前号では本棚&読書について取材していただいたのですが、今回(通訳・翻訳ジャーナル 2020年秋号)はコロナが通訳業界に及ぼした影響と今後の展望について執筆しています。立ち位置はJACI理事半分、個人半分、という感じで。
詳しい内容は記事を読んでもらうのが一番ですが、個人的な展望としては①当分は遠隔案件が多数を占める、②通訳案件の絶対数は確実に減る、③市場のニーズに合わない通訳者は淘汰されると書きました。
市場のニーズに合わない通訳者とは、遠隔時代の通訳に求められる技術知識や対応力がない人や、価格に見合わない価値を提供する通訳者のことを指しています。
「遠隔時代の通訳に求められる技術知識や対応力がない人」というのは、RSIプラットフォームをうまく使いこなせない人、デジタル全盛の時代に紙の資料に強くこだわる人、などでしょうか。個人的にも、時間が来たのに交替の準備ができない(またはやり方がわからない)人や、何度も回線落ちするような人とは組みたくはありません。
「価格に見合わない価値を提供する通訳者」とは、文字通りです。今までの日英通訳市場はやや売り手市場寄りだったので、正直な話、中途半端な技術でも仕事にありつけました。けれどコロナの影響で企業が節約モードに入る今、技術や顧客対応力がない通訳者はどんどん消えていくと思います。
たとえば遠隔時代になって、通訳者は1時間や2時間単位の刻んだレートが強く求められるようになっています。今まではあまり疑問を持たずに半日料金を払ってきた顧客が支出を厳しく管理するようになっているのです。これに加えて遠隔通訳では何年も前から1時間単位の価格設定が当たり前でしたので、コロナを機にその価格設定が業界全体に広がりつつあります。
通訳者個人の長期ブランド戦略を考えた場合、安易に料金を下げるのは得策ではないですが、「絶対に価格を下げるな」とも言えません。まずは今を生き残らないとブランドどころではないからです。実際、一部の大手通訳会社も収益確保のために、入札案件でとんでもない値引きを始めていると情報が入ってきています。
今後、通訳者は必ずどこかで値引きやレート単位の変更をお願いされる場面が出てくるはず。そこでいかに立ち回るか。いまの収入を確保したいのであれば、戦略的価格設定をしてとりあえずサバイブするのもアプローチとしては否定できません。逆に十分な蓄えがあるのであれば、無理に値下げをせずに嵐が去るのを待つのも良いでしょう。
まあ、これは確たる技術があるという前提での話ですが。
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