2025年3月10日

出張で意識・準備すること

3月上旬は米ミシガン州へ出張でした。案件自体については語れないのですが、今回は私が海外出張するときに意識すること、準備していること・モノについて書きます。個人のニーズや好みも当然あるので、あくまでも参考までに……というか私はキャリアを通して2度ロストバゲージの被害にあったことがあり、2度目のあとは「もう絶対に荷物は預けない」と決めているので、必然的にパックする荷物は最小限になります。女性には絶対向いてない。というか、バリバリの私服で要人の通訳をするのはつらい。

まずキャリーケースですが、私は昔からカリマーを使用しています。もともとは何を使っていたか忘れましたが、たしか2008年か2009年あたりに高城剛の本でAirport Pro 40が薦められていて、「まあ何を使ってもだいたい似たようなもんだから、旅ばっかしてる高城さんの意見を聞いておこう」(安易)と考えて決めたのでした。修理を繰り返してまだ現役ですが、今はソフトキャリーClamshell 40も使っています。たしか40Lがサイズ的に機内持ち込みの限度だったような。ケースの中は最低限の衣服と革靴くらいです。私服のスペースが十分に確保できないときは、持っていくより現地で安い古着を買うことも。これに加えて仕事用のリュックサックにはノートPCと筆記用具など。Manhattan Passage#4210です。

2025年2月15日

篠田顕子さんと組んだ日。

会議通訳者の篠田顕子さんが111日にご帰天された。日英通訳業界ではとても有名な勉強家で、技術も高く、歳を重ねた先輩通訳者にありがちなマウンティングもなく、むしろ新参者や後輩にも配慮する優しい方でした。私が一緒に仕事をしたのは一度だけ、15年以上前に韓国で開催された案件だったのですが、とても落ち着いて安定した訳出ぶりで、多くのことを学びました。仕事のあとはホテル近くの焼肉屋でほぼ肉を注文せずに、もう一人の通訳者である白江さんとくだらない話をしながら笑って過ごした記憶があります(もっといろいろ聞いておけばよかった)。

篠田さんは著書『愛の両がわ』で自身の波乱万丈な人生はもちろん、通訳者になったきっかけとその後の展開についても綴っています。特に女性通訳者にお薦めです。時間がなくても第9章~第12章の仕事に関する部分は読んでおいて損はありません。特に仕事の後に自分のパフォーマンスを徹底的に反省して復習する過程は、私も若手時代に同じようなことをしていて、技術の向上につながった感覚があります。もっとも私の場合はすぐに忙しくなって途中で辞めてしまったのですが、ちゃんと続けていたらもっと上手くなったかもしれない。 

実は2015年にJACIを立ち上げたとき、その夏に初開催する日本通訳フォーラムで篠田さんに基調講演を依頼していました。けれど、もうタイミングを逸してしまったというか、篠田さんはもう仕事を減らすフェーズに入っていて、夏は地方でゆっくり畑仕事を楽しみたい、ということで叶いませんでした。実際、その後は表舞台に姿を現すことはあまりなくなっています。いま思うのは、フォーラムでの講演は難しかったかもしれないけど、何か理由をつくってもっと話をしておけばよかった、ということ。通訳業界はただでさえ先輩たちの記録が乏しいので……。 

あの日、初対面なのに未熟な私を優しくサポートして、時には励ましてくれた大先輩・篠田顕子さん。いつか私もあなたのように他の通訳者を引き上げる存在になりたいです。

2025年2月3日

ALGS札幌を大いに楽しむ!

スイスから帰国した翌日、午前の便で札幌へ。本来であれば無理っぽい移動スケジュールなのですが、コロナ渦からApex Legendsの新シーズン発表会や開発者インタビューの大半を担当してきた通訳者として、日本で世界大会が開催されるのであればこれは行かなきゃアカンやろ、という感じです。私の通訳ぶりを「マジシャン(魔法使い)」と呼ぶ開発チームやPRチームのメンバー(たぶん私以外の通訳者を知らない可能性大)とリアルで会うのも実はこれが初めて。現場での仕事はもちろんですが、今後の展開も考えると一度挨拶しておくのが良いかなと思いました。遠隔では何度も会っているのですがね。

さて、2月上旬の札幌は当然ながら雪、雪、アーンド雪。寒い。さっぽろ雪まつりの直前の週末ということもあり近場のホテルがとれず、あまり効率的な移動ルートにならなかったのも残念……けれど会場はアツい!そして若い!明らかに10代~20台前半の若者が多めです。おじさんは彼らからエネルギーを頂こうと思います。

私の今回の仕事は大会期間中の①スタッフ間のコミュニケーション支援(世界大会なので海外から多数のスタッフ&メディアが来日していた)、②メディアインタビュー、③優勝者インタビューでした。①と②は以前にも書いたので、今回は③をメインにどう準備したかを説明していこうと思います。

2025年1月31日

ローザンヌでCAS案件

私の主戦場の一つは法務で、主に特許侵害や反トラスト法関連の仕事が多いのですが、ここ数年は私の趣味・関心も兼ねてスポーツ法の案件に力を入れています。過去と比べてアスリートは納得できない処分に対して異議申し立てをするケースが増えており、スポーツ分野の紛争についてはCAS(スポーツ仲裁裁判所)が事実上の最高裁判所的な位置づけである以上、戦い続ければ最終的にCASの仲裁判断を仰ぐことになるわけです。私はこれまでオリンピックの代表選手選考、契約金未払い、選手登録、ドーピングなど、様々な事案に対応してきましたが、時にはスイスのローザンヌまで飛んでCAS本部で通訳することも。

事案によりますが、私の場合は通常、①弁護士との顔合わせ&準備会議、②資料の読み込み、③国内で証人を交えたリハーサル、④スイス現地でのリハと最終確認、⑤本番、という流れが普通です。CASの判断次第で選手生命が事実上絶たれる可能性がある選手もいるわけで、選手側としてはとにかく必死で、何度もリハをする場合が多いです。年初に対応した案件を例にして、語れる範囲で準備プロセスを具体的に説明します。

2025年1月24日

2025年シーズン開始 in AUS

明けましておめでとうございます。年末年始にいつものパターンで体調を崩したので、開幕にあわせてしっかり調整?という名のだらだら休養生活を続け、今年は1月7日に無事に法務案件でシーズンINです。今年から若手通訳者向けに、現場ではどんなことを考えているのか、どんな準備をしているのかを中心にもっとブログを頑張って書こうかなと思います。

年明けの1発目の案件、つまり開幕戦はいつも相当緊張します。私の場合、年末年始はだいたい2~3週間は通訳から離れるのですが、開幕戦が迫ると「同時通訳のスピードについていけるかな」と不安になります。不安になるくらいなら1日15分でもいいから同通の練習をすればいいのに、と思う方もいるでしょう。もっともです。でも秋の繁忙期を終えたあとは何も残っていないというか、とにかくゴロゴロして、仕事の連続で4か月我慢していたことを純粋に楽しみたいという気持ちが勝ります。秋は本当に仕事一色ですから。

さて、1月15日からはFIFA(国際サッカー連盟)案件で一週間のオーストラリア出張でした。FIFAは世界各地で各種ワークショップを開催しているのですが、今回はのトピックはtalent development(優秀な選手の発掘と育成)です。FIFAといえばワールドカップ、というのが一般人の感覚だと思いますが、通訳者として関わるFIFAはどちらかかというと10年先のサッカー界を見据えた取り組みの方が多めの印象です。その意味ではタレント発掘はとても重要。できるだけ多くの子供たちにサッカーをする機会をつくり、その中から優秀な選手を発掘し、しっかり育成していく。普通のサッカーファンはあまり意識しないけれど、サッカーが強い国はどこでも組織的に取り組んでいることです。