2011年2月10日

無罪判決に検察が控訴断念 通訳の手配ミスが理由の一つ?

1月24日にでた裁判員裁判での全面無罪判決に検察が控訴を断念。日本初とのことです。

検察側、控訴断念へ=全面無罪で初-覚せい剤密輸の裁判員裁判

 覚せい剤4.5キロを密輸したとして覚せい剤取締法違反などの罪に問われ、一審東京地裁の裁判員裁判で無罪とされた中国人男性(33)について、東京地検は1日までに、控訴を見送る方向で検討を始めた。
 裁判員裁判での全面無罪判決はこれまで、千葉地裁の覚せい剤密輸事件や鹿児島地裁の強盗殺人事件など4件あるが、検察側が控訴を断念した例はない。全面無罪が確定すれば裁判員裁判で初めてとなる。

時事どっとコム(2011/02/01-21:53)

判決では、広東語を日常使っている被告は北京語や英語の理解が不十分なのに、家宅捜索から逮捕されるまで立ち会った通訳は北京語と英語が専門だったとして「被告の発言が警察官に正確に伝えられたか疑問」とされています。私は香港に住んでいた時期も長かったのですが、広東語と北京語は全く異なる言語、まあ例えるならフランス語とスペイン語のようなもので、このような初歩的な通訳手配ミスはあってはならない事です。

日本と比べて、アメリカなど、司法通訳が制度としてより高度に発達している国では、「似たような言語だと思うから」を根拠に通訳者が手配することはまずありません。被告人の母語の通訳者を手配することを原則とし、その原則に忠実だからこそ、希少言語の通訳者が手配できないために公正な裁判が担保できないとして、被告人が自由の身になるという事件も起きています(これが良いか悪いかは視点によって判断が分かれる所でもありますが)。

日本ではまだ「母語は○○語だけど、英語がそこそこ喋れるらしいから英語でいこうか」という例が少なくありません。例えばフィリピン国籍の被告人はフィリピン語(タガログ語)ではなく、英語で裁判を受けることが少なくないと聞いています。どちらかというと裁判所の利便性が優先されているシステムである感は否めません。まだ改善の余地は十分にあると思います。

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