2012年4月3日
お薦めポッドキャストを選んでみた。
ある程度のレベルに達した翻訳者・通訳者は必ず壁(というかプラトー?)にぶち当たり、それを乗り越えてさらなる成長を実現するためには、翻訳・通訳の技術論ばかり勉強していては意味がないと私は思います。この職業は言葉や表現の引き出しが命なのであって、「引き出し力」を鍛えるには多種多様な情報に常日頃から接していなければならないと思うのです。何もしないで自然に言葉が生まれるなんてありえないですから。「そもそも言葉にオリジナリティーなどあるのだろうか」とはフッサールの言葉です。
以前は読書が中心だった私の情報収集活動も、ケータイをiPhoneに替えてからポッドキャストがかなり大きなパイを占めるようになりました。特に移動中の隙間時間を有効に使えるようになったことは大きいです。それに文庫本を読みながら歩いてるとたまに喫茶店のメニューボードとかを勢いよく倒してしまいますからね。はは。
さて、そんなわけで私が聴いているポッドキャストの中からいくつかお薦めします(日本語か英語です)。
Freakonomics Radio
『ヤバい経済学』の著者であるスティーヴン・ダブナーとスティーブン・レヴィットが目から鱗のウラ(ミクロ)経済学トークを繰り広げます。特に印象に残っているのは「飲酒運転するより飲酒歩行(飲んで歩いて帰宅する)の方が危険」とか、中国某所の子供たちの学力が低いのは教育システムに問題があるからだと思ってたら実は単に視力が悪くて黒板を見えなかっただけだったとか(安いメガネを買ったら成績がドーンと上がった)、サッカーのPKの戦略としては、統計的にみるとGKの真正面に蹴るのが一番成功率が高いのになぜみんな蹴らないのか、などなど。あと、高級娼婦と元国家元首が競演するのはこの番組くらい。ホント面白いです。
60 Minutes - Full Audio
言わずと知れたCBSの長寿番組。医療から音楽、フェミニズムから政治犯罪まで幅広い分野で切れ味鋭い調査報道を展開します。私のクライアントはアメリカ人が多いので、アメリカの時事問題を知っておくことはかなり重要です。昨年あるビジネス通訳現場でスタックスネットが話題になったことがあったのですが(現場自体はセキュリティ問題とは関係ない)、幸運にもそれについてのエピソードを直前に聴いていたのでなんとかしのぐことができました。それはさておき、これは本当に完成度が高い番組なんです。まずはお試しあれ。
TED Talks (audio)
TEDは映像がないと意味ないだろ!と容赦ない野次が飛んできそうですが、私はiPhoneで動画を観ることはほとんどないので(そもそもポッドキャストは移動中に聴くのがメインだし)、音声だけでいいのです。でも聴いてビジュアルが気になったプレゼンは後でネットで確認しますよ。知を刺激するプレゼンを15分程度の一口サイズで。召し上がれ。
TBS RADIO 954 kHz │ 柳瀬博一・Terminal
残念ながら3月23日の回で終了してしまったのですが(また戻ってくるのかな?)、アーカイブは今でも宝の山です。各業界で活躍する経営者や文化人、知識人などを招いて、フォーカスされたテーマについて深く議論・説明します。文化系トークラジオライフでは博識ぶりを披露している柳瀬さんですが、この番組では聞き役に徹しています。幅広いリスナーを想定しているらしく、意識して素人っぽく振舞って詳しい解説を聞き出したりするところはさすが。
ラジオ版 学問ノススメ Special Edition
@yukicoy さんに薦められて聴いてみたらホントに面白くてハマってます。各回は60分程度と長いのですが、各業界の本音や裏話がビシバシ飛び交います。個人的に笑えたのは芥川賞作家の西村賢太、ジーンときたのは詩人の和合亮一、意外性を感じたのは内田樹。内田さんは本しか読んだことがなかったので私の中で一定のイメージができあがっていたのだが、実際の声とか話し方とかがイメージと全然かけ離れていてアレ?という感じでした(笑)。もちろん話は興味深いのだけど。
FORA.tv - Audio Program of the Week
一言で表現すれば、TEDは世界中の知を15分という限られた時間制限の中で伝えているのに対して、Fora.tvは時間をガンガン使って深く掘り下げようよ、という感じ。世界中で開催されているイベントやコンフェレンスの動画が無料で視聴できます。ポッドキャストもエピソード一本が1時間半を超えるのが普通なので隙間時間の活用というわけにはいかないのですが、東京から大阪への新幹線とかでどうぞ(私の定番パターン)。「もう宗教なんていらないんじゃない?」をテーマにしたディベートとか肝細胞のトークは個人的にお薦め。ちなみにScience、Economics、US Politicsに特化したポッドキャストもあります。
This American Life
@Fucchi_Yにイチオシされたので先週から聴き始めているのだが、初めて聴いたエピソードで泣けた。たまたま悲劇モノだったのかもしれないけど(出生時にナースが赤ちゃんを取り違えて、40年後に本当の親に会ったという話)。ノンフィクションだけかと思ったら、たまにフィクションのエピソードもあるらしい。1時間番組なので決して短くはないのだが、ストーリーの語り方が秀逸なのであっという間に時間が過ぎてしまう。毎週配信。バックナンバーは公式サイトで購入可能。99セントは安い。
NBC Meet the Press (audio)
@yanonanoneのお薦め。というかよく見たら私のポッドキャストにも登録されてたけど、なぜか「更新しない」設定になっていたので1年くらい放置プレイだったという。毎回、政治家を招いてアメリカの政治問題について話すというのが定番コース。似たような番組にWashington Week PodcastやABC News This Weekがあります。この辺は番組ホストの好みで選んだらよいのでは。共和党支持者なら黙ってFOX Newsなのでしょうが。
週間日経トレンディ
いまの流行ネタとかガジェット系ニュースはこちらで仕入れてます。女性に話題の商品とかをここで知って、それを実際に女性に話してみると驚かれたりする。なぜだろう?
NPR: NPR: Live Concerts from All Songs Considered Podcast
数日おきに更新されるライブ音楽ポッドキャスト。私の隠れナンバーワンです。メジャーなアーティストはあまり出てこないけど、そもそもライブはパワーがあるのであまり気にならない。たまに作業音楽にもしてます。ワールドミュージックからR&B、モダンロックからアコギソロまで何でもあり。
Entrepreneurial Thought Leaders
アメリカの財界、特にIT業界のビッグネームのスタンフォード大学講演録。個人的に面白いと思ったのがNVidia社長のトーク。製品が時代を先取りしすぎていてまったく理解されず、母親にも「早く就職しろ」と怒られた過去。超ビッグになった今も母親はよくわかってないらしい。エバーノートのリービン社長も日本では温厚な人として知られているが、ここでのトークは不敬な言葉も連発したり(笑)。アツくてスマートな学生たちを前にすると、講演者も気合いが入るのでしょうね。
挙げていくときりがないので今回はここまで。次回はiTunes Uや有料メルマガのお薦めもまとめようかね。
【おまけ】 歴史好き&通勤時間が長い人にはDan Carlin's Hardcore Historyがいいかも。短いエピソードでも80分程度、長いのは5時間を超えるこの空気が読めないポッドキャストをお楽しみください。
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