2012年4月30日

高速バス事故と東北観光博HP誤訳問題の共通点

関越道で高速バス事故 7人死亡 39人けが

これを読んで東北観光博HPの誤訳問題を思い出した。株式会社クロスランゲージが訳を提供した案件。もっと早く記事にすべきだったな。

誤訳多発で東北博HP閉鎖 秋田が「飽きた」に

 観光庁は13日、東北6県で3月に始まった「東北観光博」のホームページ(HP)で紹介している
観光名所などの英語、韓国語、中国語訳に誤りが多数見つかったため日本語以外のHPを閉鎖した。
自動翻訳機を使い、その後のチェックをしなかったのが原因。
同庁は「関係者にご迷惑を掛けた」としており、修正して4月下旬に再開する。

観光庁や各県によると、秋田市の「あきた千秋公園桜まつり」では「あきた」を英語で「飽きた」の意味の「tired」に誤訳。
仙台市指定有形文化財「旧伊達邸」はローマ字表記で「きゅういたつてい」に。
秋田県男鹿市の伝統行事「ナマハゲ」に至っては中国語で「はげ頭病」の意味になっていた。

これを見た私の第一印象はというと・・・


それはさておき、私が興味深く思ったのは2つの事件の共通点。

①関係者が問題(またはその予兆)に気付いていても改善しない

機械翻訳を使う人間は機械翻訳の欠点をよく理解しています。決して万能だとは思っていません。それがなぜここまで酷い翻訳になったのか。「固有名詞等のデータを提供してもらえなかった」と言い訳しているようですが、それでも秋田→飽きたは言い訳にならない。

②発覚して問題にならなければ万事OK…だと?

高速バス運転手で居眠りを経験、または眠気を感じたまま運転をした経験がある人は90%近くに上ると報道がありました。つまり居眠り運転的現象はほぼ毎日のように発生しているわけで、単に事故になっていないので問題視されていないだけなのだ。これは翻訳でも同じことで、誤訳もバレなければ問題にはならない。私も文書や書籍を読んでかなり酷い誤訳を見かけるときがあるが、一つひとつを指摘していけばきりがない。要は潜在的な大誤訳問題はそこらに山ほど落ちているのである。機械翻訳を利用する側はこのリスクを正しく評価できているのだろうか。

③結局、消費者行動は変わらない

このバス事故の翌日、高速バスの乗車率にはまったく影響がなかったようでした。不安だが安さが魅力、と。これは翻訳でも同じで、東北観光博の一件が機械翻訳の利用に歯止めをかけることはないだろう。結局のところ、消費者は何も学ばない。「リスクはあるだろうけど、自分に限っては…」のメンタリティーなのだ。問題が発生してからでは取り返しがつかないというのに。

2012年4月29日

TEDxOsakaとニコニコ超会議!

IJETでも講演する@sei_nさんに誘われてTEDxOsakaに潜入してきました。とりあえず当日の放送はこちらからどうぞ。

TEDxOsaka 2012/04/28 Ustream Archive

動画で流れたプレゼンはこちら。





個人的にはガー・レイノルズと杉本先生のプレゼンが面白かった。来年はネタを練ってオーディション受けてみようかな。実は翻訳2.0的なアイデア(妄想?)はあるのだけど。

翌日は幕張メッセでニコニコ超会議2日目に参戦。ドワンゴの本気を見せてもらおうじゃないの、大赤字覚悟の一大イベントだっていうしさ。感想は書くのが面倒なので写真をいくつかだけ。というかニコ動でタイムシフト視聴しようよ、525円で全部観られるんだから。あと、まとめ記事もあるし。

駅からこの列。入場まで一時間強。初日よりは改善されたらしい。

GEISAIで私のイチオシだった小野眞智子さんも!

黒字化のネ申こと夏野剛

空いてるように見えるこど、死ぬほど混んでました

私は主にニコニコ学会と言論コロシアムに参加。
特にニコニコ学会βはいま日本で一番アツい学会だと思います。まさにマッドネス。なんでもあり、知と技術の総合格闘技。超注目です。

2012年4月28日

2012/05/19 岩瀬大輔講演会 in 沖縄




【講演概要】

「ネットで保険は売れない」というそれまでの常識を根底から覆したライフネット生命保険。その副社長である岩瀬大輔氏が自身の経験を振り返りながら、これからの社会を担う若者に必要なスキルや能力はなにか、イノベーションを起こすための思考法や戦略の立て方について講義します。大学生と新社会人はもちろん、これからの社会で若者に何ができるか、何をすべきなのかを考えるヒントを提供します。

【講演者プロフィール】

1976年埼玉県生まれ。1998年に東京大学法学部を卒業後、ボストン・コンサルティング・グループ、リップルウッド・ジャパン(現RHJイン ターナ ショナル)を経て、ハーバード経営大学院に留学。同校を日本人では4人目となる上位5%の成績で卒業(ベイカー・スカラー)。
2006年にライフネット生命保険の設立に参画。2009年2月より現職。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2010」選出。日経ビジネス「チェンジメーカー・オブザイヤー 2010」受賞。

■ 主な著書
「金融資本主義を超えて―僕のハーバードMBA留学記」(文春文庫、2009年)
「生命保険のカラクリ」 (文藝春秋、2009年)
「132億円集めたビジネスプラン」 (PHP研究所、2010年)
「ネットで生保を売ろう!」 (文藝春秋、2011年)

■日時

2012年5月19日(土) 午後4時~6時半

■場所

琉球新報本社 2階多目的ホール
沖縄県那覇市天久905


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※駐車場はないので、公共交通機関をご利用ください。

■入場料

1,000円

お申し込みはこちらから。

Fill out my online form.


講演会の後には参加者限定の懇親会があります(先着順で30名程度、別料金)。

■主催・お問い合わせ

主催:沖縄アイデアラボ
お問い合わせは @okinawalab またはこちらのお問い合わせフォームから宜しくお願いします。

※ハッシュタグ #iwase0519 で岩瀬さんへの質問を募集中です。

2012年4月3日

お薦めポッドキャストを選んでみた。



ある程度のレベルに達した翻訳者・通訳者は必ず壁(というかプラトー?)にぶち当たり、それを乗り越えてさらなる成長を実現するためには、翻訳・通訳の技術論ばかり勉強していては意味がないと私は思います。この職業は言葉や表現の引き出しが命なのであって、「引き出し力」を鍛えるには多種多様な情報に常日頃から接していなければならないと思うのです。何もしないで自然に言葉が生まれるなんてありえないですから。「そもそも言葉にオリジナリティーなどあるのだろうか」とはフッサールの言葉です。

以前は読書が中心だった私の情報収集活動も、ケータイをiPhoneに替えてからポッドキャストがかなり大きなパイを占めるようになりました。特に移動中の隙間時間を有効に使えるようになったことは大きいです。それに文庫本を読みながら歩いてるとたまに喫茶店のメニューボードとかを勢いよく倒してしまいますからね。はは。

さて、そんなわけで私が聴いているポッドキャストの中からいくつかお薦めします(日本語か英語です)。


Freakonomics Radio

『ヤバい経済学』の著者であるスティーヴン・ダブナーとスティーブン・レヴィットが目から鱗のウラ(ミクロ)経済学トークを繰り広げます。特に印象に残っているのは「飲酒運転するより飲酒歩行(飲んで歩いて帰宅する)の方が危険」とか、中国某所の子供たちの学力が低いのは教育システムに問題があるからだと思ってたら実は単に視力が悪くて黒板を見えなかっただけだったとか(安いメガネを買ったら成績がドーンと上がった)、サッカーのPKの戦略としては、統計的にみるとGKの真正面に蹴るのが一番成功率が高いのになぜみんな蹴らないのか、などなど。あと、高級娼婦と元国家元首が競演するのはこの番組くらい。ホント面白いです。


60 Minutes - Full Audio

言わずと知れたCBSの長寿番組。医療から音楽、フェミニズムから政治犯罪まで幅広い分野で切れ味鋭い調査報道を展開します。私のクライアントはアメリカ人が多いので、アメリカの時事問題を知っておくことはかなり重要です。昨年あるビジネス通訳現場でスタックスネットが話題になったことがあったのですが(現場自体はセキュリティ問題とは関係ない)、幸運にもそれについてのエピソードを直前に聴いていたのでなんとかしのぐことができました。それはさておき、これは本当に完成度が高い番組なんです。まずはお試しあれ。


TED Talks (audio)

TEDは映像がないと意味ないだろ!と容赦ない野次が飛んできそうですが、私はiPhoneで動画を観ることはほとんどないので(そもそもポッドキャストは移動中に聴くのがメインだし)、音声だけでいいのです。でも聴いてビジュアルが気になったプレゼンは後でネットで確認しますよ。知を刺激するプレゼンを15分程度の一口サイズで。召し上がれ。


TBS RADIO 954 kHz │ 柳瀬博一・Terminal

残念ながら3月23日の回で終了してしまったのですが(また戻ってくるのかな?)、アーカイブは今でも宝の山です。各業界で活躍する経営者や文化人、知識人などを招いて、フォーカスされたテーマについて深く議論・説明します。文化系トークラジオライフでは博識ぶりを披露している柳瀬さんですが、この番組では聞き役に徹しています。幅広いリスナーを想定しているらしく、意識して素人っぽく振舞って詳しい解説を聞き出したりするところはさすが。


ラジオ版 学問ノススメ Special Edition

@yukicoy さんに薦められて聴いてみたらホントに面白くてハマってます。各回は60分程度と長いのですが、各業界の本音や裏話がビシバシ飛び交います。個人的に笑えたのは芥川賞作家の西村賢太、ジーンときたのは詩人の和合亮一、意外性を感じたのは内田樹。内田さんは本しか読んだことがなかったので私の中で一定のイメージができあがっていたのだが、実際の声とか話し方とかがイメージと全然かけ離れていてアレ?という感じでした(笑)。もちろん話は興味深いのだけど。


FORA.tv - Audio Program of the Week

一言で表現すれば、TEDは世界中の知を15分という限られた時間制限の中で伝えているのに対して、Fora.tvは時間をガンガン使って深く掘り下げようよ、という感じ。世界中で開催されているイベントやコンフェレンスの動画が無料で視聴できます。ポッドキャストもエピソード一本が1時間半を超えるのが普通なので隙間時間の活用というわけにはいかないのですが、東京から大阪への新幹線とかでどうぞ(私の定番パターン)。「もう宗教なんていらないんじゃない?」をテーマにしたディベートとか肝細胞のトークは個人的にお薦め。ちなみにScienceEconomicsUS Politicsに特化したポッドキャストもあります。


This American Life

@Fucchi_Yにイチオシされたので先週から聴き始めているのだが、初めて聴いたエピソードで泣けた。たまたま悲劇モノだったのかもしれないけど(出生時にナースが赤ちゃんを取り違えて、40年後に本当の親に会ったという話)。ノンフィクションだけかと思ったら、たまにフィクションのエピソードもあるらしい。1時間番組なので決して短くはないのだが、ストーリーの語り方が秀逸なのであっという間に時間が過ぎてしまう。毎週配信。バックナンバーは公式サイトで購入可能。99セントは安い。


NBC Meet the Press (audio)

@yanonanoneのお薦め。というかよく見たら私のポッドキャストにも登録されてたけど、なぜか「更新しない」設定になっていたので1年くらい放置プレイだったという。毎回、政治家を招いてアメリカの政治問題について話すというのが定番コース。似たような番組にWashington Week PodcastABC News This Weekがあります。この辺は番組ホストの好みで選んだらよいのでは。共和党支持者なら黙ってFOX Newsなのでしょうが。


週間日経トレンディ

いまの流行ネタとかガジェット系ニュースはこちらで仕入れてます。女性に話題の商品とかをここで知って、それを実際に女性に話してみると驚かれたりする。なぜだろう?


NPR: NPR: Live Concerts from All Songs Considered Podcast

数日おきに更新されるライブ音楽ポッドキャスト。私の隠れナンバーワンです。メジャーなアーティストはあまり出てこないけど、そもそもライブはパワーがあるのであまり気にならない。たまに作業音楽にもしてます。ワールドミュージックからR&B、モダンロックからアコギソロまで何でもあり。


Entrepreneurial Thought Leaders 

アメリカの財界、特にIT業界のビッグネームのスタンフォード大学講演録。個人的に面白いと思ったのがNVidia社長のトーク。製品が時代を先取りしすぎていてまったく理解されず、母親にも「早く就職しろ」と怒られた過去。超ビッグになった今も母親はよくわかってないらしい。エバーノートのリービン社長も日本では温厚な人として知られているが、ここでのトークは不敬な言葉も連発したり(笑)。アツくてスマートな学生たちを前にすると、講演者も気合いが入るのでしょうね。


挙げていくときりがないので今回はここまで。次回はiTunes Uや有料メルマガのお薦めもまとめようかね。


【おまけ】 歴史好き&通勤時間が長い人にはDan Carlin's Hardcore Historyがいいかも。短いエピソードでも80分程度、長いのは5時間を超えるこの空気が読めないポッドキャストをお楽しみください。