2024年6月29日

Wild Hearts

 
Wild Heartsは私が初めて担当したコーエーテクモさんの作品で、リリース直前のPR会議から携わりました。最初から「狩りゲーの新しい王道を作る」を大きなメッセージとして伝えたいということでしたので、各メディアのインタビューでも"We've set out to create a new standard of hunting games" や "This is the game all other hunting games will be measured by" と表現することで、何度も伝えました。モンスターハンターという横綱がいる中で誰もが「大きくでたな」と感じたはずですが、ゲーム自体はとても完成度が高いと私も遊んで感じました。

最終的にゲームの主要タグラインとなった"Tame a World Gone Wild”が会議で初めて出てきたとき、まだ日本語訳が決まっていない状態で、私は「荒ぶる自然を手なずけよ」と訳出したのですが(そしてその後の会議でも数回、それで通していたのですが)、最終的には「生きろ、立ち向かえ」になっていました。確かにこっちの方がいいな。自分の訳が採用されるか、されないかも、通訳の楽しみの一つです。

2024年6月14日

Immortals of Aveum (& Dead Space)

 
Immortals of AveumのPRイベントに関わらせてもらったのは23年の初夏でした。マルチプレイはもうスキル的に絶望的な私としては、「これは期待できそうなソロFPSだ!」と思っていたのですが、すぐに9月からの繁忙期に突入し、このゲームどころかどのゲームも遊べない日々が続きました。そして24年、やっと時間ができたので買って遊ぶかと検索したところ、本作を制作したスタジオは作品の売上が期待を大きく裏切ったため23年秋に社員の半数を解雇、24年4月には残りのスタッフも一時帰休に、という衝撃のニュースが。つまり1年ももたずにスタジオ崩壊です。

リリース時から技術的問題があったようですが、近年のトレンドとして、メタクリスコアなどの評価が最初からかなり高くないと手に取ってさえもらえない、つまりEAのようなメジャーレーベルから発売されても、Dead Spaceのような実績があるプロデューサーの作品でも、レーティングが高くないと発売から負け戦が確定です。これに加えて、本作のリリースはタイミング的に最悪といって過言ではないというか、この年のGOTYに選ばれたBaldur's Gate 3をはじめ、Armorned Core IVやStarfieldのような話題作・ヒット作と勝負せねばならず、埋もれてしまった感もあります。実際、ゲーム自体はそんなに悪くないのに、タイミング的に運が悪かったよね、というのがRedditの一般的な評価です。

実は私、過去にはDead Spaceの案件を通訳したこともあったので、個人的にはこれはとても残念なニュースです。今や大規模予算のゲーム開発は博打化しつつある気配なのですが、今後各社がどのように方向転換をしてくるのか注目です。

2024年6月3日

テーマパーク関係の通訳

 
以前に某大手建設会社で一緒に仕事をした幹部が別会社に転職し、そこにうちの事務所を紹介してくれたという、業界ではあるあるですがとても助かるパターンです。いま取り組んでいるプロジェクトは最初の最初、つまりコンサル選定やコンセプトデザインのフェーズから入って仕事をしているので、「一つのテーマパークがどのように現実となっていくのか」をリアルタイムで確認・学習しながらの仕事になっています。これまでは一人のユーザーとしてしか体験したことがなかったので、「ビジターにこう感じてもらいたい」を定義し、それに沿ったナレティブやグランドデザインを検討し、細かな動線も徹底的に評価する、という当たり前のことを全然考えていませんでした。

国内の某統合型リゾート案件に関わったときも思いましたが、いまやっているこの仕事が現実になるのは8年後?10年後?つまりかなり先の話です。メインで担当している通訳者さんたちとは、「開業したら死ぬほど遊んでパーティーしよう」と話していますが、そのころにはまだ通訳やってるかな。というかパーティーする元気、まだあるのかな。

ちなみにこの仕事でする上で、世界中の最新テーマパークの試みを知ることができたのですが、人気のパークに共通しているのは唯一無二の世界観。やはり、という感じ。有形インフラじゃないんだね。