2024年12月31日

2024年のまとめ

◆2024年のまとめ

今年は今まで以上に仕事が充実した1年でした。改めて振り返ってみると、23年から法務とゲーム関連の指名案件がかなり増え、それにともないエージェント経由の案件は劇的に減りました(ドル円の為替状況を鑑み、私がドル案件を優先していることも大きいですが)。案件数が減って効率よく稼げてはいるのですが、やはり国内エージェントと仕事をしないと業界情報が入ってきませんし、まだ知らない通訳者との出会いもなかなか無いので、来年も適度に受けていきたいと思ってはいます。

来シーズンは国内で幕開けですが、2週目からはオーストラリア、そして月末はスイスです。3月・4月も海外出張があるのですが、年を重ねるごとに体調を崩しがちというか、喉も意識的にケアしないとすぐにおかしくなってしまいます。老いるってこういうことか……と改めて時間しています。でも遠隔通訳の普及で激減するかなと思っていた出張がなぜか増えているので、これがいつまで続くかわからないけれど楽しめるうちに楽しんでおこうかなと思います。仕事はしっかり、遊びもしっかり、がモットーなので。

2024年はJACIにとって10周年イヤーでした。2015年4月に団体を立ち上げたときは、強く反対する人はいなかったのですが、積極的に応援してくれる人も少なかったので、課題山積なスタートだったのを覚えています。スタートアップ企業のように先行投資をしなければ活動資金が調達できないし(1年目は100万円ちょいを自腹で負担し、あとで協会から返金してもらいました)、小さい組織はとにかく企画を打ち続けないとすぐに忘れられてしまう。思えばこの10年は業界内での信頼とポジションを確立するために休まず走り続けたような気がします。

そんなJACIも2025年は11年目に入ります。今では頼りになる理事や仲間が増え、少しずつ成熟した組織に成りつつあります。私も数年前と比べて現場からは少し離れて、プロデュース寄りの活動にシフトしています。2025年も楽しみにしていてください。

 

シーズン中はがっつり遊ぶ時間がなかなか確保できないので、近年は消化したいコンテンツをリスト化して、年末年始に粛々と(笑)こなしていくのが通常パターンです。今年はは『虎に翼』、『Yellowstone』、『Succession』を完走できれば満足かなと。あと、JRPG好きとしてはドラクエ3 HD-2Dもなんとかクリアしたい……

まだShogunを視聴できていないのですが、次の夏までには!みなさん、良いお年を!

2024年12月27日

Fortniteの特別イベントでお仕事。

 
実は23年からFortnite案件にも関わるようになっています。最初はFortniteのゲーム自体ではなく、開発元のEpic Gamesが抱える大型訴訟関連から入り、縁がありゲーム自体のイベント通訳も任せてもらえるようになりました。11月末に都内で会場を貸し切って開催された新シーズンお披露目&試遊デモのイベントを、いつものゲーム通訳者メンバーで対応。このようなイベントを日本で開催したのは初めてだったそうです。

フォートナイト バトルロイヤル チャプター6 シーズン1: 鬼ノ島

ゲーム業界に限る話ではないですが、重要な新情報を初めて出すイベントでは、通訳者に提供される情報が限定される場合が多いです。なので通訳者は与えられたわずかな情報から周辺情報の調査を行い、YouTubeなどで識者の予想を確認してヤマをはり、隙あらば担当者にお願いして情報を出し続けてもらう、に尽きるといっても過言ではないです。あと、ゲーム業界のイベントで同通ブースが設置されるのは稀なので、生耳パナの場合は通訳者の立ち位置をしっかり事前確認することを勧めます。スピーカーが近すぎると厄介なので。

案件が決まる前に面接でFortniteのプレイ歴を聞かれたのですが、「数年前に試しましたが一瞬でボコボコにされたので、それ以来は戻ってません。主にYouTube実況の観る専です」と正直に答えたら、どうやら会議参加者の大半も同じらしく(そりゃ若者には勝てないよね……)、軽い笑いがとれ、たぶんそれで仕事が決まった感があります。たぶん。

ちなみに昔、ニコ生でよく観ていた松嶋初音さんがMCでした。とってもきさくな方でした。自分が喋るパートでないときも、TVのワイプのごとく強くうなずいたり、リアクションをとっていて、プロの仕事を見た気がします。私だったらサボってボーっとしてそう。

2024年11月23日

Marvels of Saudi Orchestra in Tokyo

9月の案件で結果を残し、すぐにこの案件を頂きました。サウジアラビアはいま、国を挙げて文化振興に取り組んでおり、このMarvels of Saudi Orchestraツアーもパリやニューヨークを含む世界各地で開催され、東京は5か所目。その文化的にも政治的にも重要なイベントの通訳を弊所が担当することになりました。

音楽的表現は通訳者が工夫する余地があるものの、楽器の名前などは事前に知っていないとどう足掻いても誤魔化せません。加えて、楽曲の背景知識やストーリーを把握しておかないと、訳が生き生きとしません。ここも通訳者の力の見せ所です。

私は本番を担当したのですが、運が良かったのは事前記者会見を通訳仲間の平井美樹さんにお願いできたことでした(写真右、左端)。彼女が基本的な用語・表現とメインメッセージを案件後にまとめてくれたので、盲点だった日・サウジアラビア外交関係樹立70周年(2025)についても知れました。初見でも現場で対応できたでしょうが、やはり事前に知っておきたいものです。訳の精度もかなり向上しますし。

本件を受けたときは中東特有の言葉や表現に困らされるのかなあと若干不安でしたが、フタを空けたら特別ゲストの布袋寅泰さんの英訳が一番難しかった!といっても彼が悪いのではなく、彼の詩的な日本語表現を同じく詩的な英語表現にするのが難しかった、という意味です。「自分の音楽がこうして海を越えてサウジの風をまとい、こうやって日本に戻ったころを誇りに思う」というようなシンプルな文章でも、「まとう」ってどう訳そうかな、とメモをとりながら考えるものです。最終的にどんな訳にしたのか正確には覚えていませんが、たしか "I'm extremely proud of the fact that my music traveled across the ocean to be embraced by the winds of Sauid Arabia, and now it's back home in Japan." みたいな味付けだったと思います。

全体的にはもっと上手くできたかなと思いますが、布袋さんの事務所関係者から「とても素敵な通訳だったとうちの布袋が言ってました」と直接伝えられて、それがとても嬉しかったです。世界のHOTEIに認められちゃったよ!こういうのは地味に嬉しい。

2024年11月12日

バイオ医薬品のイノベーションと資金調達。

 
在日米国大使館の依頼で Navigating Biopharma Innovation Across the Pacific イベントの同通を担当しました。米国大使館はデポジションで訪れることが大半なのですが、少しは名前が知られてきたのか、最近は大使館が関与する個別イベントにも呼ばれることが増えています。

資金調達などファイナンス寄りの話は慣れているのですが(といっても、ファイナンスには様々な種類があるので油断はできない)、ガチなバイオ技術の話になったら置いてきぼりにされそうなので、恥をかかないために時間を多めにとって準備。こういう時、いつも「若い時、ちゃんと生物と化学をサボらずに勉強しておけばよかった……」と思います。何事も基本ができていないと、後にとても苦労します。実際、私は苦労することが多いです。

どうでもいいですが、赤坂インターシティAIRの同通ブースは一級品ですね。こんなブースで毎日仕事がしたいものです。

2024年10月28日

お薦めポッドキャスト 2024 冬

 

前回ポッドキャストについて書いたのが2017年(!)と知って我ながらちょっと驚きです。ここ7~8年でポッドキャスト業界はかなり変わりました。コンテンツはさらに多様化し、ディープな番組が増え、特に英語圏ではカネになるビジネスモデルとして一大勢力になっています。日本でも数年遅れで盛り上がりがきているようですね。

私は昔と変わらず通勤時・移動時はポッドキャストを聴いています。最近好きなのは以下の5つ。

The Prof G Podcast

ユーモアたっぷりに米国&世界経済を知的に語るスコット・ギャロウェイ教授のポッド。スポンサーがつく前は番組の冒頭に毎回エグイ下ネタをぶっこむことで有名でした(勉強になりました 笑)。経済学教授のギャロウェイは、過去には自分の事業を起業⇒EXITした経験もあり、今もアクティブな投資家であることから、その分析はキレッキレです。アシスタントのエドくんも若いのに頼りになることよ……

Against the Rules

著名作家マイケル・ルイスのポッド。私はS4のサム・バンクマン=フリード(SBF)のシリーズから入りました。FTX破綻当時、通訳市場は仮想通貨/暗号資産の案件であふれており、私もその一部を担当していたことから他人事とは思えなかったのです。あと、SBFの風変りなキャラと、「効果的利他主義」についてもっと知りたかったというのもあります。というかさすがマイケル・ルイス、他のシーズンも充実した内容ですよ。

Revisionist History

マルコム・グラッドウェルの活躍については、日本では彼の著書を通じて知った人が多いかもですが、実はマルコム、ポッドキャストという形態でもかなりのストーリーテラーです。個人的なお薦めは McDonald’s Broke My Heart と The King of Tears でしょうか。マルコムらしい視点と展開は毎回絶妙。

How Crime Works

各種犯罪の仕組みを完全解説。犯罪に限らず、私のような仕組み好きはブクマ必須です。

All-in Podcast

4人の著名VC投資家が政治からビジネスまでいろいろ雑談する番組。コロナ渦の20年3月に立ち上がり、今では単独で大規模ライブイベントをするまでの人気に。芸能通訳者の今井美穂子さんもファンらしい。

ちなみに、JACIが立ち上げた村松増美アーカイブも一緒にどうぞ!

2024年10月5日

国連案件で土木を学ぶ。

 

21年から国連三角パートナーシップ・プログラムの遠隔部分、作業工程管理過程の通訳をしています(写真は公式から拝借)。初年度は防衛省に近い市ヶ谷の会議室で開催されましたが、翌年からはより充実した国連大学の会場に移りました。アジアやアフリカの軍関係者に対して、建設作業の組みかたや工程管理を教えるプログラムです。基本的には毎年同じ内容なので2年目からは比較的楽になりましたが、初年度はとにかく苦労の連続でした。日常的に通訳しているような内容ではないし、多くの参加者はアクセント持ちです。けれど「あなたの英語はアクが強すぎて全然理解できません」と言うわけにはいかないので、なんとか相手の体裁を保ちながら、前後の文脈で推測して処理していく、という部分も少なからずありました。全員が全員、きれいな英語を喋るわけではないので、これはしかたがないことです。

この案件ではたびたび通訳の域を超えて、自主的に参加者に直接語り掛けることがあります。相手の理解を確認したり、成果物の提出を再三促したり、「あなたが聞きたいのは〇×ですか?」と質問の意図を具体的に確認したり。時間が限られているので、単に訳すだけではなく、進行アシスタントのような形で前に出て進めていく方がスムーズにいくなと判断してそのようにしています。話されたことだけ訳す、と考える通訳者もいますが、私は常に臨機応変に対応するように心がけています。クライアントの大半は「通訳者」を求めているのではなく、「案件の完遂」を求めているのですから。

2024年9月28日

東京ゲームショウ2024

 
スケジュールが合わず対応できなかった年を除けば、東京ゲームショウにはほぼ毎年なんらかの形で関わっています。といっても私はメイン会場での通訳より、別会場/ホテルでのデモ会やメディアインタビューのパターンが多いのですが。文句ではありません……実際行ったことがある人はわかると思いますが、メイン会場は周りがうるさすぎてとても集中できる環境ではありません。クライアントもわかっているので、ゲームの魅力をしっかり伝えるために静かな環境を自身でセッティングします。今年の対応タイトルは以下の通り。

Path of Exile 2

Dune: Awakening

Exoborne

さすがに1人では無理なので、ゲーマー通訳者を2人追加手配。やはりゲーム案件はゲーム好きが強い。男性3人という珍しい組み合わせですが、頼りになるブラザーたちです。

2024年9月6日

アラビアンナイト 文化の旅~大陸と世紀を超えて~

9月の目玉の一つは、UAE代表団に1週間付いた案件でした。特に後半に開催された「アラビアンナイト 文化の旅~大陸と世紀を超えて~」イベントについてはこちらに共催者の報告記事がアップされています。

実はこの案件を受ける前はアラビアンナイトについてほぼ知らない状態でしたので(せいぜいアラジン)、西尾哲夫先生の入門書などを読んでかなり勉強しました。その西尾先生も講演されたので、学術的にもかなりレベルが高いイベントです。本当は断っても良い案件だったのかもしれませんが、認定会員である小川カミーユさんの紹介であったのと(仲間の紹介は断りにくいというか、なんとか助けてあげたい気持ちが強い)、中東案件が各分野で増加傾向にあるので、ちょっと絡んでおきたいという気持ちもありました。何事も経験してみないとわからないことは多いです。

週前半の表敬訪問はほとんどが文字通り表敬であり、文化的に深い内容ではなかったのですが、慶応大学でのイベントはそうはいきません。今回の同通パートナーは友人のベテラン通訳者、中村いづみさんにお願いしたのですが、最初は資料を読んでその難しさに二人で「うげぇー」となっていたのを覚えています。

それでも最終的には協力してなんとか仕上げるのがベテランの技、といったら聞こえはいいですが、正直、二人とも必死です。中村さんも「難しすぎて、繁忙期なのに久々に一日中勉強した」と漏らしたほど。右の写真では結構余裕に見えますが、どうやらそうでもなかったようです。

今回は1週間の案件でしたが、直受けの影響が大きくでるのが長めの案件です。エージェントを通すとどうしてもコミュニケーションの質が落ち、回答を得るための時間も長くなるので、その意味では本件のコミュニケーションは最初から最後まで担当通訳者の私が握ることで上手くコントロールできました。とても満足していただき、最終日には11月の案件もいただきました!通訳は大事だけど、クライアントの期待値やコミュニケーションを上手くコントロールするのも結構大事、と私は若手通訳者にいつも言っていますが、これを言語化するのは簡単ではないんですよね。

2024年8月22日

『通訳翻訳ジャーナル』2024 秋号

『通訳翻訳ジャーナル』2024 秋号に寄稿しました。イカロス出版の某編集者に弱みを握られているので、お願いされたら書くしかありません。ジャーナルにはもう何年も書いてなかったと思いますが、今回は「通訳と翻訳 ダブルで活躍」という特集のメインを飾らさせていただきました。新日本プロレスでいったら石井智宏的なポジションだと思います。いや、そう信じたい。

本来であれば、通訳するんなら翻訳ならやって当たり前じゃん、筋トレみたいなもんなんだから、の一言で済むと個人的には考えているのです。でもそれだと文字数が全然足りないので、あの手この手で話を膨らませて……というわけではないのですが、やっぱりシンプルな答えとしては「ガタガタ言わずに翻訳しろや」です。通訳者の多くは自分の表現について時間をかけて反省したり、別の表現の選択肢について熟考することがあまりないと思うので(特に今は市況がとても良いので、勉強するくらいなので仕事を入れる人が多い)、練られた文章を訳すことはとても良い練習になると思いますし、むしろ通訳者としての寿命を延ばすには必要ともいえるのではないと私は思います。

一方、翻訳者が通訳を始めるハードルは、その逆より相当高めでだと理解しつつも、二刀流を実現するには何を意識すべきかを率直に書いたつもりです。興味がある方はぜひ手に取っていただければ。

2024年8月6日

スポットコンサル案件、復活。

 
スポットコンサル(通常は1時間単位で、各業界の専門家と話ができる)サービスには20年くらい前から通訳者としてお世話になっていて、それこそZoomがまだなかった時代は文字通り電話、それも固定電話で通訳をしていました。ただ、当時私が契約していたサービスは円払いで、正直レートが通訳者にとってあまり魅力的ではなかったので、おそらく2013年あたりからまったくやらなくなったと記憶しています。なのですが、最近復活しました。

理由は、別の会社に好条件で依頼されたからです。支払いは米ドルで、それも1時間だけで場合によっては国内エージェントの終日料金を超えるので、これはもうやるしかないな、と。昨今の為替トレンドを鑑みて、ドル案件を増やしているのは私だけではないはずです。

スポットコンサル案件では豊富な資料はまず期待できないので(だからレート的には好条件でもやらない人はいます)、対象トピックについて自分で考えて調査する能力が必要です。専門家の名前が事前にわかれば、その人物の講演動画を探すことができるかもしれません。なんにしても、典型的IR案件のような予定調和で終わることはまずなく、かなりディープな話をすることがほとんどなので、高い逐次通訳と現場対応力が求められるのは確かです。

2024年7月19日

Little Nightmaresはじわじわくる作品。

 
時間は有限なので、私は担当するゲームをすべてプレイするわけではありません。状況によってはネット上の情報を基本としながら、YouTube動画やTwitchでゲーム実況をひたすら視聴して、「疑似的に」プレイする手法をとっています。そのような意味では結構プラクティカルな私ですが、関わった作品の中でもLittle Nightmaresシリーズはモバイルを含めて全作品プレイしていますし、3も出たら買います。なんかこう、世界観がじわじわ伝わってくるというか、惹かれてしまうんですよね。

メディアが変わると世界観が壊れてしまう事例は過去に結構目にしてきたので、通訳していた会議でポッドキャストの話が初めてでたとき、ファンとして「これは大丈夫なのかな…‥」と心配しましたが、完成したものを聴いて、そのリアルさと完成度に言葉が出ませんでした。クオリティめっちゃ高い。物語系ポッド好きにはお薦めです。

2024年7月1日

JACIに新しいグループが2つ誕生。

 6月1日付けで一般社団法人 日本会議通訳者協会(JACI)に新しいグループが2つ誕生しました。法務通訳部スポーツ/エンタメ通訳部です。

協会の規模が大きくなり、会員が求める活動多様化する中で、分野を絞って活動してみるのが効率性と効果が考えた上でベストなのでは、と検討した上での決定です。

まずは8月の日本通訳フォーラム2024で①法務、②スポーツ、③エンタメの3本柱に特化したセッションを用意するので、楽しみにしていてください!

2024年6月29日

Wild Hearts

 
Wild Heartsは私が初めて担当したコーエーテクモさんの作品で、リリース直前のPR会議から携わりました。最初から「狩りゲーの新しい王道を作る」を大きなメッセージとして伝えたいということでしたので、各メディアのインタビューでも"We've set out to create a new standard of hunting games" や "This is the game all other hunting games will be measured by" と表現することで、何度も伝えました。モンスターハンターという横綱がいる中で誰もが「大きくでたな」と感じたはずですが、ゲーム自体はとても完成度が高いと私も遊んで感じました。

最終的にゲームの主要タグラインとなった"Tame a World Gone Wild”が会議で初めて出てきたとき、まだ日本語訳が決まっていない状態で、私は「荒ぶる自然を手なずけよ」と訳出したのですが(そしてその後の会議でも数回、それで通していたのですが)、最終的には「生きろ、立ち向かえ」になっていました。確かにこっちの方がいいな。自分の訳が採用されるか、されないかも、通訳の楽しみの一つです。

2024年6月14日

Immortals of Aveum (& Dead Space)

 
Immortals of AveumのPRイベントに関わらせてもらったのは23年の初夏でした。マルチプレイはもうスキル的に絶望的な私としては、「これは期待できそうなソロFPSだ!」と思っていたのですが、すぐに9月からの繁忙期に突入し、このゲームどころかどのゲームも遊べない日々が続きました。そして24年、やっと時間ができたので買って遊ぶかと検索したところ、本作を制作したスタジオは作品の売上が期待を大きく裏切ったため23年秋に社員の半数を解雇、24年4月には残りのスタッフも一時帰休に、という衝撃のニュースが。つまり1年ももたずにスタジオ崩壊です。

リリース時から技術的問題があったようですが、近年のトレンドとして、メタクリスコアなどの評価が最初からかなり高くないと手に取ってさえもらえない、つまりEAのようなメジャーレーベルから発売されても、Dead Spaceのような実績があるプロデューサーの作品でも、レーティングが高くないと発売から負け戦が確定です。これに加えて、本作のリリースはタイミング的に最悪といって過言ではないというか、この年のGOTYに選ばれたBaldur's Gate 3をはじめ、Armorned Core IVやStarfieldのような話題作・ヒット作と勝負せねばならず、埋もれてしまった感もあります。実際、ゲーム自体はそんなに悪くないのに、タイミング的に運が悪かったよね、というのがRedditの一般的な評価です。

実は私、過去にはDead Spaceの案件を通訳したこともあったので、個人的にはこれはとても残念なニュースです。今や大規模予算のゲーム開発は博打化しつつある気配なのですが、今後各社がどのように方向転換をしてくるのか注目です。

2024年6月3日

テーマパーク関係の通訳

 
以前に某大手建設会社で一緒に仕事をした幹部が別会社に転職し、そこにうちの事務所を紹介してくれたという、業界ではあるあるですがとても助かるパターンです。いま取り組んでいるプロジェクトは最初の最初、つまりコンサル選定やコンセプトデザインのフェーズから入って仕事をしているので、「一つのテーマパークがどのように現実となっていくのか」をリアルタイムで確認・学習しながらの仕事になっています。これまでは一人のユーザーとしてしか体験したことがなかったので、「ビジターにこう感じてもらいたい」を定義し、それに沿ったナレティブやグランドデザインを検討し、細かな動線も徹底的に評価する、という当たり前のことを全然考えていませんでした。

国内の某統合型リゾート案件に関わったときも思いましたが、いまやっているこの仕事が現実になるのは8年後?10年後?つまりかなり先の話です。メインで担当している通訳者さんたちとは、「開業したら死ぬほど遊んでパーティーしよう」と話していますが、そのころにはまだ通訳やってるかな。というかパーティーする元気、まだあるのかな。

ちなみにこの仕事でする上で、世界中の最新テーマパークの試みを知ることができたのですが、人気のパークに共通しているのは唯一無二の世界観。やはり、という感じ。有形インフラじゃないんだね。

2024年5月28日

EASL: 東アジアスーパーリーグ

East Asia Super Leagueとの関係は2022年の冬が始まりでした。日本のBリーグについては競技そのものよりリーグのビジネスモデルの方に興味があった私は、本件の打診があったとき、「アジアのバスケ・チャンピオンズリーグか。面白そう」と二つ返事で受けた記憶があります。付き合いのあるクライアントがリーグに出資していて、その紹介というのもありました。

私が担当したのは主にEASL幹部とBリーグとのあいだの交渉です。Bリーグの次のシーズンのスケジュールは決定済みでしたので、EASLとの交渉は難しい部分がありましたが、アジアにおけるバスケの未来のために、両当事者は粘り強く交渉し、かなり頑張ったと思います。学生の頃からバスケファンの私にとってもやりがいのある仕事でした。

2023年~24年の王者は千葉ジェッツ。おめでとうございます。今後もアジアのバスケレベルの底上げ、さらなる普及、そしてビジネスとしてのバスケの発展を期待しています。NBAの仕事も増やしたいのですが、NBA Japan Games 2022以来、声がかからないというか、NBA絡みの案件があまりない気が。

2024年5月20日

エルデンリングDLC:SHADOW OF THE ERDTREE

ファンを待たせて待たせて、待たせすぎたエルデンリング:SHADOW OF THE ERDTREEがついにリリースされました。本編のDLCです。フロム信者の私も当然購入しました。

バンダイナムコさんには昔から仕事でお世話になっていて、本編の開発中から会議で耳にするたびに心が躍ったものです。ただ開発中は当然、非公開の情報ばかりですので、最初に「Erdtree」を耳にしたときは「黄金樹」とは知らないので訳すことはできず、役員に対する重要なデモなのに適切な用語が出てこない、という残念な経験をしたものです。状況的にしかたないのですが。

以前にゲーム翻訳者の武藤陽生さんと「ゲームって楽しみながら用語とか表現を学べる素晴らしいツールだよね」という話したことがあります。私の場合はCoDで軍事用語を学び、魔法や呪術関係はエルデンリング(とダークソウルのシリーズ)から学んだ部分が大きいです。あと、エルデンリングの英語表現は、フレイバーテキストなども本当に勉強になります。というか、翻訳者のインタビューがありましたね。

2024年5月15日

Biomass Innovations Asia Conference

 
今年もBiomass Innovations Asia 2024を担当しました。内容も嫌いではないですが、この案件は通訳とは別の楽しみというか、私好みのホテルランチが美味しいから受けている部分も大きいです(笑)。稼いだおカネで食べればいい話ではあるのですが、どうせならちゃんと仕事をして、収入も得て、それで食事もできれば最高というか。それに近年、エネルギーは分野として存在感がかなり増しているので、そこで結果を残しておきたいという気持ちもあります。

ちなみにSAF(サフ)については何年も前にこの会議を通して初めて学びました。SAFはSustainable Aviation Fuel(持続可能な航空燃料)の略で、化石燃料以外の原料から作られる航空燃料です。廃食油や微細藻類、木くず、サトウキビ、古紙などが主な原料として使用されます。昔だったら廃棄するにもおカネがかかって苦労した廃食油も今は価値がある時代になっています。個人的にはSAFに大きな期待をしているので、最新の状況を知るためにもこのような仕事を担当するのには意味があります。

2024年4月30日

ブレイキン世界大会「FUJIFILM INSTAX Undisputed Masters」東京大会

 

ブレイキン世界大会「FUJIFILM INSTAX Undisputed Masters」東京大会に通訳としてお邪魔してきました。面白い案件でない限り週末はあまり動かない私ですが、世界のフィル・ウィザードが来日するということであれば行かない理由はないでしょう。行きます!行きました!

スポーツであれば守備範囲が広い方の私ですが、ブレイキンは強いわけではありません。準備としては、まず①出場選手、②各選手の得意技、③有力選手(特にパリ五輪が確定している、または有力視されている選手)の過去1年の大会実績を基本として調べます。それに加えて目を慣らすためにYouTube動画をかなり視聴しました。Red Bull BC Oneは擦り切れるほど(昭和の表現)観たはず。加えて優勝候補の過去の対談動画やインタビュー動画は必ず確認するようにしています。たとえば以下はフィル・ウィザード。動画を確認することで初めて知る情報がありますし、ネットには「〇×〇×」と書いてあるけど、選手のあいだでは「〇〇×」と呼ばれているなど、業界人の言葉を使い方を学べます。話し方のクセにも慣れることができますしね。


ちなみに私の今後の注目選手はB-Girl Nicka (Dominika Banevič)です。派手なパフォーマンスではないものの、技術的にしっかりしていて、一つの作品としての完成度がとても高い。まだ16歳なのに!というか、彼女の試合後のインタビューを2本担当したのですが、16歳とは思えない大人らしい受け答えでした。

2024年4月23日

直前依頼でシンガポール:Entrepreneurs' Organization

 

もともと遠隔で対応するはずだった案件が諸事情で現地対応に変更され、週末にシンガポール入り。会場がMBS(マリーナベイサンズ)の会議棟だったので、「久々にMBSに泊まれる!」と思っていたら、写真のようにかなり離れたホテルでした(笑)。それでもグレードは良いので不満はまったくありませんが。案件はEntrepreneurs' Organization(起業家機構)の国際会議です。

会議ではGreen Terpプラットフォームを使用したので、日本からノートPCを含む遠隔通訳キットを持参。コロナ渦において多数の遠隔通訳プラットフォーム(というか、遠隔会議プラットフォーム)が誕生したが、その多くが23年から24年にかけて姿を消した印象です。その中で、シンガポール発のGreen Terpはまだ奮闘していますが、おおむね大勢が決したいま、メジャー以外のプラットフォームは今後どうなるのか注目です。

本件にはJACI認定会員のフリィ・マクウィリアムスさん、エバレット千尋さん、賀来華子さんも参加しました。賀来さんに至っては、JACIの広島ワークショップを教えたあとに深夜便でシンガポール入りというハードスケジュール。頭が上がりません。

それにしても現場案件はやっぱりいいですね。通訳仲間との食事が楽しい!

2024年4月17日

香港での商事仲裁

実は香港生まれの私ですが、大人になってからは仕事以外で香港を訪れることはなくなり、今では年に1回~2回ほど。今年も商事仲裁案件で3日ほど訪れました。昼はしっかり仕事、夜は父親&姉の家族と夕食を共にする、または付き合いのある現地通訳者と食事するのがいつものパターンです。

仲裁案件ではどんな準備をしたらよいのか、と聞かれることがありますが、知っておくべき事実や用語は準備書面にすべてあるので、それを読み込めば大事故にはなりません。シンプルすぎる答えかもしれませんが、これが正解です。ときには書面が山のように届けられて頭が痛くなりますが……

わからないときは「わからない」と正直に言って、わかる努力をしないさい、わからないまま訳出しても誰も得しません、と通訳学校で教わる人もいますが、少なくとも何百億がかかっているhigh stakesの法務案件ではこれは当てはまりません。通訳者はわかっていることを前提として雇われているので、わかっていなければならないのです。通訳者の知識や能力が不足している場合、そこを相手側の弁護士に厳しく追及されることもあります。実際、通訳者の能力を理由に相当な証拠の価値が毀損されたような事件もあります。

法務を専門とする通訳者の数は、仕事柄かなり高度な通訳技術とメンタルタフネスが必要とされるため、なかなか増えませんが、私個人としてもその部分をどうにかしたいと考えています。

2024年3月31日

ダニエル・ジル教授の来日イベント

 

JACIが2018年に創設した特別功労賞の第1回受賞者であるダニエル・ジル教授が仕事と私用を兼ねて日本に長期滞在する、と耳にしたのが23年秋頃。すぐに連絡して調整を重ね、滞在中の一週末を頂いて直接講義をしていただきました。ジル教授とえば通訳の努力モデルですが、講義は最新の通訳理論も含んでおり、実に濃密な週末になりました。懇親会には鶴田知佳子先生やジル教授の旧友も飛び入りし、こちらもとても有意義だったと思います。

JACIにとってこのような試みは初めてだったので、自由な議論ができるようにと録画はしなかったのですが、内容が盛りだくさんで消化しきれない部分もあったかもしれない、という反省から、この講義の内容を動画化できないかといまジル教授と協議中です。実現すれば、おそらく1モデュール10分~15分というようなサクッと学べる形になるはずです。期待せずにお楽しみに!笑

2024年3月26日

ID@Xbox

 

ID@Xbox(Independent Developers @ Xbox)は、マイクロソフトが提供するインディーゲーム配信プログラムです。マイクロソフトは認定ゲーム開発者が、Xbox 本体やWindows、クラウドでゲームを自己公開できるよう、ツールやサポートを提供しています。インディーゲーム開発者が対象なので大きなPR予算がついているわけではないかもしれませんが、それでもイベントなどを通して盛り上げていこうという意気込みは伝わります。実はID@Xboxイベントの同通は今年が初めてです。担当ゲームは以下の通り。

Fallen Tear: The Ascension

InKonbini: One Store, Many Stories

Brocula

一緒に組んだ同通パートナーはブロキュラ推しなのですが、私はインコンビニですかねえ。

通常この種のイベントは読み原稿が準備されているのがほとんどですので大きな心配はないのですが、万が一それが用意されていなかった場合どうするか。YouTube動画やネット上のコンテンツを調べればゲームの特徴がある程度わかると思うので、そこの絞って通訳するのが無難かと思います。それ以外は訳さない、という意味ではなく、欲張ってすべてをぶっつけで訳そうとすると、だいたい焦点がブレブレの訳になることが多いのと、聞き手もそんなに覚えられないので、しっかり特徴(ゲームの「売り」)を記憶してもらった方が良い、という意味です。

2024年3月4日

【3/2-3/3】JACI 札幌逐次ワークショップ

 

1月から始まったJACIの国内逐次ワークショップですが、3月は札幌開催です。札幌でやるなら冬の方が雰囲気あるよね、という私のテキトーな考えで3月上旬に決まったこのイベントですが、前日になって「吹雪で飛行機が飛ばないかも?!」という危機的状況に。本来であれば講師2名(私と結城直美さん)は飛行機で現地入りするはずが、リスクヘッジのために結城さんは空のルート、私は新幹線と電車を乗り継ぐ陸路で札幌を目指すことになりました。

深夜に新函館北斗駅に着き、近くの東横インにチェックイン。フロントの人に「最寄りのコンビニは車で15分です」と言われた気が今でもするのですが、聞き間違いかもしれません。陸路で北海道自体が初めてなので、土地勘がなさすぎです。翌朝は早い時間から移動を開始して、なんとか時間までに札幌の会場に到着することができました。

地方でイベントを開催するときは、今回のようなワークショップもそうですが、地元の業界情報を得るように努めています。どのような仕事が多いのか、通訳者に仕事を通した成長の機会はあるのか、業界団体に求めていることは何か……対話をするなかで学ぶことも多いです。外部の人間には見えにくい関係性なども少しずつ見えてくるので、コミュニケーションはとても大事です。

過去の経験も踏まえた個人的な意見ですが、地方には大きく成長できるポテンシャルをもった通訳者が相当数います。しかし、いくらあってもポテンシャルはポテンシャルでしかなく、結局は現場経験を積まないと開花するものも開花しません。札幌も同様で、「この人、構想は良いから、あとはガツガツ仕事すれば化けるだろうなあ……」と思う受講生もいました。

聞けば、そもそも北海道の通訳市場は小さいので、通訳ガイドを兼業としている人が少なくないそうです。けれどガイド案件を多めに入れていると通訳案件が来たときに柔軟に対応できず、自然とフェードアウトしていくのだとか(または現状維持)。市場規模ゆえの課題ですが、遠隔通訳がかなり普及したいま、地方の有能な通訳者の仕事をどう増やしていくかをJACIとしても考えていかなければ、と感じています。

ちなみに右の写真は懇親会後、かなり人が減ったあとに「あれ、写真撮るの忘れてたね」と誰かが言ったあとのワンショット。本当は2月の雪まつりの週にあわせて楽しみたかったのだけど、その週だけ飛行機代とホテル代が倍くらいになってたので秒で諦めたのはここだけの秘密。

2024年2月25日

ロンドン金属取引所

 

ロンドン金属取引所(London Metal Exchange)から直接依頼を受けて、日本でのPRイベントで同時通訳をしてきました。20年前であれば絶対に受けなかったような案件ですが(受けても通訳仲間に外注していた可能性大)、個人であっても長く投資をしているとどうしても鉱物の需給や価格、動向一般に敏感になってくるもので、そこで蓄積した知識がモノをいうというか、「今の自分であればたぶんいける」と考えて臨みました。結果は大成功。美味しいディナーも頂きました。

私はここ数年、毎年春から夏にかけて某エネルギー国際会議を毎年担当しているのですが、その会議の内容とつながる部分が多々あります。金属が専門分野とは口が裂けてもいえませんが、通訳者が対応分野を広げていきたいのであれば、このように隣接領域から攻めていくのが一番ではないかと思います。

2024年2月11日

スポーツマネジメント通訳協会、発足。

 

2023年に発足した一般社団法人スポーツマネジメント通訳協会の篠田和徳事務局長と年末から何度か会って話す機会があり、意気投合というか、角度は異なれど目指すゴールは一致していると確認ができたので、2月23日にはイベントの共催も決まりました。

「スポーツ現場での通訳を語ろう」(遠隔イベント)

JACIも夏をメドにスポーツ通訳部を立ち上げる予定なので、いろいろ交流を深めながらスポーツ通訳者の育成や仕事の獲得につなげていきたいと考えています。

ちなみにサイトを閲覧するとわかりますが、主に野球通訳を扱ったコラムには役立つ情報が豊富です。

2024年2月5日

インドの商事仲裁案件

 

主に米国法務を主戦場にしている私ですが、他国法の仲裁案件を依頼されることもあります。依頼主は法律事務所が多いのですが、本件のようにインド法を専門としている通訳者はあまりいないでしょうから、「関根さんならたぶんできるでしょ」と考えて依頼しているのかもしれません。実際、通訳者の実務という意味では、法律家が使う専門用語は共通していますから、そこを押さえておけばトラブルになることはありません。

今回の案件も、コロナ渦を経てすっかり定着した遠隔商事仲裁でした。事前提供された資料をしっかり読み込み、適度な緊張感をもちながらスタートに向けて心を整えていたところ、回線が突然ぷっつり切断。固定回線なのに、なんで?と思いながらすぐに弁護士に電話すると、「うちも確認中なんですが、なんだか終わったみたいです」とのこと。現地(インド)にいる担当弁護士がいろいろ動いてくれていたらしい。私が通訳する証人の必要性自体がなくなったので、インド側の運営がなにも言わずに切断したとあとでわかりました。こういうこともありますねー。

2024年1月29日

洋上風力発電

社名は出せませんが、2018年あたりから洋上風力発電に関する案件に携わっています。政府は国策として洋上風力発電を猛プッシュしていて、民間企業は各社その波に乗ろうと頑張っているわけですが、なにぶんこの事業は国内企業だけでやるには無理があり(知識、経験、キャパなどすべてが不足)、外資のサポートが必須です。そこで通訳者にも出番が生じるわけです。

最初はお互いの責任分担を明確化するために契約関係の会議をするのですが、私個人の出番はここまでで、本格的な技術の議論には技術に強い通訳者を手配しています。プロジェクト規模を考えると、まだまだ続きそうですね。

ちなみに長く仕事をしていると、縁の力を強く感じます。洋上風力発電にはまったく関心がなかった私がこの仕事をするようになったのは、前に一緒に仕事をしたことがある幹部社員が転職して、転職先のプロジェクトに私を推薦してくれたからでした。良い仕事を毎日積み上げていくって大事ですね。

2024年1月17日

ゲーム関係のFGI

 


BtoC の世界では FGI (Focus Group Interview) という個人消費者の意見や印象を調査する方法があって、私自身も昔から主に家電やビデオゲームを中心に通訳をしています。15年~20年くらい前は2時間ソロ同通を、休憩を挟みつつも1日3本、というようなハードな労働環境もあったと記憶しています。今は多くの会社がソロ同通は1時間までを基本とする調査会社が増えてきているので、そこまでひどい条件は見かけなくなったと思いますが。

ゲーム関係のFGIで大事なことはいろいろありますが、まずは①対象ゲーム、②対象ゲームが属するジャンルの競合、そして③最近ヒットしているゲームを順番に調べて把握しておくべきでしょう。③はSteamの売上チャートがわかりやすいです(リンク先のチャートは日本市場のものですが、FGIが米国で実施されるのあれば米国のチャート見るべき)。いまヒットしているゲームの傾向がわかります。ジャンル別のランクも表示できるので、②の特定にも便利ですね。

通常のFGIではインタビューガイドが作成され、通訳者にも共有されます。ガイドには対象者に聞く質問のリストはもちろん、どこに集中して何を聞き出したいか、どの部分にどれほどの時間を使うか、ということが詳細に記されています。基本的にはこれを読み込んでおけば大事故はまずないですが、これに上記の①②③を加えると準備度が格段と上がります。というのは、ガイドは質問する側が考えることしか記載されていませんが、インタビュー対象者は通訳者が聞いたこともないニッチなゲーム名や最新のモバイルゲームの話をしたりするので、念のために①②③を押さえておきたいのですね。

これに加えて、YouTubeでゲーム実況者の動画を観ておくと、実際にそのゲームをしている人たちの用語がわかります。それを通訳中に使うとかなりの「こいつ、わかってる」感がでるのでおすすめです。

ちなみに一時期、集英社IPのゲームに関するFGI通訳の依頼が続いたことがあり、そのときはワンピース(当時の最新刊まで)、NARUTO、Bleachの全巻をメルカリで購入して、数か月かけて読み込んだことがありました。ワンピース、最初は食わず嫌いで舐めていたのですが、やはり大人気になるだけのことはありますね。アラバスタあたりから食いつくように読みました!

2024年1月6日

2024年はリアル回帰。対面ワークショップ祭りです。

一般社団法人 日本会議通訳者協会は2024年、株式会社KYTをスポンサーに迎えて、日本各地で逐次通訳ワークショップを開催します。各ワークショップの詳細は下記リンクから。

【国内ツアー】逐次通訳ワークショップ

JACIはコロナ禍を除いて、設立初年度からなんらかの対面ワークショップを毎年開催してきました。初回は某理事の「箱根で温泉に入ろう!ついでにワークショップも付ける感じで」という8割方ノリで開催されたのですが(でも内容は大真面目でした)、以降JACIの名物飲み会、もとい企画として多くの参加者に学びとつながりの機会を提供してきました。今回も某理事の「子供の頃からドームツアーがしたかった!なのでドームがある都市でワークショップツアーをしよう!」というバカ丸出しの発想からスタートしています。でもいつの間にか「どうせこの規模でやるんだったら日本の全地方をまわろう」「ベテラン講師を送りこんで圧倒的なクオリティを実現しよう」「それも手頃なお値段で」と、どんどん話が大きくなり、ついには半ば騙されてスポンサーになった?株式会社KYTさんの協力も得ることになりました。

JACIにとってこの規模のツアーを実施するのは初の試みですが、コロナ禍で開催された日本通訳翻訳フォーラムのように、誰もやらないことにチャレンジするのがJACIのDNAだと私は勝手に思ってます。

普段はあまり通訳イベントが組まれない仙台や広島、高松もツアー会場に含まれていますので、興味がある方はぜひこの機会に参加していただければ。そして講師の方々も、仕事が終わったらたっぷり飲んで遊んでください!

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ここまで話したワークショップは対面イベントですが、遠隔イベントもたっぷり用意しています。まずは……

LinkedInビジネス活用セミナー(1月27日開催)

日本翻訳者協会(JAT)さんとのコラボ企画。JAT会長の狩野ハイディさんとの雑談から生まれました。「翻訳(通訳)技術だけを磨いても今の時代はダメだよね」という共通認識がお互いあるので、構想から実現まで比較的スムーズに進みました。LinkedInを活用しきれていない翻訳者・通訳者はとても多いと思うので(私も含めて!!!)、この機会にぜひ。特に海外のクライアントはLinkedInで通訳者を探すところも多いので、いろいろ学べるはずです。

「Web3業界」に入るなら今がチャンス!通訳者のためのWeb3セミナー【基礎知識編】(2月16日開催)

仮想通貨やメタバースがという言葉が社会に普及してからずいぶん経ちますが、通訳者は本当に仮想通貨を支える技術やメタバースの本質がわかっているのでしょうか?Web3って何?NFTはアメリカのメジャースポーツリーグではないですし、OpenSeaは広い海ではありません。わかってるようで実際は全然わかってない最新のテクノロジーを基礎から一緒に学びましょう!全3回のシリーズです。

スポーツ現場での通訳を語ろう(2月23日開催)

年末にスポーツマネジメント通訳協会の担当者と意気投合して決まったイベントです。おまけに無料。私も司会として参加します。もっとスポーツ分野の通訳を盛り上げたい!

これらに加えて、夏のフォーラムはもちろん、秋以降のイベントも複数検討中です。2024年も走り続けるJACIを宜しくお願い致します。

2024年1月5日

Konscious Foods


数年前からお付き合いを始めたのが Konscious Foods さん。もう展示会のアテンド的な仕事はしないようにしているのですが(単純に、もう若くないので長時間の立ちっぱなしは辛つらいい)、私が学生時代を過ごしたカナダの会社ということで、私自分が担当したのが始まりです。冷凍寿司や冷凍おにぎりなどを販売しているのですが、料理や食品関係があまり得意ではない私にとっては通常よりも長めの準備期間が必要でした。

最初は私が付いた購買担当者が「これにコンニャクは入っているか」と聞くのでなんでかなと思ったのですが、コンニャクは一度冷凍すると美味しくなくなるのですね。料理をしている人にとっては当たり前の知識かもしれませんが、私には大きな発見でした。というか、しっかり準備していなければkonjacをcognacと間違えて明後日の方向に向かっていた可能性も十分にあったでしょう。

今ではここから周辺機器クライアントにも事業が広がっています。そういえば、食品関係の展示会に地味に試食の質と量が良いですよね(笑)。