ

高松さんのインタビュー記事を読んで、あ、僕と同じ勉強法を推奨してる!と思ったので紹介。

会議通訳者・高松珠子氏インタビュー(前編)

会議通訳者・高松珠子氏インタビュー(後編)
私のお勧めの勉強法は、英語のテレビ番組を見ることです。映画よりもテレビドラマのシリーズがお勧めです。私は責任ある立場の方に会うたびにお願いしてい るのですが、法律を変えてでも、英語の番組を放送する際には英語のテロップを流すことを義務付けてもらいたいと考えています。今、私の家はケーブルテレビ に入っているのですが、バイリンガルの放送はやっていてもテロップは日本語だけなんですね。英語を聞きながら、日本語を読んでも何の意味もありません。言葉と音が一致することによって勉強になるんです。
僕はiPadに映画やテレビドラマをダウンロードして、主に移動中に観ているのですが、英語字幕をオンにして観る場合が多いです。当然なしでも理解はできるし、十分に楽しめるのですが、上手い言い回しなどが出てきた時には覚えておきたい。高松さんが言うように、「言葉と音を一致」させて記憶に定着しやすくしているのですね。特に法務や医療をテーマにしている番組は多いので、これを専門分野にしたい方は楽しみながら勉強ができると思います。

Huluは日本語・英語と両言語の字幕に対応しているようなので、こちらも使えそうですね。

2014年5月9日

翻訳者が無断加筆 翻訳の政治利用?

翻訳の政治利用については欧州の通訳研究でたびたび見かけるが、日本でもこんな事件が。


南京虐殺否定を無断加筆 ベストセラーの翻訳者

同書はストークス氏が、第2次大戦はアジア諸国を欧米の植民地支配から解放する戦争だったと主張する内容。「歴史の事実として『南京大虐殺』は、なかった。それは、中華民国政府が捏造したプロパガンダだった」と記述している。
 だがストークス氏は「そうは言えない。(この文章は)私のものでない」と言明。「大虐殺」より「事件」という表現が的確とした上で「非常に恐ろしい事件が起きたかと問われればイエスだ」と述べた。
 藤田氏は「『南京大虐殺』とかぎ括弧付きで表記したのは、30万人が殺害され2万人がレイプされたという、いわゆる『大虐殺』はなかったという趣旨だ」と説明した。
 だが同書中にその説明はなく、ストークス氏は「わけの分からない釈明だ」と批判した。

さらに興味深いのが最後の部分。

関係者によると、インタビューの録音テープを文書化したスタッフの1人は、南京大虐殺や従軍慰安婦に関するストークス氏の発言が「文脈と異なる形で引用され故意に無視された」として辞職した。

私は藤田を個人的に知らないし、検証可能な問題に関しては適正な検証を待つのがポリシーだが(そしてこの問題は十分に検証可能だと考える)、これはさすがに臭い、というのが第一印象。おそらく原文は"massacre"だっとのだろうが、これだけで大虐殺がなかったと解釈するのは苦しい。前後の文脈を読めば自明である場合が多いのだが…

【追記 5/12】

 「南京大虐殺なかった」翻訳者加筆と報道 出版社は否定:朝日新聞デジタル

共同通信社総務局は9日夜、「翻訳者同席の上で元東京支局長に取材した結果を記事化した。録音もとっている」とのコメントを出した。

出版社は徹底抗戦のようで。

2014年2月23日

異字同訓使い分け手引 42年ぶり見直し

異字同訓使い分け手引 42年ぶり見直し

例えば「とぶ」については、スキージャンプのような空中を移動している状態を言う場合は「飛ぶ」を、フィギュアスケートのジャンプのように地面を蹴って高く上がる場合は「跳ぶ」を使うとしています。
「すすめる」について、物事を前や先に動かす場合は「進める」、読書などの行為を働きかける場合は「勧める」、特定の人や物を推薦する場合は「薦める」を使うとしています。
また、「雪がとける」と言うとき、液状になるという意味で「溶ける」を使うことが多いですが、冬の間中、降り積もっていた雪がとける場合は、固まっていたものが緩むと考えて「解ける」を使うこともできるとしています。
このため「雪どけ」は「雪解け」となります。
個人的には「思う」と「想う」をしっかり使い分ける人が好きです。

2014年2月8日

聞こえない、この苦しみ。

佐村河内氏の事件が世間を賑わせている。

「佐村河内守氏の耳は聴こえていた」新垣隆氏が会見

森下唯オフィシャルサイト » より正しい物語を得た音楽はより幸せである ~佐村河内守(新垣隆)騒動について~

またS氏騒動・長文多謝

新垣隆くんのこと - 笠松泰洋の作曲家日記

実は私は昨年、佐村河内氏のコンサートで交響曲HIROSHIMAを鑑賞していたこともあり、全聾でこれだけの作品を仕上げるとは凄いなあと素直に感動した一人だったので、今回の事件には深い失望を感じている。怒りは正直あまりない。ただただ、失望である。残念である。

個人的な事情もある。つい先日、通訳仲間に引退を打ち明けられた。えっ、まだ若いじゃない、なんで引退するの、と聞くと、「先日、現場でやらかしちゃってね」と言う。なにかとんでもない誤訳をしたわけではないらしい。じゃあなんのさと問い詰めると、「耳が聞こえなくなった」と彼女は寂しそうにこぼした。「ここ一年で急激に聴力が落ちてね。もう仕事にならないの」。

自分のすべてを捧げた仕事が、ある日突然できなくなる。私はそれが一体どういうことなのかすぐには実感できず、ただ彼女の涙をなにもできずに見ていた。そして何の役にもたたない励ましの言葉をかけていた。でも今は少しは理解できる気がする。だから佐村河内氏にはきちんと謝罪してほしいし、罪を償ってほしい。

2014年1月23日

バルボン通訳ふたたび

2014年、一発目からバルボンさんネタをかますのもアレな感じがしますが、面白いからしかたない。面白いは正義、ということで。フリーダムな通訳っていいですね!

40分20秒あたりから。