2014年7月13日

翻訳者生命の終わりについて

某メーリングリストでの「翻訳者生命の終わり」に関するディスカッションを読んで、私なりに考えたことを色々と書いてみる。元スレを要約することこんな感じ。

いままで頑張って翻訳の仕事をしてきた。複数の翻訳エージェントのトライアルを受けたが、「そのうち連絡をするから待っていて」とだけ言われて、その後は音沙汰なし。仕事も連絡もなくなった私は、翻訳者としての生命が終わったのだろうか?
これに対して「私は生活保護レベルの金額しか稼げてない」 というレスがあって一気に室温が上昇し、多くのレスがついてプチ祭り騒ぎなのですが・・・
 
マジレスすると、登録した翻訳エージェントの数がいくつなのかわからないのでなんとも言えないのですが、仮に20社~30社ほど登録しても十分に食べていけてないのであれば、学校で学びなおすか、辞めた方がいいと思います。冷たい言葉かもしれませんが、それだけ登録して実力を認められないのであれば、実際に実力がないと考えるのが妥当でしょう。誰にでもできる仕事ではないのです。

翻訳力があるという前提にたてば、できることは色々あります。基本的には以下の3点。

1.エージェント(翻訳会社)の登録数を増やす

希望レートがどれくらいかという問題もありますが、確率論的に考えて、とりあえず30社くらい登録すれば、3~5社くらいから定期的に仕事のオファーがあると思います。これで月20日稼働すれば安定した生活ができると。

ただ、これに満足せず、安定したワークロードを確保した後も、今度は希望レートを上げて登録社数を増やすのが得策です。希望レートが通れば万々歳、通らなくてもすでに安定的にオファーが来ているので問題はありません。これを定期的に続けて新陳代謝を図り、少しずつ収入を上げていくのです。同じ労働量だったら、高い収入の方が嬉しいに決まってますよね。

ただ個人的には、エージェントモデルにはそもそも限界があると思っていて(35%~50%くらいはエージェントにとられてしまうので)、より安定的な生活環境・仕事環境を目指すのであれば、次の2点が重要だと考えます。


2.ネットワーキングを強化する

日本翻訳者協会(JAT)や日本翻訳連盟(JTF)等の業界団体が開催するイベントに参加してコンタクトを作ること。ネット全盛の今でも、ビジネスは結局、人と人とのつながりなので、いろんな人と友達になっておけば仕事のオファーが舞い込んでくるものです。そして、これは実際に経験してみないとわからないことなのですが、業界仲間からのオファーは比較的に好条件のものが多いのですね。

業界団体に登録すると専用の会員ページを貰えることがあるので、それも活用しましょう。例えば私は2002年からJATの会員なのですが、会員ページ経由で頂いた仕事の報酬は、2014年までに支払った会費(12万円)の30倍は軽く超えていると思います。計算していないので正確にはわかりませんが。ネットに広告スペースを買っているという感覚ですね。

SNSも侮れません。最近では自分のメディア(ブログ等)で情報を発信したり、LinkedIn等のキャリア系SNSで情報発信して仕事を得るケースが増えています。自分の専門性をどう伝えるか、そしてどれほど広く伝えられるか。このあたりがクリティカルです。


3.直接取引できるクライアントを獲得する

個人翻訳者レベルだと、直接取引のクライアントを数社抱えるだけで生活はかな~り安定します。エージェントレートの2倍は稼げますし、仕事を通してブランド・ロイヤルティを高めることが可能になります(要はお客さんとの信頼関係を高めるってこと)。見積もりや請求作業が面倒!という人がたまにいますが、今ではfreee(フリー)のような全自動ソフトがあるわけで。

「で、どこで見つけるのよ?」とつぶやいてるあなた。もっと外に出ましょうよ!Let the whole world know you've arrived!


上記3点に加えて、自己投資も忘れないように。具体的には、読書やポッドキャスト等を通して得意分野を増やすとか。たとえば私は建築の専門家ではありませんが(ただのファン)、建築関係のイベントに参加していたら建築家と知り合いになり、複数の事務所から依頼がくるようになりました。特別なことは何一つしていません。

翻訳で1億稼ぐのは至難の業だと思いますが、能力があって、ビジネス的にやるべきことをやっていれば、どう考えても年収500万くらいは普通にいくと思いますよ…