明けましておめでとうございます。年末年始にいつものパターンで体調を崩したので、開幕にあわせてしっかり調整?という名のだらだら休養生活を続け、今年は1月7日に無事に法務案件でシーズンINです。今年から若手通訳者向けに、現場ではどんなことを考えているのか、どんな準備をしているのかを中心にもっとブログを頑張って書こうかなと思います。
年明けの1発目の案件、つまり開幕戦はいつも相当緊張します。私の場合、年末年始はだいたい2~3週間は通訳から離れるのですが、開幕戦が迫ると「同時通訳のスピードについていけるかな」と不安になります。不安になるくらいなら1日15分でもいいから同通の練習をすればいいのに、と思う方もいるでしょう。もっともです。でも秋の繁忙期を終えたあとは何も残っていないというか、とにかくゴロゴロして、仕事の連続で4か月我慢していたことを純粋に楽しみたいという気持ちが勝ります。秋は本当に仕事一色ですから。
さて、1月15日からはFIFA(国際サッカー連盟)案件で一週間のオーストラリア出張でした。FIFAは世界各地で各種ワークショップを開催しているのですが、今回はのトピックはtalent development(優秀な選手の発掘と育成)です。FIFAといえばワールドカップ、というのが一般人の感覚だと思いますが、通訳者として関わるFIFAはどちらかかというと10年先のサッカー界を見据えた取り組みの方が多めの印象です。その意味ではタレント発掘はとても重要。できるだけ多くの子供たちにサッカーをする機会をつくり、その中から優秀な選手を発掘し、しっかり育成していく。普通のサッカーファンはあまり意識しないけれど、サッカーが強い国はどこでも組織的に取り組んでいることです。会場には23年の東京イベントにも参加されていたアーセナルのレジェンド選手、フィリップ・センデロスさんも。今回はスペシャリストとしての参加です。後ろには同通ブースが見えますが、今回の通訳言語は日本語、韓国語、スペイン語、アラビア語、タイ語でした。一部リレーもあったのですが、リレーの上流を担当するときはいつも緊張します。いつも通りの通訳すればいいものを、どうしても下流の通訳者を思うと普段より丁寧な文章構造になりがちです。
タレント発掘といっても各国が抱える問題・課題は実に多種多様。南米某国のように国土が広いのできちんと選手を特定・追跡しきれない国もあれば、組織内政治の影響で現場がなかなか動けない国もある。単純に予算が限られているので活動の幅が広がらない国も。それでも各国が成功例・失敗例を共有して、みんなで強くなろう、より良いサッカー界にしていこうという意思が伝わります。サッカー通訳というと、試合後のヒーローインタビューや記者会見の通訳を想像される方が多いと思いますが、チーム付きではないフリーランス通訳者の仕事はどちらかというと今回のようなワークショップや経営層向けのイベントが多いです。なのでサッカーの戦術的な理解よりサッカー界が直面する諸問題や全体的な傾向を知る方が大事です。たとえば近年は「女子サッカーをどう盛り上げるか」がサッカー界全体の注目トピックの一つなので、事前に知識を得ることがとても重要です。
では通訳者は事前にどんな準備をするのでしょうか。私の場合は普段からFIFA Training Centreのメーリングリストを読んでいますし、The AthleticのSports Business欄も必読です。私は有料会員なのですが、わざわさ有料会員になっているのは世界のスポーツビジネス(サッカーだけではなく、北米五大スポーツも)の大きな流れが読めるからです。ちなみにThe Athleticはサッカー界の歴史や諸問題を動画で学べるTifo Footballというチャンネルも運営しています。たとえばこの動画なんか面白い。
私は日本語の通訳者ですから、Jリーグや日本サッカー界の傾向も知っておく必要があります。私のおすすめはJリーグ公式チャンネル内のののチャンネルとフットボール委員会アフタートーク。特に委員会アフタートークの育成関係の動画(JFA技術委員長の影山雅永さんがゲスト)はオーストラリア出張の直前に視聴して勉強させていただきました。現地の日本人参加者が「カゲさんは……」などと発言する場面が多かったのですが、動画のおかげで影山さんのことだと事前に把握できていたことも大きいです。ここで「kagesan??」など聞き返したら会話の流れが途切れてしまいますしね。
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