このエピソードですが、実は米国で仕事をしたとき、黒人講演者が「ニガー(nigger)」と冗談で口にしたことがあったのですね。白人が言ったら即座に人種差別者とレッテルを貼られて社会的にも抹殺されるでしょうが、黒人だと問題になることはありません。黒人を差別する意味合いで使う黒人はいませんから。ですが通訳者としてはとてもビミョーな立場になります。雰囲気を損なわずに冗談を伝えるにはニガーと言わなければならないし(それで笑ってもらえるかは別問題ですが)、でも黒人ではない自分としてはそれを口にするのは違和感がある。難しいところですね。
「新しい訳は現場で試す」の部分ですが、別に現場を壊すような突飛な訳を試しているわけではありません。一般的には、たとえば英語の新しい概念に対して日本語訳を付けて、聞き手の反応を見てその後の対応を考える、ということです。ここ4~5年でいえばenablerが代表的かもしれません。今でこそそのまま「イネーブラー」と出して通じますが、5年前は「〇〇を実現する重要事項」とか「成功要因」など補足を加えて訳していた気がします。今考えると笑えますが、sexual harassment という言葉が出てくるたびに「性的嫌がらせ」と訳していた時代もあったのですよ!
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