2010年6月25日

『やぎの冒険』 今秋公開!

昨夜は私が英語字幕を付けた映画『やぎの冒険』の試写会でした。私も招待されたので行く予定だったのですが、別件の打ち合わせが長引いて参加できず。残念。監督の仲村颯悟(なかむら りゅうご)君と話したかったです。本作品の撮影時は14歳だった颯悟君ですが、将来を嘱望されている沖縄映画界のホープです。

依頼を受けた際にショートフィルム『やぎの散歩』を参考資料として頂いたのですが(長編『やぎの冒険』はこのショートフィルムにインスパイアされているとか)、このクオリティーが素晴らしい。YouTubeで公開したら話題になりそうだからやってくれなかな、と密かに願っています。Buzz Marketingってやつで。

さて、『やぎの冒険』は9月から沖縄を皮切りに全国で順次公開の予定です。日本では私の英語字幕は全くお呼びじゃありませんが(笑)、機会があればぜひ劇場に足を運んでみてください。私としても、自分の映像翻訳キャリアの中でも初めての沖縄映画ですので、思い出に残る作品になりそうです。それにCoccoの主題歌もイイですよ!

ちなみにプロデューサーの井出裕一さんもTwitterをやっています!

2010年6月23日

怪異・妖怪画像データベース

国際日本文化研究センターが最近、怪異・妖怪画像データベースをリリースしました。翻訳に妖怪が出てくる事はあまりないかもしれませんが、仮に出てきたら定訳はほぼ無いので困ることでしょう。そんな時は絵を見てイメージを膨らませ、それをメッセージにして伝達するしかありません。頭でしっかりイメージできる事は大事ですし、それができなければ味のある訳文は生まれないでしょう。妖怪に限らず全てに通じることです(笑)。

ちなみに水木しげる系の妖怪をいくつか検索してみたのですが、あまりヒットしないようです。英語で検索可能な妖怪(怪物?)はもっと少ないのですが、imp や ogre でいくつかヒットしました。掘り出せばまだありそうですね。

怪異・妖怪画像データベース

2010年6月22日

翻訳者・通訳者の行動経済学2 「締め切りを設定し、決意表明する」

私は学生の頃、先延ばしの常習犯でした。特に大学時代は期末レポートが多かったのですが、締め切りの3~4日目になってブツブツ言いながらやっと始めていた記憶があります。当然のことながら成績は中の下、いや、下の中?まあ良くなかったことは確かです。自分が興味を持てることしか学ぼうとしなかった生意気な若造でしたから。

この先延ばし問題の原因を探るため、そしてあわよくばこの人間共通の弱点の解決法を発見するため、アリエリーは消費者行動のクラスの学生を使って実験しました。12週間の学期中、レポートを三回提出するのですが、その締め切り設定方法を3つのクラスでそれぞれ工夫してみたのです。

A 学生が自分で三回の締め切りを設定し、事前に申告する。
B 学期中は締め切りなし。最後の講義までに全部提出すればOK。早く提出しても成績が上がることはない。もちろん事前申告も不要。
C 教授が第四週、第八週、第十二週に締め切りを設定。学生には選択の余地なし。

※締め切りに一日遅れるごとに1%の減点。

この結果、一番成績が良かった順にC、A、B、つまり教授が強制的に締め切りを設定したクラスは最も良い成績を記録した一方、逆に完全な自由を与えられたクラスは一番悪かったのです。自主的に締め切りを設定(決意表明)したAの学生はBと比較して平均成績が高かった事も注目点です。

多くの人間は先延ばしをします。ただこの実験結果からも分かるように、大抵の人間は先延ばしの問題を理解していて、機会を与えられればその問題に取り組む行動を起こし、それなりの成果を得る事です。事実、Aの学生の一部はCと似たような締め切りを自主的に設定し、これらの学生はCの学生とほぼ同レベルの成績を残しました(ただ締め切りを設定せずに学期末にやっつけ仕事を提出した学生もいた為に平均成績ではAはC劣った)。一部の学生は締め切りの間隔を十分にとらなかったため、結果的に自分の首を絞めてしまうというケースもありました。

2010年6月21日

翻訳者・通訳者の行動経済学1 「客は相対性で選択する」

翻訳・通訳はビジネスですので、当然の事ながら見積書や請求書などの事務文書の作成が必要になります。エージェント経由で仕事を請ける人は何ら気にすることはありませんが、企業と直接取引をするフリーランスの翻訳者・通訳者は自分で作成する人が多いはずです(もっとも今は時間・手間コストを考えて事務文書作成や経理を外注する人も増えてきましたが)。今日からダン・アリアリーの『予想どおりに不合理』等の行動経済学の書籍を参考にしながら、シリーズで「翻訳者・通訳者の行動経済学」について書きます。第一回は人間の選択と相対性についてです。具体的には、効果的な見積書の作成の仕方です。

多くの人間は自分が何を求めているのか分かっていません。自分が何を欲しがっているのか、それは具体的な状況に置かれて初めて分かるものです。特に現代のように選択肢が多岐多様な時代において、人は炊飯器一つ買うにしても何か参考になる情報や状況なしではなかなか最終的な判断を下せないものです。

例えば私は中学生の頃にテニスを始めたのですが、初めて購入したラケットはアンドレ・アガシが当時使用していたHEADブランドの物でした。憧れの選手が使っているラケットなら間違いはないだろう、という論理です。友人に最近ドコモからソフトバンクのiPhoneに乗り換えた男性がいるのですが、彼は「ドコモの携帯でも十分だと思ってたよ。同僚がiPhoneを使ってるのを見るまではね。彼も熱く語ってたし!」と言っています。つまり同僚(他人)の選択・価値観に影響されての選択ということです。ここで重要なのは、行動経済学では人間は常に相対的な判断をするということです。目的地に案内してくれるガイドを常に必要としているのです。