多くの翻訳者同様、私も駆け出しの頃はエージェントに登録して仕事を頂いていました。ただあるポイントを境に大半のエージェントとは手を切り、今は基本的にエンドユーザとの直接取引しかしていません。自分のレートとスケジュールを思うように管理できるようにするというのが一つの理由ですが、それ以上に大きな理由は「顧客との距離を縮める」ということでした。端的な話、エージェントを介して仕事をしていた頃は、翻訳について質問するにも時間と手間がかかってイライラする事が少なくありませんでしたし、そもそも顧客の「顔」や「背景」が見えないので表現に自信が持ちきれない部分もありました。表面的なデータ(原文)を文句一つ言わずに訳すロボットと化しているような気がしたのです。
顧客と直接やりとりするようになってからはこれが劇的に変わりました。例えば写真のカップル。2008年11月に初めて依頼を頂いてからもう1年半のお付き合いになります。依頼者は女性の方なのですが、 国際結婚をされて海外へ移住されました。移住の際に必要になった行政文書等一式の翻訳をして、その後も色々と依頼を頂いているのですが、翻訳についての質問に迅速かつ丁寧に答えていただくだけではなく、移住後の近況などもメールで伝えて頂いたりして、個人的には本当に楽しくお仕事をさせてもらっています(今回も写真の利用を快諾して頂きました)。一人の翻訳者として、社会と繋がっている、誰かの人生において重要な役割を果たすことができたと実感できるのは本当に嬉しいことです。
最近観たアップルのスティーブ・ジョブスのインタビュー動画で、彼は "We try to make the best product" というフレーズを頻繁に口にしていました。顧客の求める物を妥協せずに追及する姿勢は私も見習わなければと思います。
そして私も自分なりのやり方で顧客の事を知り、距離を縮め、顧客にとってベストの翻訳を提供し続けたいと思うのです。
それにしても綺麗ですよね・・・幸せそうですし(笑)。