2010年2月3日

通訳付き裁判員裁判 傍聴の家族は「誤訳」主張

個人的に知る限りでは、裁判員裁判制度が始まって初めての通訳者に対する「クレーム」です。

通訳付き裁判員裁判・被告人質問 殺意の有無 何度も確認 傍聴の家族は「誤訳」主張 長崎地裁

 長崎地裁(松尾嘉倫(よしみち)裁判長)で開かれている九州初の法廷通訳付きの裁判員裁判は2日目の27日、被告人質問があった。やりとりは法廷通訳人を介して行われたが、うまく伝わらない場面もあり、検察官や弁護人は表現を変えて何度も質問。閉廷後、被告の家族が「誤訳」と報道陣に訴える場面もあった。裁判員からの質問はなかった。

 審理されているのは昨年5月、大村市で元妻をナイフで刺したとして殺人未遂罪に問われた中国籍の余文発被告(40)。被告人質問は通訳人が質問と被告の供述を逐次通訳する形式で行われた。

 弁護側は「未必の故意」を前提に殺意を認めているが、検察側の質問に余被告は「酒を飲んで当時のことは覚えていない。殺すつもりはなかった」と供述。検察側は「記憶がないなら殺意の有無も覚えていないのでは」と質問したが、余被告は同じ返答を繰り返し、割って入った松尾裁判長が質問を重ね(1)殺すつもりはないというのは記憶にある場面のこと(2)犯行前後の記憶がないこと‐を時間をかけて確認した。

 余被告の主任弁護人の川端克成弁護士は閉廷後、「『未必の故意』について(被告は)微妙なところまで理解しておらず、殺意の有無を問われると否定してしまう。裁判長のまとめで裁判員も理解できたのではないか」としている。

 また、閉廷後、傍聴していた余被告の長女(15)は報道陣に対し「父が不利になる誤訳があった」として(1)元妻について尋ねた弁護側質問に対し、余被告は「愛(いと)しい人です」と答えたが、通訳人は「一番親しい人」と訳した(2)余被告は酒を飲んだ状態を「理性がない」と述べたが、通訳人は「無意識」と訳した‐などの例を挙げた。

=2010/01/28付 西日本新聞朝刊=

まあ細かい状況は分からないののだが、この間違い方が本当だとしたら、そもそも通訳者の能力に問題があるのではないかと疑問に思わざるを得ない。でももちろん文脈が誤解された可能性もあるし、複数の解釈ができる単語を通訳者が選んだ結果、誤解を招いたかもしれない。例えば日本語で「善処します」と言われたら、言葉以外の様々な背景情報がないと上手く訳す事は難しいだろう。

沖縄でも5月以降に初の通訳付き裁判員裁判が予定されている。米軍人関係は日本初らしいので、なにかと注目が集まりそうな事件。裁判員裁判になってから、通訳者の無能ぶりが明らかになったという事態だけは避けたいものです。