2018年11月15日

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2018年11月4日

日本通訳フォーラム2018のアンケート結果について。

今年で早くも4回目の開催となりました日本通訳フォーラム。名実と共に日本最大の通訳イベントになったと言えるでしょう。参加者も220人を超えました!

毎回、フォーラム終了後に参加者アンケートを実施しているのですが、今回もたくさんの感謝やねぎらいの言葉を頂きました。ありがとうございます。それとは別に厳しい指摘やコメントも頂いているのですが、一部誤解に基づいているものも散見されましたので、今年の実行委員長として個人的な見解を書かせてください。

■主催者の挨拶等もなく、誰が主催者か見えにくい。

主催者は日本会議通訳者協会で(これは誰が見ても明らか)、特定の個人ではありません。日本会議通訳者協会は設立当初からイベント等での「無駄な挨拶はできるだけしないように」という方針を採用しています。別に文書化されたルールというわけではないですが……というか主催者の挨拶ってそんなに重要ですか?数時間後には忘れてしまう挨拶をするくらいだったら、講演者にもっと話してもらおう、というのが協会の基本姿勢です。


■会員になっていれば割引価格で良かったですが 会員以外にとっては高い参加料だったかもしれません。

一般(非会員)の参加料は9800円でしたが、これは通訳関係イベントの相場的には破格です。むしろ終日8時間の、特にこれだけバラエティに富んだ講師陣を用意したイベントで、1万円を下回る他のイベントを見てみたいですね(私が知る限り存在しません)。今年は一部理事から「1万円以上でもいいんじゃない?」と言わましたが、今後もなんとか4桁をキープしたいです。というか、会員になりましょう!


■セッションはどれも魅力的なのでできるだけ複数重ならないようにしていただければありがたいです。(可能であれば複数日開催などで)

現時点では複数日開催する人的リソースと予算がないのです(主に前者)。それに複数トラックにして物理的に参加できないセッションが生まれるからこそ、会員になって動画を観て頂きたい。というかそういう設計です(ニッコリ)。


■できれば開催時期を夏の初め頃(7月か8月初旬など)にしていただけるとありがたいです。

運営側は7月は忙しすぎて準備ができません。仕事を優先すると、現実的に開催できるのが8月末か12月末くらいしかないのです。そして私も含めて理事で年末に働きたい人はいないと思います(笑)。


■会場は三軒茶屋より昨年までの渋谷かメジャーなJRの駅に近い方が便利なので、キャパの問題もあるのかと思いますが、来年より便利なところで考えていただければより嬉しいです。

会場選択は予算が最優先要素です。今回の会場(昭和女子大)は渋谷の会場より圧倒的にお手頃な価格でした。渋谷などメジャーなエリアではお手頃な大型会議室が少ない、というかほぼ存在しないのではないかと。むしろあったら教えてほしいです。こちらも三軒茶屋にこだわりはないので。


■フォーラム開催を地方、例えば大阪、京都の関西地区で、実施していただくと助かります。

今後は関西エリアにも力を入れていきたいと思いますので、御期待ください。というか今年はもう3回ほどワークショップを開催しました。


■会場で個々にお聞きすると皆さん「会員になった方がいい」とのことですが、会員になるメリットが料金以外にあまり理解できていない。会員の方にできるだけご紹介はいただきましたが、今回の立場では会員限定懇親会以外の交流場があれば、ありがたいと思いました。

オンラインの会員限定グループで交流できますよ!イベント割引や動画・記事閲覧などの価値を含めると、普通に2万円以上の価値はあると私は思いますが。サバイバルガイドでも書きましたが、この業界では何を知っているかと同時に、誰を知っているかも重要です。結局、ビジネスは人とのつながりですから。JACIはそのネットワークの場を提供しています。

■Q&Aの時間が足りない講義もありましたため、せっかくの機会でしたので非常に残念に思いました。

実は個人的には来年からQ&A形式を変えようかなと考えています。たとえば質問はsli.doなどで事前に受け付けて、もっと効率よくやろうかなと。誰も質問者の話を聞きにきているわけではないので。あとは、もっとソーシャルメディアを活用して、講義後にオンラインでQ&Aが展開されていっても面白いのではないかと(別に会場内でなくてもいい)。

こんな感じですかね。基本的には少人数で運営しているので、今後もあまり高いサービスは期待しないでください(泣)。私たちはイベント運営のプロではないので。だからチケット代が安いのです!

2018年11月3日

山奥で通訳はじめました(冷やし中華風に)。

日本NPOセンター主催の地域人材日米交流事業、「地域再生に挑戦するアメリカと日本のイノベーターたち」東京フォーラムで通訳してきました。このイベントに先だち1週間ほど米国の専門家たちと日本各地を旅しながら、一緒に地域の問題について学んだりしました。もちろん通訳者として仕事をしながらですが。普段はNDA等の関係でブログにアップできる写真があまりないわけですが、今回は大丈夫ということで顔バレ覚悟で(もう十分にバレてるけど)数点アップします。

基本的にはパナガイド+生耳で。小石浜養殖組合の佐々木淳さん(右)。
このあと食べた恋が浜ホタテが美味すぎて悶絶。ホタテは天然より養殖の方が高値がつくなんて知らなかった!

かみえちご山里ファン倶楽部にて、関原剛さんの講義を同通中。
私は幼少期を新潟で過ごしたのですが、ここまで山奥に来たのは初めてです。

「ここまで山奥」というのはこんな感じ。川のせせらぎと鳥の鳴き声しか聞こえません。

旅の途中、愛媛大学でもフォーラムを開催。ここはブースあり。

松山アーバンデザインセンターにて。
生耳同通はポジショニング(通訳が立つ位置)がすべてと言っても過言ではない。

2018年10月1日

本庶佑先生、おめでとうございます!

■久々のブログ更新。実は今日帰宅してTVをつけたらノーベル賞の受賞記者会見をしていて、「どこかで見たことがある人だなあ」と思っていたら、あとで思い出した。この春、香港の案件で一緒になった本庶佑先生だった!事前に打ち合わせで担当弁護士からすごい実績をもつ大先生だと聞いてはいたけれど、ノーベル賞級とは。法務、特に特許訴訟の仕事をしていると、ワールドクラスの研究者や技術者と一緒に仕事をする機会があるのだけれど、ニュースになるまでピンとこない私。罪深い。

■今年も8月25日に日本通訳フォーラムを無事開催。もう4回目です。「前の年を越えていこう、新しい何を仕掛けていこう」と常に心がけています。今年は初の①3トラック同時進行、②JACI特別功労賞の設置、③会員向けの無料大パーティー開催と、欲張ってみました。特にJACI特別功労賞は「通訳業界には業界の発展に多大な貢献をした人・団体を表彰する仕組みがない」という考えから始まった賞です。初回は努力モデルで知られる、誰もが認めるダニエル・ジル教授が受賞しました。通訳者が選ぶ賞なので、大切に育てていきたいものです。

■今年も大好きな東京ゲームショウの仕事がありました。頑張ってマーケティングしているせいなのか、業界の数少ないゲーマー通訳者として認知度が上がっているようです(笑)。しかしなぜか私がやりこんでいるゲームを担当することが一度もないという(今年でいえばデッドバイデイライト)。まあいいんですけどね。他のゲームも楽しいし。ちなみに今年の担当はヒットマン2でした。ガチで面白そうなので買います。

■ポッドキャストの質が高すぎてAudible(というかオーディオブック全般)からしばらく遠ざかっていたのですが、最近また登録して20冊くらいダウンロード。大人買いです。洋書は読みたくても本が(ペーパーバックでも)重すぎて敬遠していた作品があるので、それを中心に楽しんでいこうかなと。というかリンカーンの本、40時間を超えてるよ……

■新しい個人プロジェクトも色々進行中です。年明けには報告できるかなと。というかイングリッシュ・ジャーナルの通訳連載、もう44回……まあ100回は無理だろうけど。そんなにネタないよ。

2018年6月11日

第1回 同時通訳グランプリについて


ほぼ1年前から始まった(おそらく)日本初の試みが、6月9日(土)に無事終了しました。こちらが結果です。というか、前例があったら困るのでこれまでは「(おそらく)」と注意書き的な文言を入れてリスクヘッジしていたのですが、誰も文句を言ってこないので、これからは堂々と日本初と言ってもいいのかもしれません(笑)。

イベントの完成度という点ではもっとやれた部分があったのかもしれませんが、運営はみんな現役の通訳者なので、当たり前ですが本業優先です。理事一人ひとりが空いた時間を使って、できる範囲で貢献して、限られたリソースでなんとかグランプリ当日までこぎつけました。ただその中でも実行委員長の千葉絵里理事の貢献は突出していました。表舞台に出るのがあまり好きではない彼女なのであまり目立ちませんが(日本通訳フォーラムでの講演だって最初はやんわりと断られたけど、業界のためなら、そして桂田さんと一緒ならということで最終的になんとか受けてもらった)、彼女のプロジェクト管理能力と馬力がなければグランプリは普通に破綻していたでしょう。千葉さんのような方がJACI理事であることは本当に心強いです。これで通訳も上手いのだから世の中はフェアじゃない。

グランプリ自体はとてもハイレベルな戦いでした。去年の今頃は、「グランプリを通して有能な若手を特定し、芽が出る前に徹底的に潰そう!」とネタにして笑っていたのですが、パフォーマンスを聞くかぎり、みなさん本当に上手くて私たちの仕事がなくなりそうです(震え声)。まあでも、彼らがいれば通訳業界の未来はまだまだ明るいのかもしれません。私もコンテスタントの訳を聴きながら、「自分も頑張らなくちゃなあ」と思いました。

講演者、審査員、協力会社、スポンサー、その他の関係者のみなさんにはとても感謝しています。ありがとうございました!

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さて、ここからは気付いた点や裏話を。

イベント後に受賞者の名前でググってみたのですが、学生部門優勝の奥山祐太さんは昨年の全国外大連合事業「第11回学生通訳コンテスト」(逐次通訳コンテスト)でも優勝していたのですね。どうりで落ち着いて安定していたはずだ。通訳ペアはくじ引きで決めたのですが、たまたま同じ大学の永瀬さんと一緒になって、いつも一緒に練習しているのかはわからないけど通訳者交代のタイミングがとてもスムーズでした。国際基督教大学のワンツーフィニッシュで、会場にいらしていた田村智子客員教授にとっても特別な1日になったのではないでしょうか。

他のファイナリストである虻川さんと遠藤さんもかなり上手かったのですが、競技である以上、最終的には勝者を決めなければなりません。勝負はときに残酷なものです。というか私が虻川さんや遠藤さんの年齢だった頃は、彼らの半分もできなかったので(ホントに)、あまり失望せずに今後もぜひ頑張ってほしいです。人間の成長は直線的ではないので、ある日ドーンと伸びるときがくると思いますよ。

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社会人部門ですが、優勝の石井悠太さんはROM専のJACI会員だったりします。結果発表直後に「さすがMAJIT!」と世界各地から祝福の声が集まっているようです。訳を聴いていると、やはりきちんとしたバックボーンをもっているなという印象を受けます。うらやましい。

キャサリン・スイフトさんは同時通訳をするという夢を諦めきれずに応募したらしいですが、人生経験が豊富な人の訳は柔軟だなあと私は思いました。日本人は基本的に外国人の日本語に厳しい傾向があるので(私の印象ですが)、その点で苦労した部分があったかもしれません。ただ最後までしっかり戦いぬいた姿は私を含め多くの関係者の印象に強く残ったと思います。

志村理恵子さんはJACIが昨年主催した箱根合宿に参加していて、その時に開催されたミニコンテストでも入賞しています。落ち着きがあって、心が和む声とペース。最初に「グランプリ出たら?」と勧めたときは、そんな恐れ多い、自分は力不足です、みたいなトーンでしたが、予選では高得点をたたき出して決勝進出。おそらく今回のファイナリストの中でも伸びしろが大きい方だと思います。

藤井里咲さんにはグランプリの企画段階からお世話になりました。というのは、運営側に学生はいないので、学生にとって都合のよい開催時期はいつなのか、学生の期待は何なのか、そもそも知るすべがなかった。藤井さんは当時卒業したばかりで、通訳者としての実力もあったので(第8回学生通訳グランプリ優勝)、相談する相手としてはピッタリでしたし、実際に本グランプリには彼女の意見を参考にした部分がかなりあります。感謝、感謝です。決勝は残念な結果になりましたが、持ち時間がもっと長ければ彼女の持ち味である安定性をもっと発揮できたはずです。まだまだ伸びると思います!

神田さんとカークブライドさんについてはあまり知らないので(笑)、何も書けないのですが、今後のJACIの活動を通してお知り合いになっていけたらな、と。

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学生や新人同時通訳者が輝ける場所を提供できたらいいなと、最初はあまり深く考えずに「やればできるんじゃない?」で始まったプロジェクトですが、準備の過程で、そしてグランプリ当日も、多くの関係者から応援をいただきました。運営側も学ぶことがとても多かったです。

次回のグランプリですが、リソース(人、カネ、時間)の問題がありますのでまだ断言はできませんが、個人的にはこのような社会的意義が大きいイベントはなんとか継続していきたいと考えています。今の通訳業界でこのようなイベントができる団体はJACIくらいしかありませんし、それをやってこそJACIが公器としての役割を果たせるのだと思いますしね。

さて、6月は大阪ワークショップが2つ、7月は福岡1つ、大阪2つに加えて2日間の夏期講習、そして8月は史上最大規模の日本通訳フォーラムが予定されています。今後もJACIは通訳者のために走り続けますので宜しくお願い致します。

2018年3月25日

二流の悲しさを知っているか?

1週間前にアルクの編集者と食事をした際に、囲碁の話になった。15年ほど前、私はなにかのきっかけで(そのきっかけ自体を忘れてしまったのだが)囲碁を始めてのめり込んでしまったのだが、始めてから気づいたのは、囲碁は集中力の強化・維持にとても役立つことだった。

いや、正確には囲碁が……ということではなく、将棋でもチェスでもなんでも良いのだと思う。辛抱強く、長く深く考えることを求められることであれば。今思うと、囲碁にハマっていた時期が純粋な集中力という意味では私のピークだった。

アルクというと英語教育やTOEIC等の試験対策書籍のイメージが一般的に強いし、私も実際そう思っていたので、囲碁関連の書籍もあるのだと聞かされて驚いた。そして曺薫鉉(チョフンヒョン、日本語読みは「そうくんげん」)の本だと聞いてもっと驚いた。英語教育と絡めてマイケル・レドモンドあたりかと思えばそうではなく、史上初の国内七冠達成で日本囲碁界を沸かせた井山裕太でもない。玄人好みの曺薫鉉、年季が入った囲碁ファンでないとおそらく知らない曺薫鉉である。

世界最強の囲碁棋士、曺薫鉉(チョフンヒョン)の考え方

私は木谷實と呉清源に憧れて長野の山奥にある地獄谷の温泉宿に一人で泊まりに行ったくらいなので、当然曺薫鉉についても知っていたが、彼の師匠である瀬越憲作との関係については本書を読むまで知らなかった。なかでも、師匠が弟子の曺薫鉉にかけたこの言葉が心に突き刺さる。

「二流は悲しい。くんげん、この道をいくなら一流になれ。そうでなければ人生はあまりにも哀れだ」

今になってやっと一流のタマゴになりかけてきた私だが、昔は間違いなく二流だった。私は二流であることの惨めさ、恥ずかしさ、悲しさを知っている。だから駆け出しの頃は文字通り睡眠時間を削って勉強したし、誰も手をつけない面倒な仕事を積極的に受けて腕を磨いてきた。二流である自分への怒りもモチベーションとしてあったと思う。この惨めな状況から這い上がってやる、という気持ちが常にあったから今の自分があると思う。

私がかつて教えた翻訳者・通訳者には、この「二流の悲しさ」をよく理解していなかった人が少なからずいた。一流になるための努力を怠っている人もいた。だからいつまでたっても凡ミスが絶えない者には「こんなバカなミスいつまでも繰り返してるんだったら、やめちゃえば?」と真顔で厳しく言ったこともある。だいたいこれがきっかけで関係が終わるというか疎遠になってしまうのだが、私はそれでいいと思っている。向いていないのであればさっさと見切りをつけてもっと自分に合った何かを見つけるべきであるし、私を見返したいと思って努力をするきっかけになればそれでもよい。

二流であり続けることを良しとするのが一番悲しいのだ。