2020年7月17日

日本通訳翻訳フォーラム2020、スケジュール確定。

めでたくスケジュール確定です。

日本通訳翻訳フォーラム2020 スケジュール

前回のエントリーで「毎日開催は保証できない」とヘッジしましたが、なんと毎日開催になってしまいました(笑)。毎年新しいことにチャレンジしているフォーラムですが、今年は新理事が加わって推進力が増したので、ちょっと調子に乗りすぎたかな?まあでも、コロナで仕事が減り、あまり良いニュースがない中、僕らができることといえばフォーラムのようなイベントを企画して学びとつながりの場を提供し、翻訳・通訳業界を盛り上げること。新理事の松岡由季さんに頼みこんで動画も制作してもらいました。舞台は設定したので、あとはしっかり最後まで走り切るのみです。

あ、どさくさに紛れて私もパネルセッションに参加します。十人十色の世話人である井口富美子さん(翻訳代表)、『通訳ガイドというおしごと』を著した島崎秀定さん(通訳ガイド代表)、そして私が通訳代表です。お前が通訳代表かいとツッコミが聞こえてきそうですが、通訳技術を語るセッションではないので御安心を。「コロナ時代をどうサバイブするか」にフォーカスした内容です。

英語で進行するセッションには同時通訳が付きます(ボランティア)。前夜祭とハーフタイムには特設スタジオから講談を生配信。合計52セッション、見逃し配信ありで9,800円って、自分で言うのもなんですがかなりお手頃じゃないですか?



『通訳・翻訳ジャーナル 2020年夏号』の「通訳者・翻訳者の本棚」で特集されました。最近なぜかJohn Grisham熱が再燃して、彼の本ばかりが置いてあるのがアレな感じですが、読書に関しては雑種なので、特許実務書から栗原はるみまで何でも読みます。写真の下をよくみると、グレイ解剖学の隣にバムとケロがあるのに注目!

この取材に合わせて、アパート地下の倉庫から川端康成全集(全然読んでない)やウィトゲンシュタイン全集(4割くらいしか読んでない)を引っ張り出して、なんか賢そうな人感を出そうかなと一瞬考えたのですが、持つのが面倒なので断念。なので本当にいつもの本棚が写ってます。



■JACI会員の松下佳世さんがロックダウン中に立ち上げて超絶ペースでチームをリードして仕上げた本、『同時通訳者が「訳せなかった」英語フレーズ』が先月末に発売されました。JACIの公式プロジェクトではないですが、執筆者・関係者の大多数が会員です。

人間は不安定な状況に陥ると動きを止めてしまいがちですが、並外れた行動力・統率力がある松下さんはコロナ騒動が深刻化するとすぐに行動を起こしました。さすがですね。業界にはもっとこういう人が必要だと思います。

■実は3月からEnglish Journal Onlineで「スポーツの英語」連載を担当しています。動画を使ったライトな英語学習コンテンツ、それも私が大好きなスポーツをネタにしています。基本的には米国のメジャースポーツをメインに、他のスポーツをちょこちょこ織り交ぜていく感じで。

ちなみにプレミアムメンバー(有料)になると、English Journal(雑誌版)に連載している「通訳の現場から」のバックナンバーも読めるようです。

■私個人の近況ですが、通訳の仕事は5月末から少しずつ戻ってきています。主に遠隔ですが、リアル現場もぽつぽつと。あとは業界団体の理事という立場上、若手通訳者の相談にのったり、業界誌の取材に対応したり。

今年2月のエントリーでは、「今後数年はオンラインでは教えない」なんて書いてましたが、コロナでいろいろ考えた結果、秋以降にオンライン翻訳・通訳講座をやろうかなと計画しています。ただし金儲けが狙いではなく、選抜した25歳以下の若者(つまり大学生)に対象を絞って基本無償で育ててみようかなと。まあでも、社会人で参加したい人がいればきっちりお金をとって運営資金にしますがね、たぶん(笑)。

やりたいことは山ほどあるけど、体は一つ。うーむ。

2020年6月5日

日本通訳翻訳フォーラム2020

タイトルがすべて。やります。

日本通訳翻訳フォーラム2020

コロナで仕事は減り、業界イベントは全滅。でもやられたままでは正直ムカつくので、遠隔開催で3倍返しします。昨年までは「日本通訳フォーラム」でしたが、今年は翻訳にも射程を広げて(だって他に翻訳イベントないじゃん……)、「日本通訳翻訳フォーラム」として開催。セッション数は私が知る限り業界史上最多(40以上)になる予定。翻訳半分、通訳半分にしようかなと。8月1日から31日まで、海外の舞台演劇祭のように毎日どこかで何らかの講演やワークショップを開催します。いや、毎日は保証しないけど(笑)、まあ8月は山盛りですよ。二郎系のイベントかもしれません。

■私の近況。ここ数か月は私も通訳の仕事が減っているのですが、幸い翻訳が増えていて、執筆の仕事もあるのでなんとかやってます。というかここ1年は断れない仕事が続いて本当に働いたから(働きすぎて秋はちょっとスランプ気味だった)、自分の健康にとってはペースダウンはよかったのかもしれません。

ただ、いろいろと仕込みはしています。昨年やったOne Championshipは次も狙ってますし、アジアのメディア会社と契約して、日本の某メジャープロレス団体の興行を同通することになりました。つい数時間前には契約書にサインしてFIFAの公式通訳者になりました。今年の大会(主にユース大会)はコロナで全滅ですが、今年やるはずだった大会は全部来年開催するらしいので、とても忙しくなりそうです。あとは私が一番好きで得意なNBAですね。オファー待ってます!こんなにスポーツを愛してる通訳者はあまりいないと思いますよ。トぺ・コンヒーロとトぺ・スイシーダの違いも知ってるし!(違うか)

まあ、今後は好きな仕事にシフトしていこうかなと。おカネは大事だけど、それが全てじゃないですよね。

2020年4月12日

「駆け出しのころ」プロジェクト始動。

ウイルス問題で多くのフリーランス通訳者が暇を持て余しているわけですが、日本会議通訳者協会(JACI)では、この時間を使ってなにか一緒に作ろう!というシンプルなコンセプトのもと、「駆け出しのころ」プロジェクトを始動しました。

日本会議通訳者協会「駆け出しのころ」

「私はプロになれるのだろうか」「いまやっていることは本当に役に立つのだろうか」―デビュー前に誰もが抱く不安、期待、焦燥。本連載はプロ通訳者の駆け出しのころを本人の素直な言葉で綴ります。

ある程度の点数が集まったら電子書籍としてまとめて発売する予定です。とりあえず手を動かしていれば不安を忘れられるし、みんなで生産的なことをするっていいじゃないですか!

●同時に残念なお知らせが。今年の同時通訳グランプリはキャンセルになりました。5月末にファイナルを予定していたのですが、さすがに今の状況では間に合いそうもないので。今年の出場資格を満たしている参加者は特例で来年も出場可能です。やはり優れた通訳者にはきちんとした舞台を用意して、みんなでお祝いしてあげたいですね。

●8月29日開催予定の日本通訳フォーラム2020ですが、こちらについては5月末までに方針を決定する予定です。キャンセルになっても、遠隔でやろうかという話はでています。

●2月末にカリフォルニア州モントレーでイベントを開催しました。MIISを訪れるのは6年?7年?ぶりくらいです。飛行機であまり眠れなかったのにもかかわらず、到着してすぐ生徒の一人とブースに入って同通したら、全然できなくて撃沈しました。言葉がでなくてフリーズするなんて何年ぶりかな。やはり通訳には体力と精神力が大事ですね。「かっこいいところ見せつけたるわ!」と思ったら見事に討死した事例です。

まあ色々ありますが、自宅警備しながら色々やってます。 落ち着いたら通訳焼肉会をしたいですね。

2020年3月15日

遠隔イベントやってます。

COVID-19問題で通訳業界は大打撃。2月末からはキャンセルに次ぐキャンセル、新規オファーはほぼゼロ。多くのフリーランス通訳者が将来の見通しが不透明な中、不安を感じています。

日本会議通訳者協会としては、せめてこれを学び・仕込みの時期と捉えて、会員向けに多数の通訳・翻訳イベントを用意しました。会員は無料で参加できます(割引コードは会員限定グループで共有)。一般の方も有料で参加できますが、どう考えても入会した方がお得なので、この機会にぜひ!

日本会議通訳者協会 入会案内

JACI 遠隔セミナー

2020年2月26日

『通訳というおしごと』発売です。

昨年の繁忙期に死にそうな思いをして(自業自得)書き下ろした『通訳というおしごと』が本日発売です。といっても世間はコロナ問題一色なので新刊イベントは当面なし。実に静かな滑り出しです。

ドラフトの段階ではちょっと偏った主張や、トゲのある表現をしていた部分があったのですが、そういうのってやはり心と体が弱っているときに書いているんですよね。闇落ち寸前というか。それでも繁忙期が無事に終わったあとに原稿を再チェックして、かなりの修正を加えて、なんとか発売予定日に間に合わせることができました。

内容については読んでもらうのが一番早いのですが(サクッと読めるテンポで書いたつもりです)、要は僕が若手の頃に誰も教えてくれなかった「仕事としての通訳」にフォーカスしています。通訳学校・教育機関の選び方と使い方、エージェント登録と試験対策、差別化のヒント、レート交渉、仕事ポートフォリオの組み方、などなど。僕自身、通訳者になろうと決めたときにこういう本があったら回り道をしないで済んだのになあと思ったのがそもそもの執筆動機というか。もっと書きたいこともあるけれど、300ページの約束を派手に破って340ページにしてしまったので、編集者にネット土下座しつつ、書けなかったことはどこか別の場所で発表したいと思います。

年末年始返上で苦しみながら取り組んで、もう絶対に描き下ろしなんかやらんと思っていたのに、いざ発売されて自分の手を離れると、もう一回やってもいいかなと思ってしまうのが不思議。典型的な喉元過ぎれば熱さを忘れるじゃん。

皆さん、『通訳というおしごと』を宜しくお願い致します!

2020年2月4日

また放置してたら年が明けた。

ダーッと集中して書いたと思ったら、数か月というか1年近くの放置プレイがお約束になりつつある本ブログですが、明けましておめでとうございます。近況をいくつか。

1.新著がでます。アルク社のはたらくx英語シリーズ最新刊、『通訳というおしごと』です。『同時通訳者のここだけの話』が出版されてから、執筆後記を細々と書いていたのですが、5月19日を最後に更新が途絶えていたのは新刊を執筆していたからです。執筆後記、今月からぼちぼち再開しますよ(1年後だけど)。

この新著、本来であれば夏くらいに仕上げて12月に発売、みたいな流れを想定していたのだけど、私が調子に乗って怠けていたら作業が大幅に遅れました。その結果、担当編集者に静かに怒らたので(一番怖いパターン)、心を入れ替えて、年末年始を返上して頑張りましたよ。書き下ろしって難しいですね~。

本書は若干の技術的要素があるものの技術本ではなく、どちらかといえば通訳を仕事として成立させ、これで生きていくためには何を考えてどう行動すべきかを書いた一冊です。本当はもっと具体的に書きたい部分もあったのだけど、具体的すぎるとニッチな作品になってしまうので、書けなかった部分はイベントで、またはウェブコンテンツとして発表しようかなと。いずれにしても、通訳者を目指す人が必ず手に取ってくれるような本に仕上げたつもりです。

2.今年から禁酒してます。もともとあまり飲まなかったのだけど、年齢を重ねるとともに体がアルコールを分解するスピードがかなり遅くなり、飲んだ翌日の生産性が激落ちしていたのと、個人的には瀧本哲史が亡くなったのが結構大きな影響です。生前の瀧本は思考を常にクリアに維持するためにアルコールを一滴も飲まないとインタビューで語っていました。私も今後はそうしていきたいと思います。そもそも酒を「美味しい」と感じたことは一度もないですしね。

3.いろんな人に「オンラインで教えないんですか?」と聞かれていますが、現時点では優先すべきことがあるので考えていません。というか、教えるのって簡単じゃないのよね。きちんとした授業をしようと思ったら相当な準備をしなきゃならない。でもまあ、2~3年後には本格的にやるかもです。10台~20代に通訳を教えたいという考えは以前からあるので。

4.日本会議通訳者協会の活動も順調です。会員数は250近く、認定会員も30名になりました。昨年の英国に続き、今年(というか今月末)は米国で認定試験を実施します。本当の意味でグローバルな団体になりつつあります。ちなみに今年の日本通訳フォーラムは8月22日(土)に決定しました。オリンピックとパラリンピックのあいだの週末というチャレンジ企画的な日程です!29日に変更&確定しました!

今年も走り続けます。宜しくお願い致します!

関根マイク

2019年5月19日

【執筆後記11】嫌だけど主役になる

このエピソードで紹介している「時間を稼いでほしい」という依頼はそんなにあるわけではありません。でも私のように企業買収や法務などを主にやっていると、どのみち丁寧に訳さなければならないので、必然的にゆっくりとしたペースになることが多いです。その中でも私はどちらかというと「スピード」と「体力」で売っている通訳者なので、できるだけ訳出スピードとテンポを上げていきたい。そしてそのペースをできるだけ長く維持したい(でも1日の終わり頃にはかなり疲れてくるのですがね……)。

ちなみに最近、某スポーツ選手の記者会見動画を観ていたのですが、通訳者さんの訳出がとても遅くてイライラしてしまいました。訳自体は正確なのですが、とにかく遅いし長い。原文1に対して訳文は1.7~1.8くらいはあったでしょうか。通訳業界ではスピードが過小評価されているような印象を私は持っているのですが、これは話者や聞き手との信頼関係を築く上でとても重要だと思います。然るべきペースでメリハリのきいた訳出を心がけたいものですね。

重い一言を訳すときは直前に少しタメをおくことが多いです。落語から学びました。そもそも①自分で訳を少し考える時間が必要ですし、さらに②タメをつくることで聞き手に対して「次のこの部分はとっても重要だからちゃんと聞きなさいよ」と心の準備を促すことができます。なんでもかんでも喋り倒せば良いというものではないのです。

まあでも、タメをつくるとどうしても通訳者に注目が集まってしまう場合が多いのですが…… 特に逐次は。主役になりたくはないけど、訳の効果を重視するとしかたがないですね。


2019年5月12日

【執筆後記10】それだけでは訳せない!

肩書きはまだ許せる範囲としても、やはり登場人物の性別は間違えたくないですね。たとえばウィリアムスさんという人がいて、性別がわからないので I know Williams などと呼びすてにすると、人によっては「なんかこいつ上から目線だな、エラそうだな」という印象をもってしまいます。

通訳者に会議の参加者リストをくれない会社はまだ多いので(悪気はなく、単に通訳という仕事を知らないだけだと思いますが)、私は休憩中に机に置いてある名刺を見ながら別紙に書き写しています。会議に出てくる重要人物の名前を知らないって、結構恥ずかしいことですから。情報がなければしかたない部分はあるのですが、やはり恥はかきたくない!

ちなみにこれを書きながら思い出しましたが、まだ法務分野で経験が浅い頃、ある特許訴訟に関する現場で、"did you speak with an attorney?" という質問に対して、「あなたは弁護士または弁理士と話をしましたか?」と訳していた通訳者さんがいて関心しました。確かにこれを特許訴訟だし、弁理士は patent attorney だから含めないとアカンなあ、と。attorney = 弁護士と決めつけがちですが、例外もあるのです。現場でしか学べないことは山ほどありますよ……


2019年5月8日

【執筆後記9】通訳者の危機管理

この回は実は業界的には結構難しいトピックです。通訳者は建前としては「原文に忠実に、正確に」を前提としてしっかり訳さなければならないのですが、やはりそこは人間、集中力が途切れたり、雑音が入って(会議の参加者が肝心な部分で大きなくしゃみをしたり!)聞き取れない時もあります。でも通訳者が頻繁に「もう一度お願いできますか?」などと聞き返していたらクライアントの信頼を失ってしまうので、そこは網を広げて無難に訳したり、前後の文脈から予測して安全な(誤爆を回避する)訳を出すわけです。通訳者であれば例外なく誰でもやっていることです。もちろん上手い人ほど回数は少ないですが。

経験を積むと、訳出のテンポやスピードは正確性と同じくらい重要だということに気づきます。実際、選ばれ続ける通訳者は本当に重要な部分でしか質問しません。経験から話の流れを止めるべきではないと知っているからです。長年の現場経験から文脈の予測精度が高くなっているというのもありますが。

通訳者の危機管理については『通訳翻訳ジャーナル』で連載したこともありますが、使い方には本当に注意してほしいですね。


2019年5月7日

【執筆後記8】意訳と直訳

10連休中に執筆後記を書き溜めておこう!と思っていたら、あっという間に終わっていました。個人的にはあるあるです。

「意訳と直訳」のエピソードを書きながら考えていたことは2点。1つは、通訳学校で教える先生は本当に大変だなあということ。場合によっては直訳寄り、はたまた意訳寄りと、言語化しにくい直感というか、現場の空気を読むスキルを肌感覚でわかるように教えなければならないのですが、これは本当に難しい。私自身もたまに学校で教えますが、このあたりのさじ加減を説明するのにいつも苦労しています。

もう1つは、私は米原万理的にいえば「不実な美女」寄りの通訳者であり、それが求められている現場は心から楽しめるということです。私の主戦場が法務と知っている方がこれを読んだら驚くかもしれません。法務の現場はガチガチの直訳が求められ、創造性あふれる意訳には価値はないのですから。

法務が嫌いというわけではありません。むしろ好きです。でも、スポーツやエンタメ関係の現場がもっと好きなのです。現場自体が自由でのびのびとしていて、言葉の「感情」を伝えることに重きが置かれることが多いからです。ただ、スポーツやエンタメだけで生活していくのはとても難しい。やりがいは問題ないのですが……