2025年3月28日

2年ぶりのシカゴ代表団来日

2023年に担当したWorld Business ChicagoWBS)案件を今年も担当。シカゴ市の政治家やビジネスリーダーが来日して、日本からの投資を呼び込む活動、といったらシンプルで分かりやすいかもしれない。東京と大阪でおよそ1週間にわたり投資セミナーや個別の企業訪問などを行いました。2年前は東京部分しか受注できなかったのですが、今回は全日程を任せてもらえることに。前回の仕事が評価されたのは素直に嬉しいですね。

1週間の日程で必要な通訳者と機材をすべて手配する役回りだったのですが、最近は3月でも秋の繁忙期のような忙しさなので、経験豊富な通訳者はなかなか手配できません。スケジュールもリアルタイムで変更されるので、朝10時に「マイクさん、今日の午後2時に通訳者さんお願い!」とお願いされることも。シカゴ側も限られた時間のなかでできるだけ多くの会議や企業訪問を詰め込みたいので、こちらも頑張って動かなければなりません。私自身、この1週間はフル稼働していたのですが、1人だけでも当然足りず……JACIの活動で知り合った仲間たちがいなければ、おそらく手配は無理だったでしょう。その意味では仲間たちに感謝、感謝です。

メリット副市長の基調講演を同通(ジェトロ撮影)

  
参加者からの質問に答えるパネリストの様子(ジェトロ撮影)

週の前半は東京、後半は大阪へ。コロナを経て出張は国内・海外ともに減るかなと思っていたのですが、なぜか今年は個人記録を軽々と破るペースで出張中です。出張にもいろいろありますが、観光要素が含まれている案件は少し休憩ができるので助かりますね。英語が堪能なガイドさんが手配されている場合は、一団の後方で次の会議の資料を読んだりしていることも。休憩時間を全部休憩に使っている通訳者はあまりいないと思います。特に情報量が多い案件では、時間ができれば関連情報をインプットして次の会議に備える。勤勉といったら聞こえはいいですが、知っておくべき情報を知っていないと単に大恥をかくので、それを回避したいという恐怖心もあるのかなと。


メリット副市長と大阪城にて(WBS撮影)

大阪市長担当の通訳者さんと出会えたことも本件の一つの収穫です。市長に憑依したようにリズムよくすらすらと訳出するのを目の前にして、「うわ、この後に自分が訳すのはちょっと辛いな~(泣)」と思っていました。日本では大阪規模の自治体の長のスピーチは原稿が用意されるのが一般的ですが、アメリカでは必ずしもそうではありません。むしろ簡単な”話すべきことリスト(トーキングポイント)”を用意して、あとはアドリブで仕上げる系の話者が多いと思います。今回はそのリストすら提供されていなかった私は(シカゴ側は何百回も話している内容だからかも)、内容を学びながら、そして先読みをしながら訳すわけですが、結構ギリギリの状態で訳しているので自分の出来をよく把握していません。大阪市長担当の通訳者さんとは数か月後に食事をする機会があったのですが、なんとか形になっていたようだったと知って胸をなでおろしました。


大阪市役所にて。(WBS撮影)

開幕を数週間後に控えた大阪万博会場も訪れました。パナガイドを使用した同通だったのですが、ここで通訳者にヒントを一つ。工場ツアーなどもそうですが、移動中はパナ送信機をOFFにするべきです。たまにONのまま移動している通訳者を目にしますが、聞き手はそのあいだずっとムダな雑音を聞き続けているので、本人が気づかないうちに疲労が蓄積していきます。聞き手に優しい通訳者でありたいですね。

最終日は大阪市主催のレセプション。ここでは私の日頃の行いが悪いのか、アドリブのスピーチを4本?5本?訳すことになり、特に最後のスピーチは能や歌舞伎に日本の精神性を感じるみたいな内容で(通訳者あるあるで、もう内容は正確に覚えていない)、汗をかきながら訳した記憶があります。この会には私と市長付き通訳者とは別に、少なくとも5人のプロ通訳者がいたらしいですが、いつか飲み会でも企画したいものです。


懇親会にて。ここに通訳者が7人くらいいた……(WBS撮影)


後にレセプション通訳のヒントを。ディナーパーティー等で要人付きの通訳をする場合ですが、通訳者はいつも要人の真横にいる必要はありません。ずっと真横にいると鬱陶しいと感じる人もいますし、話す相手が英語に堪能であれば①会話が聞こえる、②周辺視界に入る程度で少し離れた後方に立つのが良いです(必要であればワンステップで介入できる程度)。他にも: 

・インハウスの通訳者に恥をかかせないように。たとえばインハウス通訳者が英日も日英も訳し始めた場合は、おそらくマウンティング行為ではなく、その形に慣れているからです。とんでもない誤訳をしない限りは途中から無理に介入しない方がよいです。個人的にはインハウス通訳者に活躍の場を譲る方が多いかもしれません。 

・相手話者の英語が上手くなくても、要人または相手話者に頼まれない限りは介入しないこと。相手話者は自分の英語が十分上手いと考えている可能性があり、介入して訳し始めるとその方の気分を害することがあります。そしても要人はそれを望んでいません。もどかしいコミュニケーションになったとしても、求められるまでは静観しましょう。

・要人が一人になったときは少し距離をとりましょう。自分のスタッフと母語で話している場合(つまり通訳が100%必要ない場合)は、私は5 mくらい離れることもあります。近すぎると常に圧迫感がでてしまうので、緩急を大事にしているのです。 

・ビュッフェ形式のレセプションでは「あなたも食べなさいよ」と勧められることがありますが、食べない方がよいです。通訳あるあるですが、だいたい咀嚼しているときに通訳を頼まれますので。私はせいぜいウーロン茶を手元に置いておく程度で、食事を勧められても「美味しそうだけど、もう食べてきたので」、「ありがたいのですが、仕事の後で友人と約束をしているので」と言ってやんわりお断りしています。

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