2014年5月27日

翻訳料を払わないと、どうなるか。

あ、いや、私が直接被害に遭ったわけではないです、念のため。最近、フェイスブックで料金滞納に関するトピックが話題になっているのです。

ある翻訳者が、100万円近くの大金を数年滞納されていると。最初は友人だと思って許していたけど、ここまでくるとさすがに悪質なのでフェイスブックで友人関係を断ち、ビジネスライクに回収しますと連絡したら、月5万の分割を提案してきたとか。

たとえ遅れても支払いの意思があるのは良いことだ、という生ぬるい話ではない。100万円近くを滞納されることは、多くのフリーランス翻訳者にとっては死活問題です。この翻訳者はたまたま数年待てる経済的余裕があったらから今まで大問題にならなかったものの、大多数の翻訳者は数か月遅れるだけでピンチになるのが現実です。人を雇うということは、たとえその人が正社員ではなくフリーランスだとしても、その人の生活に責任を持つという意味でもあるので、ぜひT氏にはそのあたりをじっくり考えていただきたい。

そもそも翻訳ビジネスは在庫を抱えないので、料金滞納事例が発生することがまずおかしいのです。支払うべきお金を支払わない(支払えない)のは、適切なリスク管理をしなかった結果、そもそもあまり信用できない会社から回収できなくなったか、経営者がギャンブルで資金を全部溶かしたか、基本的にはこの2択しかないと私は考えます。後者は問題外ですが、前者も言い訳にはなりません。というのは、人を雇う規模でビジネスをするのであれば、回収不能リスクを適切に評価した上で経営するべきだからです。具体的に言えば、もしものときに備えてキャッシュを蓄えておくとか。300万円の仕事を受けるのであれば、少なくとも100万~150万円程度のキャッシュを持っておくべきです(うちのような弱小事務所でも常に1000万円はもっているので、できないわけがない)。それがなくて翻訳料が支払えないというのであれば、単に経営者失格です。

その他、翻訳料を支払わないで音信不通になるという実に香ばしい案件が発生しているようです。最近の話。

で、今の時代、翻訳料を支払わないとどうなるか。端的な話、噂はすぐにSNSで拡散します。ブラック翻訳会社と認定されたら翻訳者も雇いにくくなるでしょう(ゼンショー和民が良い例)。そして、ブラックであったという「記憶」は風化するかもしれないけれど、ネット上の「記録」は半永久的に残ります。経営者はこの破壊力を再考するべきじゃないでしょうか。

いや、すごい破壊力だと思いますよ、本当に。

2014年5月26日

CAIS無料講座のお知らせ

基本的に有料講座が多いCAIS(通訳技能向上センター) ですが、今回は無料講座を開催するとのことです。オンライン講座も。以下、メールでの案内をコピペ。


【1】 無料特別企画 その1「座談会~エージェントの立場から通訳現場を語る~」(東京)

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【日時】 6月11日(水) 19:00-20:00

【会場】 サイマル・アカデミー東銀座校(東京メトロ築地駅3分)

CAISの法人メンバーである、通訳エージェントの株式会社サイマル・インターナショナル、派遣会社の株式会社サイマル・ビジネスコミュニケーションズより担当者を招き座談会を行います。通訳市場における業界、ジャンル別の最近の動向、通訳者に求められるスキル、今後の予測など、ベテランの担当者たちが現場について本音で語ります。

⇒⇒⇒詳細・お申込は以下のURLをクリック!
http://www.cais.or.jp/training/14/0611_zadankai.html

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【2】 オンライン無料特別企画 その2「挑戦!数字トレーニング」

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皆さんは、数字をスムーズに訳すことができますか?
通訳をする上では、何千億、何兆といった桁の多い数字も、即座に英語(日本語)に変換できる瞬発力が必要です。

本企画では、日本語(英語)で読まれる数字の音声を聞き、英語(日本語)に訳すトレーニングをオンライン上で受けられます。日常生活でも使用する桁の少ない数字から、ビジネスでよく出る桁の大きい数字まで取り揃えました。このトレーニングで数字への反射神経を身につけ、苦手意識を克服しましょう!

⇒⇒⇒詳細・お申込は以下のURLをクリック!
http://www.cais.or.jp/special/numbers/index.html

2014年5月12日

学習を習慣化することの重要性

某翻訳・通訳学校に潜り込んでいる友人が、「(生徒は)みんな宿題やってこないし、誰か次、訳してみたい人いる?って投げられても、誰も挙手しない」とボヤいていたので、すでに先生業はセミリタイヤしてる私から一言。というかその前に、「やるべきことを毎日しっかりやる」、つまり習慣化に重要性について、世界トップクラスのボディビルダーであるカイ・グリーンが話すのを聞いてくださいな。



要は「グダグダ言ってないで、上手くなりたいたら毎日やれ!」ってことですよ。

2014年5月10日

映画やドラマを使った英語ブラッシュアップ

高松さんのインタビュー記事を読んで、あ、僕と同じ勉強法を推奨してる!と思ったので紹介。

会議通訳者・高松珠子氏インタビュー(前編)

会議通訳者・高松珠子氏インタビュー(後編)
私のお勧めの勉強法は、英語のテレビ番組を見ることです。映画よりもテレビドラマのシリーズがお勧めです。私は責任ある立場の方に会うたびにお願いしてい るのですが、法律を変えてでも、英語の番組を放送する際には英語のテロップを流すことを義務付けてもらいたいと考えています。今、私の家はケーブルテレビ に入っているのですが、バイリンガルの放送はやっていてもテロップは日本語だけなんですね。英語を聞きながら、日本語を読んでも何の意味もありません。言葉と音が一致することによって勉強になるんです。
僕はiPadに映画やテレビドラマをダウンロードして、主に移動中に観ているのですが、英語字幕をオンにして観る場合が多いです。当然なしでも理解はできるし、十分に楽しめるのですが、上手い言い回しなどが出てきた時には覚えておきたい。高松さんが言うように、「言葉と音を一致」させて記憶に定着しやすくしているのですね。特に法務や医療をテーマにしている番組は多いので、これを専門分野にしたい方は楽しみながら勉強ができると思います。

Huluは日本語・英語と両言語の字幕に対応しているようなので、こちらも使えそうですね。

2014年5月9日

翻訳者が無断加筆 翻訳の政治利用?

翻訳の政治利用については欧州の通訳研究でたびたび見かけるが、日本でもこんな事件が。


南京虐殺否定を無断加筆 ベストセラーの翻訳者

同書はストークス氏が、第2次大戦はアジア諸国を欧米の植民地支配から解放する戦争だったと主張する内容。「歴史の事実として『南京大虐殺』は、なかった。それは、中華民国政府が捏造したプロパガンダだった」と記述している。
 だがストークス氏は「そうは言えない。(この文章は)私のものでない」と言明。「大虐殺」より「事件」という表現が的確とした上で「非常に恐ろしい事件が起きたかと問われればイエスだ」と述べた。
 藤田氏は「『南京大虐殺』とかぎ括弧付きで表記したのは、30万人が殺害され2万人がレイプされたという、いわゆる『大虐殺』はなかったという趣旨だ」と説明した。
 だが同書中にその説明はなく、ストークス氏は「わけの分からない釈明だ」と批判した。

さらに興味深いのが最後の部分。

関係者によると、インタビューの録音テープを文書化したスタッフの1人は、南京大虐殺や従軍慰安婦に関するストークス氏の発言が「文脈と異なる形で引用され故意に無視された」として辞職した。

私は藤田を個人的に知らないし、検証可能な問題に関しては適正な検証を待つのがポリシーだが(そしてこの問題は十分に検証可能だと考える)、これはさすがに臭い、というのが第一印象。おそらく原文は"massacre"だっとのだろうが、これだけで大虐殺がなかったと解釈するのは苦しい。前後の文脈を読めば自明である場合が多いのだが…

【追記 5/12】

 「南京大虐殺なかった」翻訳者加筆と報道 出版社は否定:朝日新聞デジタル

共同通信社総務局は9日夜、「翻訳者同席の上で元東京支局長に取材した結果を記事化した。録音もとっている」とのコメントを出した。

出版社は徹底抗戦のようで。

2014年2月23日

異字同訓使い分け手引 42年ぶり見直し

異字同訓使い分け手引 42年ぶり見直し

例えば「とぶ」については、スキージャンプのような空中を移動している状態を言う場合は「飛ぶ」を、フィギュアスケートのジャンプのように地面を蹴って高く上がる場合は「跳ぶ」を使うとしています。
「すすめる」について、物事を前や先に動かす場合は「進める」、読書などの行為を働きかける場合は「勧める」、特定の人や物を推薦する場合は「薦める」を使うとしています。
また、「雪がとける」と言うとき、液状になるという意味で「溶ける」を使うことが多いですが、冬の間中、降り積もっていた雪がとける場合は、固まっていたものが緩むと考えて「解ける」を使うこともできるとしています。
このため「雪どけ」は「雪解け」となります。
個人的には「思う」と「想う」をしっかり使い分ける人が好きです。

2014年2月8日

聞こえない、この苦しみ。

佐村河内氏の事件が世間を賑わせている。

「佐村河内守氏の耳は聴こえていた」新垣隆氏が会見

森下唯オフィシャルサイト » より正しい物語を得た音楽はより幸せである ~佐村河内守(新垣隆)騒動について~

またS氏騒動・長文多謝

新垣隆くんのこと - 笠松泰洋の作曲家日記

実は私は昨年、佐村河内氏のコンサートで交響曲HIROSHIMAを鑑賞していたこともあり、全聾でこれだけの作品を仕上げるとは凄いなあと素直に感動した一人だったので、今回の事件には深い失望を感じている。怒りは正直あまりない。ただただ、失望である。残念である。

個人的な事情もある。つい先日、通訳仲間に引退を打ち明けられた。えっ、まだ若いじゃない、なんで引退するの、と聞くと、「先日、現場でやらかしちゃってね」と言う。なにかとんでもない誤訳をしたわけではないらしい。じゃあなんのさと問い詰めると、「耳が聞こえなくなった」と彼女は寂しそうにこぼした。「ここ一年で急激に聴力が落ちてね。もう仕事にならないの」。

自分のすべてを捧げた仕事が、ある日突然できなくなる。私はそれが一体どういうことなのかすぐには実感できず、ただ彼女の涙をなにもできずに見ていた。そして何の役にもたたない励ましの言葉をかけていた。でも今は少しは理解できる気がする。だから佐村河内氏にはきちんと謝罪してほしいし、罪を償ってほしい。

2014年1月23日

バルボン通訳ふたたび

2014年、一発目からバルボンさんネタをかますのもアレな感じがしますが、面白いからしかたない。面白いは正義、ということで。フリーダムな通訳っていいですね!

40分20秒あたりから。

2013年11月24日

世界一適当な通訳 阪急ブレーブス、バルボンさん

Tumblrで発見したネタ。

阪急バルボンさん通訳 

アナ「放送席、逆転サヨナラ3ランホーマーのブーマー選手です、おめでとうございます」

ブーマー「Chances are, if slow’s not working, they try slower. If the corner’s not working, they slip two more inches away, or an inch closer in. They pitch to the bat, but away from the barrel, a cutter cloaked in red. “Changeups are a little more effective because of that style,” Green said.
“It’s kind of like a slow transition. Not the individuals, but the reasons for it. So, for these pitchers, there’s probably even more of a place for them now than there was before.” 」

バルボン通訳
「いや、ほんまうれしいゆうとりますわ」

2013年11月3日

【TEDxKids@Chiyoda 2013】 今年もボランティアします。



今年もTEDxKids@Chiyodaで通訳ボランティアします。というか明日で(笑)、今からリハーサルです。2年前から他のTEDxで3度もボランティアして、そろそろ新鮮味もなくなってきたので(ボランティア対応が悪くて気分が害されたイベントもあったので)、もうTEDxはいいかなあ・・・と思っていたのですが、TEDxKids@Chiyodaは通訳して本当に楽しい思い出しかないのでもう一度参加します。

TEDxKids@Chiyoda

何がいいかって、まず子供向けというだけあって、小・大道具が面白い。準備段階から学園祭のノリ。前日のリハーサルからボランティア対応が素晴らしい。通訳環境はベストではないけど、予算が限られているので、その辺りについて文句を言う人はいません。むしろ手話通訳のチャンネルを手配していることに心を動かされます。

ちなみに今年は日本翻訳者協会の通訳部隊(笑) が活躍しますよ!声だけ聞いたら誰が誰だか分からないだろうけど!