2012年12月7日

ジャーナリストと通訳者(3)

前回の続きです。ジャーナリストが取材対象とインタビューを始める前に通訳者とすることを書いています。
Before the interview

1. Explain to the interpreter the purpose of the interview. If she knows what you are looking for, then she will be able to help you get it.
2. Review all your questions with your interpreter. Doing this will keep him from being surprised or confused during the interview, according this article by the Institute for Education in International Media. If you’ll be using any technical or obscure words, he can learn them beforehand. Plus, if you plan to ask any sensitive or tough questions, he can help you come up with a strategy for asking them.
両方とも完全同意です。通訳者は一般的になんでも瞬時に訳せるロボット的な存在と見られがちですが、トッププロでも話の筋道が見えないと訳出に苦労します。事前情報がない通訳は、真っ暗なトンネルの中を携帯電話のライトだけを頼りに歩き回ることに似ています。

優れた通訳者は取材対象の文化・文脈に通じているので、ジャーナリストが空気を読みながら厳しい追求をしたいのであれば、事前に相談して戦略を練るのが得策です。取材対象について思わぬ情報・視点を得られるかもしれませんよ。
3. Ask your interpreter whether she thinks any cultural issues might arise during the interview. Don’t just use her language skills; also use her cultural knowledge to see whether any age, gender, class or regional differences could hamper the interview.
通訳者は単に言葉の表面的価値を訳すのではなく、文化や文脈、その場の空気なども考えながら総合的に訳出しています。ジャーナリストには、その豊富な知識をうまく活用してほしいです。

例えば以前、某メディアが沖縄の基地問題を取材する際、準備段階のやりとりで「両方の意見がほしいので、基地賛成派も取材したい」と希望しました。沖縄の政治文化を知っていたら、これがどれだけ難しいかよく分かるはずです。心では基地賛成・基地賛成寄りの政治家がいたとしても、それを声高に主張する、特に海外といえどもマスメディアに対して主張するのは政治家生命を自ら絶つことを意味するからです。

ジャーナリストの年齢や社会的階級は日本ではあまり問題になりません。
4. Plan to record the interview when it’s important enough. Given time constraints in the field, this is not always possible, but for key interviews, you may want to record them and have your interpreter re-translate them to ensure accuracy.
録音・録画は記者の判断ではなく、取材先の許可次第です(少なくとも日本ではそれが一般的)。日本では録音・録画が入る公式記者会見で建前が語られ、時折その後に用意されるざっくばらんとしたオフレコ会見(懇談)で本音に近い発言が期待できます。上手いジャーナリストはこの二つを巧みに使い分けて聞きたい情報を引き出している印象です。

テレビの場合、録画した素材に字幕を付けて流すので、字幕の内容と話者が話している内容が概ね一致するように素材を編集する必要があります(もっとも、近年は新聞もネット配信用にカメラを持参するケースが増えています)。極端に言えば、放送用の素材で政府高官が「尖閣問題についてはできる限りのことをしている」と話しているのに、字幕が"Yes, we're aware of the Chinese fishing vessels in the EEZ. (排他的経済水域内の中国漁船については承知している)"となってはいけないのですね。正しくないし、かっこ悪い。

つい最近も某新聞社と仕事をした際、取材後にホテルのカフェで素材の切り取り・編集を手伝いました。フォトグラファーの話によると、今時のフォトグラファーは動画編集の技術が普通に求められるそうです。時代ですね。

余談ですが、録音禁止のインタビューでも、取材対象側が録音をしている時があります。アーカイブ目的なのか、通訳内容を後で確認しているのかはわかりませんが、事実としてそういうケースはあります。参考までに。

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