2019年3月18日

【執筆後記3】予想外の発言に困る

これはとても思い出に残っているエピソードです。法廷通訳人は最初に登録するとまず自白事件(被告人が罪を認めていて、起訴事実に争いがない案件)を何度も担当して、経験を積むと難易度が高い否認事件を任されるようになります。私はこのエピソードの案件を担当したときは、否認事件を任されるようになってもう3~4年は経っていたでしょうか。ちょっと調子に乗り始めていたときかもしれません。

被告人のこの発言はシミュレーションできていなかったので、本当に困りました。冷や汗ものでしたね。米軍人が被告人の刑事裁判は、被告人にバイリンガルの弁護士が付くのが普通ですし、米軍からもバイリンガル担当者が出廷しています。傍聴席には米軍向け新聞社の記者も(もちろん琉球新報や沖縄タイムスも)。たぶん私がどういう訳を出すだろうと思っていたでしょうね…… 訳出後、法廷内が数秒シーンとしたわけですが、誰からもツッコミがなかったので、どうやら正解だったようだと安心したのを覚えています。

思い返せば、この案件を機にもっと難易度が高い仕事を任せてもらえるようになりましたし、その後は大阪高裁や福岡高裁で若手法廷通訳人の指導をするようになりました。法廷通訳人としては一つのターニングポイントだったかもですね。初めて担当した案件では傍聴人が被告人(外国人)の日本人妻1人だったにもかかわらず、重圧に負けそうで吐きそうになったくらいですから、我ながらずいぶんと成長したものです。

ちなみに沖縄のような小さな島で法廷通訳人をすると、県内各所に「行けない場所」と「行きたくない場所」がたくさんできます。米軍人が集まるところは避けるようになりますし、殺人や強盗、強姦が起きた場所にも近寄りたくはありません。単純にイヤじゃないですか。だから基地がある地域にはほぼ近寄りませんでした。


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