2021年10月10日
『通訳の仕事 始め方・続け方』発売です。
2021年8月14日
スポーツクライミングとの縁。
東京五輪、なんだかんだで観てました。スポーツ好きなので。政府は一度やると腹をくくったからには、2020年にNBAやNHLが採用したようなガッチガチのバブルを作って誰も文句を言えないような感染対策をしてほしいと思っていましたが……
さて、今回はスポーツクライミングの話です。私が大学一年のとき、同じ学生寮に住んでいたクライミング好きの先輩に一目惚れして、「共通項を持たねば!」と考えたのが始まりです。恋の方はあっさり終わったのですが、大学近くのクライミングジムにはしばらく通い続け、友人とブリティッシュコロンビア州北部のクライミングスポットで週末を過ごしたりと、それなりに楽しみました。日本に戻ってからは仕事が忙しくてやめてしまい、太った今は5.7すら完登できるか怪しいところです。
そんな私ですが、昨年、東京五輪におけるスポーツクライミングの代表選手選考に関する国際仲裁案件に通訳者として関わっていました。この件はニュースになっていたのでご存じの読者もいるかもしれません。これも何かの縁でしょうか。
一定の競技レベルでスポーツをしたことがある人はわかると思いますが、代表(またはチームメンバー)に選ばれないこと、特に事前案内された選考規則や選考会スケジュールに基づいて準備をしてきたのに後からそれが変わって代表への道が断たれるのは言葉にできない辛さがあると思います。4年に一度の国際大会であればなおさらのこと。事前に提供された数百ページもの資料を読みながら、「これは仲裁廷がどのような判断をしても夢が消えてしまう選手が生まれるので、どうやっても遺恨が残りそうだな……」と思いながら準備したのを覚えています。
で、その結果がこちら。国内競技連盟であるJMSCAの主張は通りませんでした。
夢破れた選手を思うと、代表内定のニュースを手放しで喜べなかったのですが、本選での野口選手と野中選手の銀・銅フィニッシュを観て悶々としていた何かが吹っ飛びました。特にこの大会で引退を決めていた野口選手のリードでの踏ん張り、あれは本当にすごい。五輪に批判的な意見が多いのは理解していますが、アスリートは与えられた舞台で最高のパフォーマンスを披露するのが仕事であり、少なくとも私はその姿に勇気づけられました。
私の五輪関係の仕事はこのように表に出ないものばかりだったのですが、一人の元アスリートとして、何かを極めようとする姿にはいつも元気をもらいます。3年後のパリも楽しみにしています!
あ、スポーツクライミングは単純に面白いですよ。観ていると腕力が必要なイメージを持つかもしれませんが、実際は下半身の力とボディバランスの方が大事です。もっとファンが増えてほしい!
2021年6月28日
英語通訳塾&同時通訳グランプリの振り返り。
年明けから3か月、比較的ステルスモードで若手を対象に通訳を教えていました。真面目に課題をこなして勉強すれば授業料は免除というシステムで、なんとか全員(12人)無事に修了しました。受講生が学びをまとめたブログはこちらから。
プログラム自体は3月末に終わったので、もっと前にブログに書けたのですが、実は受講要件の一つが「2021年のJACI同時通訳グランプリにエントリーすること」だったので、途中でごちゃごちゃ言うよりグランプリの最終結果が出るまで沈黙しておこうかなと思っていました。で、先日その結果が出ました。当塾からは西原念さんが社会人部門のファイナリストに選ばれましたが、惜しくも本選での入賞はならず。あー、残念です。甲子園出場校の監督ってこんな気持ちなんだろうなあ。やはり自分が教えた人には成功してほしいものですよ。
西原さんは正直、1月上旬の時点ではそこまで際立った特徴はなかったのですが、2月中旬くらいからめきめきと腕を上げて、最終的には受講生の中で一番の成長度を記録したと思います。そもそも受講生は全員スタート地点が異なるのですが、一番伸びたと思ったのが西原さんというわけです。受講生の中にはもっと安定的に訳出できる高度な技術を持っている人もいましたが、こういうものは結局、結果がすべて。強いやつが勝つのではなく、勝ったやつが強い。その意味では、西原さんがファイナリストに残ったのは間違いなく通訳が上手かったから。来年もぜひ挑戦してリベンジしてほしいです。
他の受講生はというと……提出したファイルが壊れていたり、音が入っていなかったり(または小さすぎて聞こえなかったり)、指定の時間までに送信できていなかったり、通訳以外の部分でつまづいた人も結構いたようです。実にもったいない。来年のエントリーは義務ではないですが、再挑戦してほしいですね。少なくとも私はウォッチしてますよ。目標があれば人は強くなれますから!
同時通訳グランプリについてですが、私は通訳塾をやって受講生を大会に送り込んでいた関係上、今年は運営にほとんど関わっていませんでした。当日のロジのお手伝いは少ししましたが、審査関係の業務は当然なし。つまりほぼオブザーバーだったのですが、社会人部門で神田雅晴さんが優勝したのは感慨深かったですね。彼は第1回から毎回参加していて、過去にはJACIの夏合宿に参加したこともあります。話すたびに、「通訳が上手くなりたい!」という気持ちが伝わってきて、こういう姿勢をもった若手がもっと育ってくれれば業界も安泰だなあと思っていました。優勝者スピーチにも気持ちがこもっていて、うるっときた人もいたはずです。
学生部門準グランプリの渡部美樹さんには2020年2月(コロナ直前)にモントレーで初めて会ったのですが、その時はまだ同通練習を始めたばかりのようで、言葉には自信より戸惑いが感じられました。それが1年半で急成長!本当にWowの一言しかありません。
最後に。本大会は小野陽子理事のリーダーシップがなければ成立しなかった大会です。講演者、審査員、参加者などの関係者と個別に調整し、当日のフローを組んで、大会をほぼ円滑に実施したことはとてもすごいことだと思います。小野理事は謙虚なのであまり表に出ませんし、発言もしませんが、間近で彼女の仕事ぶりを目にしている私は尊敬&感謝しかありません。通訳業界は小野陽子さんがいて本当にラッキーです。
これを読んでいる皆さんは小野理事にあったら「グランプリ、ありがとう!」と言ってやってください。とっても喜ぶはずです!
2021年5月17日
帰ってきた日本通訳翻訳フォーラム
今年もやります!
コロナで多くの通訳者・翻訳者が不安を抱えていた昨年夏、どうせなら業界初のスケールで祭りをぶちかまして元気だそうや、というほぼノリでスタートした同企画ですが、今年も開催する運びとなりました。
コロナの本格的な感染拡大が始まってからこの夏で約1年半。多くの業界人がいわゆるニューノーマルに慣れて落ち着き始めていますが、IJETなどの大型業界イベントはまだ復活しないようなので、今年も翻訳サイドを巻き込んで豪華な講演者をずらりと並べました。明らかにやりすぎた昨年よりは若干規模縮小ですが、それでも毎日開催になりそうです。十人十色管理人の井口富美子さんの紹介で、翻訳サイドの講演者にはビッグネームが並んでいます。すごいね、この厚み!
通訳サイドは海外講演者の数を増やしました。遠隔時代の環境設定や通訳報酬の考え方などタイムリーなトピックはもちろん、演技のスキルを訳に活かすという楽しみなトピックも。日本ではこういう内容で講演してくれる人があまりいないのですよね。あまり演じすぎるスタイルだと先輩通訳者に怒られるなんてことを耳にしたことがありますが、ホントかな。
まだいろいろ考えながらブッキング中ですが、最終的なセッション数は40~42あたりでしょうか。マイペースで頑張ります。
2021年4月9日
EJ連載終了&『なる本』でJACI会員が大暴れ
それにしてもこの連載、長かった。6年なんて連載期間としては普通なのかもしれませんが(知らんけど)、継続的にコツコツやるのが苦手な私にはとても長く感じられました。もともとは居酒屋で自慢できる通訳・言語ネタをちょこっと紹介するくらいの勢いだったのですが、ここから初の著書が生まれ、すぐに2冊目につながり、新たな友人やパートナーもできました。プラスしかなかったですね。
これに加えて、JACIが企画協力した「通訳・翻訳の新常識」コーナーでは、小野陽子理事、古賀ともこ会員、山本みどり会員が遠隔時代のニューノーマルについていろいろ発言しています。JACIは一般社団法人化してからさらに組織力が増してきていて、活動の幅も広がっています。