2011年5月21日

通訳業界が悲鳴 国際会議中止相次ぎ、活躍の場なく

東日本大震災は多くの人々の生活を奪い、産業に打撃を与えていますが、通訳業界も例外ではありません。震災後は東京を中心に国際会議が軒並み中止・延期となり、今も回復の兆しは見えていません。今回は地震と津波だけで終わらず、放射能問題にまで発展しており、海外の報道などを見る限り、この問題は福島に限定ではなくて日本全土の問題になっているという印象を受けます。

通訳業界が悲鳴 国際会議中止相次ぎ、活躍の場なく
産経ニュース(2011.5.2)

 東日本大震災の影響で国際会議の中止・延期が相次ぎ、活躍の場をなくした通訳業界が悲鳴を上げている。「仕事が9割減」(業界大手)という4月の状況からは回復したが、余震が減っても原発事故の影響で外国人が来日をひかえる状況に変わりはない。節電で大規模会議の開催を避ける傾向もあり、苦しい状況が続きそうだ。

 観光庁は、震災後キャンセルとなった国際会議の数を「数十件」としており、大きいものでは4千人の参加が見込まれた「世界疼痛(とうつう)学会」(来年開催)の会場が、横浜市から他国に変更された。こうした動きは、国際会議の通訳業務を担う業界を直撃。大手の担当者は「震災後2週間で200件近くがキャンセル。4月は仕事の9割が中止か延期に追い込まれた」と明かし、別の社の担当者も「5月は例年の7~8割で、長期化すれば倒産する社も出る」と危機感を強める。

 年間1万件近い通訳サービスを提供する「サイマル・インターナショナル」の藤井ゆき子ジェネラルマネジャーは「直近の仕事はあきらめたという通訳もいるが、チャンスを提供できるよう(仕事の)掘り起こしを進めている」と話す。

 「通訳で生計が成り立たなくなり、就職活動を始めた人もいる」と窮状を語るのは、国際会議の企画運営を行う「コングレ」の武内紀子専務。「日本政府は来日の安全性をもっと発信していくべきだ」と訴える。

 観光庁は国際会議の日本離れが表面化した3月末、安全性をアピールする長官名レターを主催者に送付するなど不安払拭に動いた。民間でも、コングレ設立のシンクタンク「MICE総研」が今月10日、放射線量の正確な数字を案内する英語サイトを開くなど、風評被害の防止に努めている。

 しかし、APECなどの首脳会議で同時通訳を担った「日本コンベンションサービス」の阿部学通訳部長は、外国人の放射能への恐怖が根強いことを指摘。「節電志向もあり、今の原発の状態では回復時期を見通せない」と話している。(三宅陽子)

私の通訳仲間も「今年は耐えるしかないね」との意見が大半です。放射能のような見えない脅威を払拭するには、政府の安全宣言とアピールも大事なのでしょうが、やはり一に時間、二に時間、という気がします。

日本が「安全」というブランドを失った今後、短期的には多くの国際会議が中国や韓国に流れていくのは避けられないかもしれません。通訳者としても、今後は戦略の修正を求められてくると思います。

0 件のコメント: