2010年11月22日

広州アジア大会11 なでしこ、悲願の金メダル

アジア大会で女子サッカーが採用されたのは1990年大会が初めてで、今回が6大会目。これまで女子サッカー日本代表はアジア杯を含め、過去のアジア覇者を争う大会では、準優勝が7度と、最後の最後で苦杯をなめてきました。あともう一歩。何かが足りなかった。宮間主将は、試合前に「今まで、金メダルを取れなかった先輩たちのために戦おう」とチームを発奮させていたと記者会見で語っていました。

ホテルで待機しているのも退屈なので三位決定戦(中国―韓国)のキックオフから会場入りしていたのですが、中国には準決勝の日本戦で見せた覇気が無く、気の緩みと一瞬のスキから開始2分でゴールを許し、その後も韓国にがっちりボールを支配されて完敗しました。6~7割入っていたスタジアムも決勝戦直前には5割程度に減っていて、私が座るメディア席のすぐ隣には北朝鮮の応援団、そのすぐ隣には数では劣るものの、日本の応援団が陣取っていました。試合内容によっては乱闘とかあるのかな、と考えてみたり。

その試合ですが、予選とほぼ同じで、北朝鮮の激しいプレスとスピーディーな展開に日本は防戦一方。日本は攻撃のリズムをなかなか作れず、ボランチの澤や坂口がボールを奪っても前線に展開しきれない。北朝鮮SBのセンタリングがそのままゴールになりそうだったり、MFのミドルシュートがクロスバーを叩いたり、日本を応援する側としてはあまり心臓に良くない流れが続きました。ただシュートを打たれても、サイド突破を許しても、全員守備で最後の最後は泥臭く跳ね返す、そんな日本代表がとても印象的でした。

我慢の時間が続いた日本
後半28分、コーナーキックにDF岩清水がヘッドで合わせて待望の先制ゴール。北朝鮮を応援していた中国人ファンのチャントが一瞬でため息に変わりました。北朝鮮は3人の交替枠を使い切って最後の猛攻撃を仕掛けてきましたが、日本はしっかり連携してチャンスの芽を摘み取り、逆に北朝鮮DFラインに生まれた穴を突く場面も。そして試合終了のホイッスル。予選からずっとなでしこ担当通訳者(?)だった私としては、個人的にも特別な日になりました。



試合後の記者会見は、おそらく今大会でもっとも安定している中国語通訳者であるJiang Qianさんとペアを組む。男の子を育てながら仕事をしているママさん通訳者です。会見前に北朝鮮と韓国の正しい呼称を確認する。これを間違えると実行委員会が結構うるさいのです。


北朝鮮
×North Korea
○DPRK (DPRK athletes)

韓国
×South Korea
○Korea (Koreans)

北朝鮮の監督は専属の通訳者を伴って姿を現したのですが、正直、プロとは呼べないレベルでした。おそらく韓国人に通訳してもらう屈辱を味わうくらいなら自国の通訳者を使いたい、ということなのでしょうが、なにしろ英語が英語になっていないし、外国人記者の “Does dear leader Kim Jong-il love women’s football? If so, did he watch this final on TV?” という通訳的には初歩の初歩の質問にも「もう一度質問をゆっくり繰り返してもらえますか?」とお願いしていたくらいですから。記者は空気を読んで誰もツッコミを入れませんが、みんなそう思っていたはずです。

北朝鮮応援団は警備付きで会場外へ

最後に佐々木監督。これまで多くの監督・選手の通訳をしてきましたが、通訳者全員の片付けが終わるのをわざわざ待って握手を求め、お礼をして帰るなんて、佐々木監督くらいです。ロンドン五輪に呼ばれたらまた通訳したいです!

何はともあれ、なぜしこジャパン、金メダルおめでとうございます。感動しました!

表彰式でメダル待ち!