2014年5月9日

翻訳者が無断加筆 翻訳の政治利用?

翻訳の政治利用については欧州の通訳研究でたびたび見かけるが、日本でもこんな事件が。


南京虐殺否定を無断加筆 ベストセラーの翻訳者

同書はストークス氏が、第2次大戦はアジア諸国を欧米の植民地支配から解放する戦争だったと主張する内容。「歴史の事実として『南京大虐殺』は、なかった。それは、中華民国政府が捏造したプロパガンダだった」と記述している。
 だがストークス氏は「そうは言えない。(この文章は)私のものでない」と言明。「大虐殺」より「事件」という表現が的確とした上で「非常に恐ろしい事件が起きたかと問われればイエスだ」と述べた。
 藤田氏は「『南京大虐殺』とかぎ括弧付きで表記したのは、30万人が殺害され2万人がレイプされたという、いわゆる『大虐殺』はなかったという趣旨だ」と説明した。
 だが同書中にその説明はなく、ストークス氏は「わけの分からない釈明だ」と批判した。

さらに興味深いのが最後の部分。

関係者によると、インタビューの録音テープを文書化したスタッフの1人は、南京大虐殺や従軍慰安婦に関するストークス氏の発言が「文脈と異なる形で引用され故意に無視された」として辞職した。

私は藤田を個人的に知らないし、検証可能な問題に関しては適正な検証を待つのがポリシーだが(そしてこの問題は十分に検証可能だと考える)、これはさすがに臭い、というのが第一印象。おそらく原文は"massacre"だっとのだろうが、これだけで大虐殺がなかったと解釈するのは苦しい。前後の文脈を読めば自明である場合が多いのだが…

【追記 5/12】

 「南京大虐殺なかった」翻訳者加筆と報道 出版社は否定:朝日新聞デジタル

共同通信社総務局は9日夜、「翻訳者同席の上で元東京支局長に取材した結果を記事化した。録音もとっている」とのコメントを出した。

出版社は徹底抗戦のようで。

2 件のコメント:

baldhatter さんのコメント...

これ、気になってAmazon見たら、「なか見」できたんでざっと見たんだけど、これって原典があって翻訳したんじゃなくて、後述筆記を翻訳した、ってことになってるよね。

となると、「原典の検証」は難しいのかも。

Mike Sekine さんのコメント...

追記したけど、出版社は反論してるみたいねー。